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学生のみなさんへ2020インタビュー:吉本 達也
2020年2月14日
世界初の建設機械自動化をめざして

システムプラットフォーム研究所
吉本 達也(よしもと たつや)
2015年にNECへ入社し、ロボティクス分野の研究に取り組む。2019年3月には、建設機械の遠隔制御に関わる論文で電子情報通信学会 情報ネットワーク研究会で第25回ネットワーク研究賞を受賞している。
コンピューティングと制御を活かした研究開発
私は学生時代、サイバーフィジカルシステムと呼ばれるコンピューティングと制御の融合領域で研究を行っていました。NECへ入社した大きな理由は、学生時代の経験・スキルを活かせると感じたからです。就職活動中に当時の研究所長とお会いする機会があり、プログラミングや制御が得意な人材を探しているという話を聞いたことで、強く志望するようになりました。また、社員の方々の雰囲気も決め手になりましたね。親しみやすくまじめな印象の方が多かったので、自分に合っているのではないかと感じました。
入社後も、学生時代の専門性を活かした研究を続けられています。入社から2年まではコンピューティング分野の研究に取り組んでいました。NECが得意とするベクトル演算機の性能を活用し、様々なソフトウェアの処理速度を高速化する技術の研究で、生体認証システムや社会シミュレータなどを担当しました。
3年目からはロボティクス分野に研究テーマが変わり、現在の建設機械制御の研究に従事しています。コンピュータ制御によってバックホウ(油圧ショベル)の運転を自動化し、土砂の掘削や積込などの作業を無人化することをめざしています。
建設機械自動制御の実証実験に成功

土を掘削してダンプカーへ積み込んだり、地面を平坦にならしたりする建設機械の操作には熟練者の高度な技術やカン・コツが必要です。しかし、近年では高齢化による影響もあり、建設業界では人手不足が進んでいます。建設機械の自動運転は、こうした課題の対策として期待されている技術です。さらに、自動運転が実現すれば災害や建設現場の危険なエリアに人が立ち入る必要がなくなります。現場の安全性を確保することもできるようになるでしょう。
しかし、世界的に見てもさまざまな現場で汎用的に活用できるような建設機械の自動運転技術はまだ実用化されておらず、ゼネコンや建設機械メーカなど各社が積極的に取り組んでいるテーマです。そのなかで、私たちは適応予測制御技術と呼ばれる独自の制御技術を開発し、2019年にバックホウ自動運転のPoCに成功しました。現在は実現場でのPoCや実用化に向けた最終的な調整に取り組んでいるところです。
ちなみに、本技術を初めて社外発表した展示会でのデモンストレーションは良い思い出です。何しろ絶対に失敗できませんから。本当にギリギリまで調整を重ねましたし、本番で自動制御のスタートボタンを押すときは、今まで味わったことのない緊張感に襲われました。その分、無事に成功したときの喜びや達成感がとても大きかったですね。その後プレスリリースが発表され、いろいろな新聞記事に掲載されたのを見たときは約1年半研究を頑張ってきて良かったなと実感しました。
研究者として独自の立ち位置を固める

近年、研究者に求められている能力はどんどん増えてきていると感じます。従来の研究では、自身の専門領域を突き詰めてコア技術をつくるということに尽きていたと思います。しかし現在ではそれだけでなく、ビジネス的な視点を持つことや、お客様のニーズをくみ取ってソリューション的な思考をもつことがますます重要になってきています。また、自分の専門外の領域を知り研究に取り入れることも、イノベーションを起こすためには非常に重要な姿勢です。
しかし、何でもできるスーパーマンに誰もがなれるわけではありません。そうした環境のなかで、どういう研究者になりたいかという立ち位置やスタンスを固めることが、まずは重要であると考えています。これから研究者になりたいという方々は、最初に自分がどういう研究者になりたいかイメージしてみると良いと思います。
私自身は、社内で数少ない制御という領域で独自の存在感を発揮できる研究者になりたいと考えています。ユーザ視点を持ち、実際に広くお客様に使っていただける製品開発に貢献できるよう、これからも取り組んでいきたいですね。
会社でのある一日


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