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夏場の空調電力を半減するデータセンターの冷却技術
NECの最先端技術2018.6.29
ITを利活用することで、すべての産業、運輸、民生のCO₂を削減することが期待されています。その基盤である”情報”を取り扱うクラウドを提供するデータセンターは、電気、ガス、水道と同じように、インフラの一つとなっています。近年ではIoTの進展や、仮想通貨の採掘の需要増により、全世界の消費電力の0.5%をデータセンターが消費しており、今後益々その割合は増加し、2025年には電気自動車向けに見込まれる電力さえも上回ると予測されています。
データセンター内の消費電力の30~40%は、IT機器を冷却するための空調機が消費しており、気温が高くなる地域や夏場などは、大量の電力が消費されていました。そのため、気温の低い地域にデータセンターを設置するなど、設置場所の工夫による施策が行われておりましたが、情報を利用したい場所とデータセンターの場所が離れることによる、利便性が犠牲になっていました。
そこで当社は、気温が高い場合でも、データセンターの空調電力が削減できる技術を開発しました。これによって、気温が高い地域のデータセンターでも空調機の消費電力を抑えることができ、利便性と運用コストの両立を図ることが可能となります。
新技術の特徴
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サーバラックの局所空調により、ファン電力と圧縮機電力を削減
空調機の電力は概ね、冷やすための「圧縮機」の電力が6、IT機器からの排熱を屋外に運ぶための「ファン」の電力が4の割合となっています。従来はサーバルーム内に空気を循環して、冷気と暖気(IT機器からの排気)を入れ替えていましたが、空気は断熱材として使われることからも想像できるように、熱を運ぶ媒体としての効率は良くありません。
そこで空気と比べて、熱を運ぶ効率が100倍良い冷媒を、熱源であるIT機器の近くまで循環できれば、ファン電力を削減することができます。さらに、IT機器からの排熱がサーバルーム内に拡散して温度が下がってしまう前に、冷媒と熱交換させることによって、圧縮機の電力も下げることができます。
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低圧損な流路技術により、低圧冷媒を空調用途に使用
しかし、サーバルーム内に冷媒を循環させるためには、安全規定面から現在空調に使用されている冷媒の圧力の1/10程度まで低圧にした冷媒を使用する必要があります。低圧の冷媒は、環境的には優れていますが、熱を奪う物性値である潜熱が極端に小さく、その分多くの体積流量を配管に流す必要があります。つまり、配管に細い箇所があるなど、冷媒の流れる流路抵抗が大きいと圧縮機の電力が増大してしまうため、配管設計がとても難しいという課題がありました。このため、配管径や圧縮機のサイズが大型化してしまい、低圧冷媒は空調用として使用されなかった経緯があります。
そこで当社は、配管を急に曲げない、あるいは急に配管径を拡大・縮小させないといった、流路抵抗を極力小さくする配管設計を実施しました。さらに複数本の細管を使用し、高速道路のように冷媒がスムーズに合流や分流できる流路を構築することで、流路抵抗を小さくしながら、配管敷設もやりやすくしました。
本冷却システムをインド南部のデータセンターに導入し、実験を行いました。気温35℃の時に、既設の空調機と比較し、一般的なラックの発熱量の2倍である7.5kWのラックに導入したところ、空調効率の指標であるCOP(Coefficient of Performance、冷却能力÷空調消費電力)が、既設の空調機の1.6に対し、3.2であることを実証しました。
現在、本冷却システムの製品化に向け、さらなる改良を続けています。当社は引き続きデータセンターを効率よく運用する技術を提供することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
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