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大量の映像から不審者を高精度で絞り込む「出現パターンの数値化・自動分類技術」

NECの最先端技術

2018.6.12

大量の映像から不審者を絞り込む

社会的背景

近年、ショッピングモールや、ビル、駅、公共施設など公共の場に多くのカメラが設置されています。それらから収集される映像データは日々増大し、人手による解析が困難になりつつあります。特に複数カメラで撮影した長時間の映像の中から、同じ場所に何度も出現する、あるいは複数の場所に出現するといった不審な行動をしている人物を見つけ出すための分析は、人手による時間がかかる確認作業となり、非常に困難なのが実際です。

技術的課題

これらの課題を解決するため、当社は頻出する人物を高速に抽出する「時空間データ横断プロファイリング(注1)」を2015年に発表しました。この技術では、頻出する人物を素早く見つけ出すことができる一方で、頻出人物の抽出結果をさらに活用するためには、うろつき、通り抜け、立ち止まりなど、個々の現れ方(出現パターン)の違いを理解して分類することが重要です。従来技術では、個々の出現パターンの分類を目視に頼っていたため、時間大量の映像の分析結果に対する判断に関わるオペレーションのボトルネックとなっていました。

新技術の概要

当社はAI化によって大量の映像データを分析する際に不審者の見逃しを防ぐため、出現パターンの違いに注目して不審者を抽出する手法を開発しました(図1)。

図1:出現パターンの違いによる不審者の抽出システム

本技術は、映像に人物が現れる出現頻度や、動き、滞在時間等の項目を統計処理し、その変動の度合を変化曲線で表し、また、統計項目に対して重みづけすることによって、特定の出現パターンの人物だけを抽出することを可能にします。公開映像データを用いてこれの評価実験を行った結果、うろつき、長時間立ち止まる、通り抜けた、といった人物の出現パターンを正しく分類し、実際に不審者の見逃しがなくなること(図2)を確認しています。

図2:うろつきの検出率

新技術の特長

  1. 人物の出現パターンを数値化、可視化
    カメラ画像をマス目に分割し、出現頻度、動き(行動範囲、活動量)、滞在時間といった情報を細かく統計処理し、画像1フレーム毎の状態を数値化します。これを時間の経過で並べ、その変動の度合を変化曲線(図3)で捉えます。
    図3:出現パターンの違いを表す変化曲線
    これにより、頻出する人物について、カメラ映像に長く映っていて変動の度合が小さいと立ち止まり、大きいと道迷い、うろつき、といった出現パターンの分類を行います。例えば、曲線の勾配が急であれば動きが早く、逆に緩やかであれば遅い傾向を示します。図3において青線で示した人物の行動で見ると、曲線が急に上がり、変動しながら緩やかになっていることから、その場に来た後に広範囲で行ったり来たりしている“うろつき”を表します。

    一方で、不審者の出現パターンを間違いなく見つけ出すため、除外したい出現パターンもあります。下記にその代表的な2例を示します。こうした出現パターンを予め分析対象から除外しておくことで、不審者の検出を容易にすることができます。

    <例1:通り抜けるまでの間に、動きパターンの曲線は一定の割合で上昇する>
    <例2:立ち止まると、動きパターンの曲線は下降する>
  2. 用途に応じた重み付けにより、目的の出現パターンで順位付け
    先に示した変動の度合によって導き出した出現パターンについて、出現頻度、動き、滞在時間の数値の重みづけを調整することによって、人物の順位付けの変更を可能にします。

    用途に応じて重みづけを変えることによって、見つけたい出現パターンの人物が上位になるような設定が可能になります。例えば、通り抜ける人を見つけたい場合には“動き”の重みづけを大きくする、立ちどまっている人の場合は、“滞在時間”を大きくする、うろついている人の場合は、“動き”と“滞在時間”を大きくするなど、人物を出現パターンで絞り込んでいきます。

    これらを簡単に操作できるGUIによって、頻出する人物の抽出と、その人物がどのカメラにどのくらいの時間で出現し、どのようにカメラ間を渡り歩いたか、出現パターンの情報を一目で把握できます。

    NECは「2020中期経営計画」においてセーフティ事業をグローバルでの成長エンジンに位置づけ、プラットフォームを活用したサービス型ビジネスへの転換、パブリックセーフティからデジタルガバメントなどへの事業領域の拡大を推進しています。本技術は「NEC Safer Cities」の実現を支える中核技術の1つです。今後NECは、防犯や、観光客へのおもてなし等への適用に向けて、2018年度の実用化を目指します。
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