軽減税率と消費税増税に向けたシステムの対応

[2018年8月版]第3回「軽減税率制度とシステム対応(その2)」(2)

第3回「軽減税率制度とシステム対応(その2)」(2)(2018年8月1日公開)

淺海克人
(ウティルコンサルティング コンサルタント)

【プロフィール】公認会計士・税理士
NECにて主に民需系の情報システムの販売・構築に携わった後、公認会計士試験に合格、監査法人に入所。監査法人にて会計監査、内部統制監査、IT監査などに従事。現在、ウティルコンサルティングを立ち上げ活動中。

適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)について

都庁

平成35年(2023年)10月から導入が予定されている制度で、原則として、登録を受けた課税業者が交付する適格請求書等及び帳簿の保存を仕入税額控除の要件とする制度である。

現行制度上も仕入税額控除の要件として、原則、課税仕入れの相手方が発行した請求書等及び帳簿の保存が要求されているが(保存に加え、請求書等及び帳簿への記載要件もある)、請求書等の保存に代えて、適格請求書発行事業者が発行した適格請求書等の保存を仕入税額控除の要件とするものである。

ここで、適格請求書発行事業者とは、免税事業者以外の事業者であって、納税地を所轄する税務署長に申請書を提出し、適格請求書を交付することができる事業者として登録を受けた事業者をいい、適格請求書等とは、適格請求書発行事業者の登録番号、適用税率、消費税額等の一定の事項が記載された請求書、納品書等の書類をいう。

適格請求書等は、適格請求書発行事業者しか発行できず、しかも適格請求書の保存が仕入税額控除の要件となることから、業務、システムへの影響は大きい。

適格請求書等を発行するためには事前に、適格請求書発行事業者としての登録をし、登録番号を取得する必要がある。その上で、登録番号、適用税率、消費税額等の一定の事項が記載された請求書、納品書等適格請求書を作成する必要がある。

*平成33年(2021年)10月1日から適格請求書発行事業者の登録申請書を提出することができる。平成35年(2023年)10月1日から適格請求書発行業者の登録をうけるには、原則として、平成35年(2023年)3月31日までに登録申請書を納税地を所轄する税務署長に提出する必要がある。

仕入税額控除の要件を充たすためには、要件を満たした適格請求書等を入手・保存の上、最終的には、帳簿の記載要件を充たすように帳簿を作成し、保存する必要がある。

尚、免税業者からの仕入税額控除に関しても注意が必要である。適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)下では原則として、免税業者からの仕入税額控除は認められないからである(現行制度においては控除が認められている)。

ただし、平成35年(2023年)10月1日からの3年間は80%の仕入税額控除が、平成38年(2026年)10月1日からの3年間は50%の仕入税額控除が認められる予定である。 この場合には、区分記載請求書等保存方式と同様の請求書等を保存の上、帳簿記載事項として、区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要である。

これらを踏まえると、

(1)売上・仕入(経費含む)を税率別に区別して管理できることはもちろん
(2)免税業者からの仕入(経費含む)であることも区別して管理できること
(3)適格請求書等の記載要件に応じて請求書等を作成できること
(4)記載要件を充たす形で帳簿が作成できること
(5)申告書作成に資する資料を提供できること
が、システム上は重要と思われる(記載要件については図1、システムイメージについては図2、図3を参照)。

図2:システムイメージ(売上)

図2:システムイメージ(売上)

図3:システムイメージ(仕入)

図2:システムイメージ(売上)