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1章では、災害支援のあり方の変化に伴い求められるようになった、きめ細やかな被災者支援の現状について紹介します。
被災地支援から被災者支援へ
近年、個人の事情によって避難所以外に避難する被災者の増加により、避難生活を取り巻く環境が大きく変化しています。平成28年の熊本地震では、避難所以外に自宅での在宅や車中泊で避難生活を送る被災者が多く存在していました。こうした状況において、在宅の避難者が必要としている情報を行政職員が把握できず、情報・支援物資・サービスの提供に支障が生じるという課題が見られました。
内閣府で令和4年4月に改定された「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」では、「避難所で生活する被災者だけでなく個々の事情により避難所以外で避難生活を送ることになった者も支援の対象とすることが適切である」と記載されています。
また、避難生活の環境変化に対応した支援について令和5年から検討会を開始し、場所(避難所)から人(被災者)への支援の転換が図られてきました。
令和6年1月1日には能登半島地震が発生し、「人(被災者)」への支援の必要性が改めて認識されました。能登半島地震では、自宅や車中に加えて納屋・ビニールハウス・土蔵等にも被災者が避難するなど避難生活の多様化がみられたほか、インフラの復旧に時間を要し、被災者が居住地の1次避難所から、他地域の1.5次避難所、2次避難所等へ避難する広域避難も課題となりました。被災者一人ひとりの状況を把握し、必要な支援を継続的に提供する「きめ細やかな被災者支援」が、災害対応に求められています。
- ※内閣府 第2回避難生活の環境変化に対応した支援の実施に関する検討会(令和5年9月6日開催)資料1 場所(避難所)から人(被災者)への支援の転換の必要性及び避難所以外の場所での避難の位置づけ等について
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/02/pdf/shiryo1.pdf
最新の「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」は令和6年12月に改定
きめ細やかな被災者支援に必要な被災者情報の連携
地方公共団体の職員がきめ細やかな被災者支援を実施するにあたって、前提として一人ひとりの被災者の安否や被災状況を正しく把握する必要があります。しかしながら、従来は被災者情報の連携が進んでおらず、継続した被災者の状況把握や支援の提供は実現できていませんでした。
災害対策基本法では、「災害時に個々の被災者の被害状況や支援状況、配慮事項等の被災者情報を一元的に集約するものとして、市町村が保有する住民基本台帳等をもとに市町村ごとに被災者台帳を作成することができる」とされています。
しかし、内閣府においては被災者台帳の作成等に関する実務指針(平成29年3月)や簡易なファイルの提供による例示は示しているものの、その作成・運用については市町村に任されているのが実態です。
- ※平成25年に災害対策基本法が改正され、被災者台帳の作成、利用及び提供に関する事務が新たに規定された。災害対策基本法第90条の3「市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の被災者の援護を総合的かつ効率的に実施するため必要があると認めるときは、被災者の援護を実施するための基礎とする台帳を作成することができる。」
法律に明記された「広域避難における情報連携の推進」
そこで令和7年6月に災害対策基本法が改正され、広域避難における避難元および避難先市町村間の情報連携の推進に関する条文が追加されました。これにより、「市町村間での被災住民の援護に関する情報提供」や、「市町村から都道府県への情報提供や協力依頼」、「都道府県から市町村への情報提供依頼」、「都道府県間の情報提供」などを可能とすることが明確化されました。
法律の改正により方向性は示されましたが、広域避難における情報連携をどのように実現するかは定義されていません。このコラムでは、広域避難における被災者の情報連携検討の現在地を紹介し、被災者情報の広域連携を促進するためのポイントを説明します。
- ※内閣府 災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和7年法律第51号)
https://www.bousai.go.jp/taisaku/kihonhou/kihonhou_r7_01.html
広域避難時代のきめ細やかな被災者支援 ~情報連携の仕組みづくり~ 目次
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