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特集  研究とエンジニアリングの双方で活躍
file08 谷内田 尚司

2024年1月24日

尖った技術たちの間を埋めて、ソリューションへ

谷内田 尚司

技術は日々進化をつづけ、世界はめまぐるしく変化する先行き不透明な現代。
いま研究開発には、スピーディに事業化を実現する新しい研究スタイルが求められています。
カギとなるのは、研究とエンジニアリングを自在に横断して実装を加速させるスキルです。
NECではいま、このスキル領域を「リサーチエンジニアリング」と名付けて強化を進めています。
新しい研究スタイルをいかに構築し、世界をリードしつづけられるか――。
日々模索と挑戦をつづける新時代の研究者たちの姿をご紹介します。

ビジュアルインテリジェンス研究所
谷内田 尚司

1988年広島工業大学卒。同年日本電気ホームエレクトロニクス(株)入社。2000年日本電気(株)編入。現ビジュアルインテリジェンス研究所所属・主任研究員。画像処理(CODEC)、画像認識、所属学会:映像情報メディア学会、製剤機械技術学会。

最終目的にあわせて、複数の技術に手を入れてまとめあげる

― これまでNECでは、どのような研究や開発に携わってきたのでしょうか?

1988年にNECホームエレクトロニクスへ技術職として入社したのが、NECとの関わりのスタートです。当時はVHSの開発に携わり、ノイズワイパーという名称で一世を風靡した技術をつくっていました。それから1年半後、そろそろハイビジョンが始まるということで中央研究所に開設されたビデオ開発センターに異動して、デジタルのVTR開発を担っていました。その後は光ディスクのカメラや、規格戦争が繰り広げられたHDDVDの開発などに携わったあと、画像/映像認識技術へ研究テーマをシフトしました。現在は、薬品に混ざった異物を映像認識で判別する検査システムの研究開発に取り組んでいます。

入社以来、長く開発を中心に取り組んできたので、自分自身としてはエンジニアもしくは「何でも屋」としての意識を持っています。

― 谷内田さんの考える「リサーチエンジニアリング」とは、どのようなものでしょうか?

さまざまな定義があると思っています。例えば、コードを書くのが抜群に速くて、リサーチャーのつくるプログラムをスピーディに実装することもリサーチエンジニアリングだと思います。

一方で、私がこれまで取り組んできたように、複数の尖った技術に手を加えながらつなぎ合わせ、一つのソリューションに仕立て上げていくというのもリサーチエンジニアリングだと思います。櫛(くし)の間の溝を埋めていくようなイメージです。この仕事は、インテグレーションのように技術同士を組み合わせるだけではうまくいきません。世の中に本当に役立つ仕様は何かというところから、自分で考えて設計していく必要があります。というのも、尖った技術というのは実はオーバースペックであることも多いからです。社会で実装したときに必要十分な仕様を考え、一つひとつの技術に調整を加えながら全体をソリューションとしてまとめあげていきます。そのためには個別の技術への深い理解が必要ですし、場合によっては新しい技術を開発する必要もあるでしょう。このような業務も一つのリサーチエンジニアリングだと考えています。

技術を広く知り、ソリューションを設計する

― 尖った技術の間を埋め合わせるとは、より具体的にはどのようなことでしょうか。

たとえば、私は以前「ランニングポリス」というソリューションの設計・開発に携わりました。競技マラソンにおける警備を強化するために、警察官がカメラを肩につけてランナーと並走するというものです。東京オリンピックの招致がされている頃に、お客様からの依頼を受けて開発しました。

お客様からの依頼は、「肩につけたカメラで映像認識をしたい」ということだけでした。しかし、この仕様を実現しようとすると、通信ネットワークが重要になることがわかります。そこで、安定して高品質な映像をリアルタイムに配信することができる「適応映像配信制御技術」を開発した社内の別チームに声をかけてコラボレーションを進めました。まずは、このように社内で研究・開発されている技術に対して広く知っているということが重要になります。普段から視野を広く持つことや人脈を築くこともリサーチエンジニアリングにとっては大切なことであると思います。

こうして映像認識と適応映像配信制御技術という2つの尖った技術が手元に揃ったのですが、そのまま組み合わせるだけでは、当然うまく機能しません。そこで、映像認識を正確に機能させるために、映像中の注目したい部分だけはエッジ側で切り抜いて非圧縮で送るという仕組みを実装しました。また、それ以外の場所についても圧縮しすぎて周辺環境がわからなくなっては元も子もないので、圧縮の程度を細かく調整しています。このようにシステム全体のバランスを考え抜いて作り込むことで、ソリューションを完成させていきました。

また、実はこのソリューションを開発する以前から、カメラを装着して映像を送信するという技術の検討を進めていました。ライフログをとるための研究で、着用したベストに10個ほどのカメラをつけて映像データをPCへ飛ばすというものです。自主的な研究テーマとして可能性を探索していたものですが、結果的にこの研究をランニングポリスに応用することができました。

研究所と事業部のギャップを埋める相互理解を

― これからのあるべき開発体制について、どう思われますか?

以前は研究所と事業部の間に、私も在籍していた「センター」がありましたが現在はなく、研究所内でスピーディにエンジニアリングを機能させていくことが求められるようになりました。

研究所が開発して社外発表したものを、営業としてはいち早く売りたい。しかし、いまだ製品にはなってない。このギャップをなくすためにも、可能であればお客さんが「欲しい」と言う前に、事業部がニーズを先取りして「開発したい」と言ってくれるような体制が理想的だとは思います。しかし、いまは昔と比べるとそれが上手くいかなくなっている現状があるのではないでしょうか。お客様のニーズが多様になっているということがあるのかもしれません。

この点を乗り越えるためにも、やはり研究所と事業部の連携は一層重要になってきていると思います。そして、おそらくこのことに研究所も事業部も気づいていて、懸命に連携をしようとしています。だからこそ、研究所はコスト意識を徹底するとともに、事業部は技術理解を進めることで、お互いのギャップを埋め合わせていくことが重要なのではないかと考えています。

私も事業化やコスト意識には十分に気をつけてきました。こうした考え方を、残り2年のNEC生活のなかで後輩へ受け継いでいきたいと思っています。

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