軽減税率と消費税増税に向けたシステムの対応

[2018年8月版]第4回「軽減税率制度とシステム対応(その3)」(3)

第4回「軽減税率制度とシステム対応(その3)」(3)(2018年8月1日公開)

淺海克人
(ウティルコンサルティング コンサルタント)

【プロフィール】公認会計士・税理士
NECにて主に民需系の情報システムの販売・構築に携わった後、公認会計士試験に合格、監査法人に入所。監査法人にて会計監査、内部統制監査、IT監査などに従事。現在、ウティルコンサルティングを立ち上げ活動中。

仕入税額の計算の特例 中小事業者のみ

仕入税額の計算の特例は、仕入を税率ごとに区分することが困難な中小事業者が、一定の方法を用いて(以下に検討する2つの方法がある)軽減税率対象品目に係る仕入金額を計算する方法であり、当該特例を用いて税額計算の基礎となる適用税率ごとの取引総額を計算するものである。

軽減税率制度の導入から1年間(平成31年(2019年)10月1日から平成32年(2020年)9月30日の属する課税期間の末日までの期間)のみの措置である。

尚、中小事業者以外の事業者(基準期間における課税売上高が5,000万円超)については、中小事業者と同様の特例を選択できなくなった(制度改訂)。

(1)売上総額に占める軽減税率対象品目に係る売上金額の割合を、当期の仕入総額に占める軽減税率対象品目の仕入金額割合とする方法

売上については、適用税率ごとに区分して管理可能な卸売・小売事業者が選択できる措置(簡易課税の適用を受けない事業者が対象)。「軽減税率対象品目の売上額/売上総額」を計算し、総仕入額に当該割合を乗じて軽減税率対象品目の仕入額を算出する方法(標準税率対象品目の仕入額=総仕入額-軽減税率対象品目の仕入額で算出)。

(2)簡易課税(事後選択可能)する方法

(1)以外の中小事業者が選択できる措置である。

中小事業者(基準期間における課税売上高が5,000万円以下)においては、事後的に簡易課税制度の適用を受けることができる(本来は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出が必要)。

ここで簡易課税制度とは、仕入税額を適用税率ごとの取引総額から割戻し計算するのではなく、
売上税額にみなし仕入率(法定された割合)を乗じて仕入税額を計算するもので、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の事業者が適用できる制度である。

図3:仕入税額の計算の特例

  対象者 軽減税率対象品目の仕入金額割合
(1) 売上を管理できる卸売・小売事業者(簡易課税制度適用事業者を除く) 売上総額に占める軽減税率対象品目に係る売上金額の割合
(2) (1)の計算が困難な事業者 簡易課税、簡易課税に準じた方法の適用(事後選択可能)

終わりに

次回は、消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編、個別事例編)の内容について概説する。
 
【参考資料】
◇消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編、個別事例編) 国税庁 平成30年1月改訂
◇消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 国税庁 平成30年6月
◇消費税法改正のお知らせ 国税庁 平成28年4月(平成28年11月改訂)