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走行映像と運転操作データから運転アドバイスを生成、改善案を提案
ドライバー運転診断
NECの最先端技術 2026年6月5日

少子高齢化の進行とともに、運輸業・運送業を担うドライバーの高齢化が進んでいます。熟練したスタッフの引退を控え、人材確保やスキルの継承、効率的な研修の実施は、各社を悩ませる大きな課題です。NECが今回開発したドライバー運転診断は、自身の運転スキルのクセやリスクを客観的に把握し、改善を支援する技術です。運輸業・運送業の課題解決にもつながるという本技術の詳細と可能性について、研究者に詳しく話を聞きました。
急ブレーキ記録だけでは見えなかった事実が見えてくる

シニアディレクター
劉 健全
― ドライバー運転診断とは、どのような技術なのでしょうか?
劉:車のドライブレコーダー映像や運転操作データ、車体に設置されたセンサのデータを統合的に分析し、ドライバーの運転スキルを診断する技術です。これまでにもNECでは映像の内容を大規模言語モデル(LLM)で要約する技術をつくり出し、ドライブレコーダー映像から事故報告書を自動作成するアプリケーションを開発していましたが、本技術はこの進化系にあたります。今回はドライブレコーダー映像にとどまらず運転操作データや車載センサ等のマルチモーダルなデータを分析することでドライバーの運転スキルを評価し、左折時にふくらむクセや交差点侵入時の速度の問題等、検知した課題をユーザへ自然な日本語でフィードバックします。

主任研究員
藤若 雅也
藤若:既存の運転診断サービスの多くは急ブレーキ数や急加速、速度超過などの運転操作データのみを参照したものです。私たちの技術では運転操作データや車載センサのデータとドライブレコーダーの映像を同期させて、複雑な意味を読み取れるようにしています。

研究員
ジ ショウトン
ジ:たとえば急ブレーキを踏んだとしても、それは飛び出してきた子どもに対処するための最善の判断だった場合もあり得ます。逆に急ブレーキや急ハンドルの記録が無かったとしても、信号無視や交通ルールを違反している場合もあり得ます。実は運転操作のデータだけで見えるものは一部に過ぎません。映像データや他のデータと結びつけることではじめて見えてくる事実はたくさんあるのです。
藤若:現在、本技術は高齢化と人手不足が問題化している運輸業・運送業などの業界での応用を検討しています。新人ドライバーのスキル習得を一人ひとりに合ったかたちで効率的に支援できればと考えている次第です。また、そういった企業では過去の事故事例や危険運転などによるヒヤリハットの記録をお持ちであることも多いと思いますので、そうしたデータベースと組み合わせることで、さらなる効果を発揮することもできると考えています。

ジ:加えて、法令データとの連携も実現しました。道路交通法のテキストデータと映像を関連付けて診断することで、その日の運転で起きた違反行動や違反の恐れがあった運転行動をフィードバックすることができます。
劉:このような私たちの技術を実際に体験していただくために、運転シミュレータを作成しました。運転席を模したシミュレータに座り、ゲームのように画面の指示に従いながらハンドルやアクセル・ブレーキ、ウィンカーを操作して一定時間の運転ミッションをこなすというものです。終了後にはすぐにシステムが運転行動を分析し、ユーザにフィードバックを返します。
数々の展示会に出展し、お客様からたくさんのフィードバックを得られたことは非常に良い経験となりました。なかでも、CEATEC 2025で当時の石破茂首相に体験いただいた様子はSNSで話題となりました。閲覧数は1600万にものぼり、思いがけないプロモーション効果を得られました。
納得できるアドバイスを生み出す一貫したソリューション

― どのような技術によって、運転診断を実現しているのでしょうか?
藤若:映像や運転操作データなどの各種データを同期させて学習させているのですが、ただやみくもに全ての映像を学習させていくわけではありません。映像中から重要なシーンを自動的に検索し、その内容を認識して学習できるように構築しています。マルチモーダルのデータを横断して検索できるNECの技術を活用したものですが、これによって効率的な学習を実現しました。
また、もう一つ目標として追求したことは、「ドライバーの行動変容につなげる」ことです。どうすればドライバーの意識を変え、安全運転につなげることができるのか。これは1週間程度の短い期間で実現できるものではなく、日々フィードバックすることが重要だと思いますので、ユーザの意識変革を実現できるような納得性の高いアドバイスを継続的に生成できるように努めました。
こうしたアドバイス生成や理想的な教師データの作成にあたっては、事業部にも協力をいただきました。実は、事業部にはプロドライバー並の運転スキルを持つ社員がいるのです。この方の運転データを収集したり、さらにはインタビューをして運転操作の意図を収集したりして学習することで。運転診断の精度を高めています。

ジ:加えて、運転に関連する教本のデータも学習させる試みも行っています。使えるナレッジはとことん使うことで賢いAIをつくり上げていきます。
劉:これまでにNECが培ってきた技術の積み重ねもあります。まず、NECではマルチモーダルなデータを蓄積し、高速に処理できるデータベース技術を持っています。私がNECで最初に開発した時空間データプロファイリングと呼ばれる技術ですが、これがすべてを支える基盤となっています。また、データの分析においては、NECは多数の認識AI技術を保有しています。これらとLLMを適宜組み合わせて力を引き出し、課題を解決できるアセットが揃っているというのは大きかったです。
また、今回はさらにマルチモーダルなデータのインプットに対応できるようになったことで、可能性を飛躍的に高めることに成功しました。プラットフォームと認識AI技術、さらにはLLMのノウハウやマルチモーダルデータの処理というすべてをフルスタックで対応し、一貫したソリューションを作り上げられるというのはNECならではの強みだと思います。

コーチングAIや自動運転の遠隔支援へ展開

― 今後の展開や可能性について教えてください。
劉:冒頭で藤若さんが話してくれたような運輸業・運送業での応用に加えて、保険業界のテレマティクス保険での応用も視野に入れています。テレマティクス保険とは、車載センサの急ブレーキや急ハンドルのデータから保険料を算定する自動車保険です。ここに私たちの技術を組み込めば、より精度の高い保険料の算定ができるはずです。
また、今回の技術をきっかけに、ユーザにアドバイスする難しさや重要性を実感しました。いかに納得しやすいかたちでフィードバックするかを追求する「コーチングAI」のようなものも考えていきたいですね。きっと、製造業や建設業、リテールや医療・介護など、さまざまな領域でも展開ができるはずです。

ジ:私もユーザの立場に立ってコーチングできるAIは必要だと考えています。AIがさまざまな業界で活躍するようになっていますが、最終的にAIは人のためにあるべきものです。教えられる側の身になって、一人ひとりの個性を考えながらコーチングを行えるような技術の開発をしていけたらと考えています。
藤若:そうですね。私は、自動運転への展開も考えています。今後、自動運転が普及していくとしても、車内の計算リソースだけでは処理できないような状態というのはこれから必ず発生してきます。そのようなときに、よりリッチなリソースのあるクラウド側でAIが支援したり、オペレータが遠隔から判断することが必要になってきます。自動運転そのものを賢くしていくだけではなくて、遠隔から支援するシステム側にフォーカスし、迅速な判断をするための必要十分な情報をわかりやすくリアルタイムに提示するシステムへ発展させていくというのも、これからの市場を考えていくうえで大きなチャレンジになると思っています。


ドライバー運転診断は、ドライブレコーダーの映像や運転操作データ、車載センサなどのマルチモーダルなデータを統合的に分析し、ドライバーの運転時のクセや危険度を診断することができる技術です。道路交通法などの法令のテキストデータも学習しているので、LLMを通じて法令違反や違反の危険性があった運転行動を自然言語でユーザへフィードバックすることも可能です。本技術にはマルチモーダルなデータを蓄積し、即時検索ができるNEC独自の「時空間データプロファイリング」技術をはじめ、各種映像認識技術、LLM活用ノウハウを組み合わせることで実現しました。プラットフォームから分析、LLM活用まで1社で総合的に扱える企業は世界でも稀有であり、本技術開発を成功させた大きな要因となっています。
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