株式会社トプコン様

SAP ECC6.0 on AWSの構築と海外拠点との連携を全面支援
次期ERPを見据えた経営基盤を短期間で実現

業種:
  • 製造・プロセス
業務:
  • 設計・開発・製造
  • 生産管理
製品:
  • 統合型システム
  • ソフトウェア/サービス実行基盤
ソリューション・サービス:
  • 共通業務/ERP
  • クラウド

事例のポイント

課題背景

  • SAP ECC6.0の保守停止を見据え、成長戦略に沿った次期ERPを検討したい
  • SAP基盤のあるデータセンターがサービス終了するため短期間の移行が急務に
  • 海外拠点で先行導入するSAP S/4 HANA Public Cloudとのデータ連携や業務プロセスの自動化

成果

将来的なERP刷新に向け、効率的かつ柔軟なクラウド基盤を先行構築

SAP ECC6.0およびSAP Cloud Connector(SCC)を一体的に導入し、既存環境も含めた今後のクラウドERPを前面活用した刷新に備えて、効率的かつ柔軟なクラウド基盤をAWS上に構築。これにより、将来的なERP刷新や業務拡張にも対応可能な強固なインフラ基盤を確立した。

短期間で安全・柔軟なクラウド基盤を確保

データセンターのサービス終了という厳しい制約のなか、提供されていたクラウド基盤から、短期間で安全かつ安定したAWSへの移行を完了。NECの支援のもと、双方のクラウド基盤間に一時的にセキュアなネットワーク回線を設けることで、業務への影響を最小限に抑えたスムーズな移行を実現した。

SAP Cloud Connector(SCC)構築もワンストップで対応

SAP Cloud Connector(SCC)を用いることで、SAPのさまざまなクラウドソリューションとオンプレミス環境をシームレスに連携。これにより、グローバル共通基盤上でのデータ連携や業務プロセス自動化を加速させ、今後の業務効率化とDX(デジタルトランスフォーメーション)基盤の実現につながった。

  • SAP Cloud Connector(SCC)とは、オンプレミス環境とSAPのクラウドサービス(例:SAP Business Technology Platformなど)を安全かつシームレスに接続するミドルウェアである。これにより、社内システムとクラウドサービス間のデータ連携や業務プロセスの自動化が容易に実現できる。

導入ソリューション

AWSのSAP基盤(ECCおよびSCC)とSAPのクラウドソリューションはBTPの接続ツールであるSAP Cloud Connectorを介して連携。SAP Cloud Connectorサーバは開発用・本番用の2台構成で構築。これにより、社内システムとクラウドサービス間のデータ連携や業務プロセスの自動化が容易に実現できる

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事例の詳細

導入前の背景や課題

株式会社トプコン
経営推進本部
ITオペレーション部 ITマネジメント課
シニアエキスパート
荒木 朋子 氏

「SAPの2027年問題」の前にデータセンターの移管が喫緊の課題に

人々の生活や社会基盤を支える「医(ヘルスケア)・食(農業)・住(建設)」に関する幅広い事業をグローバル展開するトプコン様。「医・食・住」に関する社会的課題の解決を通じて、豊かで持続可能な社会の実現に貢献することを経営理念として掲げています。

同社はさらなる成長に向け、「中期経営計画2025」のもと、DXソリューションの拡充とデータドリブン経営の推進に取り組んでいます。2015年4月、グループ国内6社の基幹システムをSAPに統合し、その後は海外拠点のSAPともインスタンス連携を進めることで、グローバル共通基盤による密な連携を実現してきました。

こうした状況のなかで、SAP ECC6.0(以下、ECC6.0)環境を設置しているデータセンターが2024年末でサービス終了することが、2023年6月に発表されました。猶予は約1年半しかなく、移行にかかる期間としては厳しいものでした。

同社は財務会計(FI)、原価管理(CO)、販売管理(SD)、在庫購買管理(MM)、生産管理(PP)など多様なSAPモジュールを利用しており、カスタマイズやアドオンも多くはないもののもちろん存在しています。そのため、「短期間で新たなERP環境への全面移行を実現することは工数・リスクの両面で大きな課題となっていました」と同社 経営推進本部 ITオペレーション部 ITマネジメント課 シニアエキスパートの荒木朋子氏は課題を述べます。

そこで、まずはECC6.0環境そのものをAWS上に移行し、さらに将来的なERP刷新やデジタル活用の拡大を見据え、オンプレミス環境とSAPクラウドソリューションをシームレスにつなぐSAP Cloud Connector(SCC)もあわせて導入。NECの支援のもと、AWSへのクラウドリフトを短期間で安全かつ確実に実施することで、リスクを最小限に抑えつつ、柔軟性と拡張性を備えた基盤運用体制を着実に構築しました。「これにより、今後のERP刷新やDX基盤となるグローバル共通基盤の整備を実現しています」と荒木氏は続けます。

選択のポイント

株式会社トプコン
経営推進本部
ITオペレーション部 ITインフラ・セキュリティ課
エキスパート
安原 尚哉 氏

NECの圧倒的な実績と信頼感 ― 豊富なSAP移行経験に裏打ちされたパートナーシップ

クラウド環境にはAWSを選定しましたが、そのAWSへのクラウドリフトを実現するパートナーとして、同社は最終的にNECを選定し、その理由について荒木氏は次のように述べます。

「NECは、自社でもSAPユーザーとして長年の実践経験を持ち、グループ全体でECC6.0からSAP S/4HANAへの移行を自ら成し遂げた実績を有しています。その過程で培われたノウハウや知見を活かし、多種多様なクラウドリフト&シフト案件で数々の企業のビジネス変革を成功に導いてきた豊富な支援実績を評価しました。

さらに、NECはSAP社およびAWSとのパートナーシップも非常に強固であり、クラウドネイティブな先端技術への知見や優れた人材も多数擁しています。そのため、SAPシステムのクラウド移行という大きなチャレンジも、安心して任せることができると確信できました」

同社 経営推進本部 ITオペレーション部 ITインフラ・セキュリティ課 エキスパートの安原尚哉氏も「財務アプリケーションやジョブ管理、BIツールなど、既存のサブシステムをすでにAWS上で運用していたこともあり、ECC6.0本体も同じAWS上に集約することで運用の統一・効率化が図れるという点もNECの提案は非常に理にかなっていました」と高く評価しました。

また、今後SAP S/4HANAへの刷新や業務拡張を行う際にも、カスタマイズやアドオン、周辺システムとの複雑な連携なども必要になります。「どのような課題にも柔軟かつ確実に対応できるNECの技術力・ケイパビリティは大きな安心材料です。移行プロジェクトのすべての局面で高いレベルのサポートを受けることができ、まさに“ワンストップ”で課題解決できる存在といえます」と安原氏は続けます。

荒木氏は「NECは経営のDXも自ら実践しており、現場に即したリアルな提案やノウハウの共有が非常に的確でした。パートナーとして安心して任せられると判断しました」と語ります。

導入後の成果と主な取り組みポイント

SAP ECC6.0およびSAP Cloud Connector(SCC)を一体的に導入

本プロジェクトは2024年5月に開始されました。NECは要件定義の初期段階から、サイジングや移行方式について丁寧な提案と議論を重ね、トプコン様のビジネス要件や運用イメージに最適なクラウドアーキテクチャを設計しました。「時には意見がぶつかることもありましたが、お互いに納得できるまで真摯に協議し、最善策を導き出すことができました」と荒木氏は振り返ります。

移行作業の工夫と成果

移行作業においては、データ移行時のセキュリティやパフォーマンスへの配慮、業務影響の最小化など、多くの工夫が施されました。特に、社内ネットワークの負荷を軽減するため、データセンターとAWS間に専用の安全なネットワーク経路を一時的に構築し、大容量データの移行を高速かつ安全に完了させる仕組みを導入。この工夫により、従来なら時間を要するデータ移行も計画通り短時間で完了することができました。また、移行期間中も本番業務への影響を最小限に抑えるため、段階的なテストや夜間・休日を活用した切替作業、ユーザー部門との密な連携も図りました。さらに、システム停止時間の短縮や移行に伴う事前検証、AWSリソースの柔軟なスケーリング設定なども実施し、インフラ運用コストの最適化とパフォーマンス向上を実現しています。

可視化と効率化の実現

インフラをクラウド化したことで、運用コストや基盤リソースの利用状況が「見える化」され、最適なサイジングとリソース活用、コスト管理が可能となりました。「これまで1時間以上かかっていた月次バッチ処理が30分で完了するなど、パフォーマンスも大きく改善しています」と安原氏は効果を語ります。

SAP Cloud Connector(SCC)導入によるグローバル連携強化

ECC6.0とさまざまなSAPクラウドソリューションとの連携を推進するため、SAP Cloud Connector(SCC)を開発・本番の2台構成で新たに導入。これにより、今後のERP刷新や各国拠点を含むデータ連携・受発注業務の自動化を大幅に進めることができます。

SAP Cloud Connector(SCC)は、オンプレミス環境とSAPクラウドサービス間の安全・シームレスなデータ連携を実現するミドルウェアです。今回、グローバルなデータ統合と業務自動化を見据え、SCC導入の設計・構築をNECがワンストップで対応。「BTPとの接続ツールの構築・運用まで任せられるベンダーはNECしかいないと判断しました。豊富な実績と技術力を改めて実感しています」と荒木氏は評価します。

将来を見据えた基盤拡張と今後の展望

今回のクラウドリフトは、外部環境の急激な変化への対応という短期的な課題解決にとどまらず、将来のERP刷新やデータドリブン経営の実現へ向けた戦略的な基盤を整備する取り組みでもあります。「今後はクラウドネイティブ技術やSAP S/4HANAの知見をさらに深め、DWHやAIの活用、データ活用による経営判断の迅速化・高度化を目指していきます」と荒木氏は展望を語ります。

NECのサポートのもと、こうした成長戦略の基盤を早期に確立できたことが最大の成果と語ったトプコン様。同社はこの基盤を活かしてさらなる成長戦略を描いていく構えです。

NEC担当スタッフの声

NEC
製造システム統括部 製造第一システムグループ
プロフェッショナル
彌政 浩二

お客様の多様な移行ニーズに柔軟に対応

次期ERPへの移行を見据えつつ、まず現行SAP環境のクラウド化を優先する。トプコン様の取り組みは「SAPの2027年問題」に直面する企業にとって、現実的な選択肢の1つだと思います。

ただし、稼働環境やシステム構成はお客様によってさまざまです。右から左に単純に移し替えるというわけにはいきません。お客様が何を目指し、どのような課題を解決したいのか。移行後の運用まで含めて、ニーズや期待に応えることが大切です。

そうした多様なニーズに対応できるケイパビリティがNECの大きな強みです。スキルを持つ人材やチームが密に連携し「One NEC」となってお客様をサポートします。今回のプロジェクトでも、基盤整備からシステムおよびデータ移行、その後の運用サポートまで一気通貫でご支援しました。

SAP環境のクラウド化やS/4HANA化に課題を抱えているお客様は多いと思います。NECはお客様のニーズを踏まえた最適な提案とサポートで、「SAPの2027年問題」に直面するお客様の課題解決をトータル支援していきます。

二人三脚でお客様の成長戦略を支援

NECは国内最大級のSAPユーザです。SAP S/4HANAへの移行やグループ統合基盤を自らが実践し、データドリブン経営を推進しています。このなかで培ったナレッジやノウハウを活かし、いかにトプコン様に価値提供するか。これを第一に考えて対応にあたりました。

トプコン様はSAP環境の移行計画に明確なビジョンを持たれています。移行は手段であり目的ではありません。目指しているのは、統合的なデータ活用によるデータドリブン経営の推進と運用の効率化です。今回のSAP環境のクラウド化はその一環です。この点を深く理解し、将来を見据えたロードマップ策定から初期段階からサポートさせていただきました。

単なる移行支援だけでなく、データ活用を含めた中長期的な戦略的支援ができる。これはNECの大きな強みだと思います。「SAPの2027年問題」をチャンスに変えて、DX戦略や経営の高度化を目指す。こうした活動にさらに磨きをかけ、これからも多くのお客様の成長戦略を支援していきます。

(当時の所属)
NEC
第三製造ソリューション統括部 第三インテグレーショングループ
佐々木 梨香

お客様プロフィール

株式会社トプコン

所在地 東京都板橋区蓮沼町75-1
設立 1932年9月
資本金 16,891百万円(2025年3月末現在)
売上高(連結) 2,160億円(2025年3月期)
従業員数(連結) 5,327名(2025年3月末現在)
事業内容 「医・食・住」に関する社会的課題をDXで解決するグローバル・ソリューションプロバイダー
  • 医(ヘルスケア):眼健診(スクリーニング)の仕組みづくりによる眼疾患の早期発見
  • 食(農業):「農業の工場化」による食糧の安定的な生産
  • 住(建設):「建設工事の工場化」による安心・安全で住みやすい街づくり
に貢献するDXソリューションビジネスを推進
URL new windowhttps://www.topcon.co.jp/

株式会社トプコン様

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(2025年7月23日)

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