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学生のみなさんへ2022インタビュー:戸泉 貴裕
2022年1月31日
虹彩認証で世界最高水準の技術評価を獲得

バイオメトリクス研究所
シニアリサーチャー
戸泉 貴裕(といずみ たかひろ)
大学院で理学博士を取得後、2012年4月にNECへ入社。スマートエネルギー研究所で電力指紋分析技術、データサイエンス研究所で音響イベント検知技術や衛星画像解析技術などの研究を行い、現在はバイオメトリクス研究所で虹彩認証技術の研究開発に携わる。音響イベント検知や虹彩認証ではベンチマークテストで精度世界No.1の獲得に貢献した。
さまざまな研究に共通するスキルがある
私は2012年にNECに入ってから三つの研究所で研究に取り組んできました。最初のテーマは、スマートエネルギー研究所での電力指紋分析技術です。この技術ではコンセントに電流センサを付けて電流波形を測定し、その先につながっている電気機器を識別したり、消費電力、装置の状態などを推定したりすることができます。オフィスフロアの分電盤内に設置されたセンサにこの技術を適用し、オフィス内での各機器の消費電力をモニタリングするシステムの開発などに携わりました。
2016年からは、データサイエンス研究所で音響イベント検知の研究に取り組みました。音響イベント検知とは、マイクで拾った音の信号から、何が起こっているのかを識別する技術です。応用例としては、防犯カメラで死角になっているところで事件が起きたとしても、音から異常を検知して警察に通報するというような、都市の安全・安心に寄与できるものがあります。音響イベント検知では、2016年にIEEE主催のコンテストDCASE2016での世界No.1獲得に貢献しました。
そして2018年からは、バイオメトリクス研究所で主に虹彩認証技術の研究をしています。このようにいろいろな分野で異なる研究を行ってきていますが、研究を続けるときに必要なスキルや技術は実はどのような分野でもあまり変わらないと私は考えています。何らかの物事に対して問題設定を行うこと。そして、解決手段のアイデアを出して実装・数値化して比較し、優位性を確認するといった研究スキルや機械学習を用いた認識技術は、分野や認識するターゲットが変わってもさまざまな場所で活用できるものだと思っています。
NISTで1位を獲得した虹彩認証技術

虹彩とは、人の黒目の内側にある瞳孔の周りのドーナツ状の模様のことを指します。この模様は、個々人で固有のパターンを持っており、かつ角膜に覆われ損傷しにくく、生涯不変と言われています。そのため、生体認証に適した部位として研究されています。
私の現在の仕事は、この虹彩を用いて個人を識別・認証するエンジンを、速度と精度の両面から改良し高度化することです。虹彩認証の研究開発においては、特に精度において客観的な結果を示すことが求められます。世界的権威のあるNIST(米国国立標準技術研究所)が実施する虹彩認証技術のベンチマークテストにおいて、NECは2018年のIREX 9で認証精度世界1位という結果を残しました。しかしその後の2019年から始まったIREX 10では、他社のエンジン性能が向上したため、我々はどうエンジンを改良しても3位より上の順位を獲得できなくなりました。このタイミングで、1位を奪回するための新エンジンの研究開発に私は手を挙げました。
これは、かつて1位を獲得したエンジンをさらに高精度化しなければいけないという非常に難しい、チャレンジングな研究開発でした。ベースラインのエンジンの精度が良すぎるため評価が難しく、さらに同じレベルのエンジンを新規に開発するにも膨大な時間がかかってしまいます。しかし、NECの強みであるAIを活用した虹彩以外の認証技術を駆使するなど、別の観点から徹底的に見直してみることでエラー率を大幅に改善することに成功しました。そして2021年8月、ついに世界第1位の座を奪い返すことができました。技術の事業化に際してこのような結果を残すことはとても重要です。研究者として非常にやりがいを感じられる結果でした。
また、今回の研究ではNECの研究環境が非常に恵まれたものであることも改めて実感することができました。簡単には手に入れることができないセンサやそれを動かすためのシステムを他の研究開発チームがすでに持っていたり、優秀な先輩後輩が多いので技術についていろいろな相談や議論、ノウハウ共有ができたりと、チームの仲間をはじめとして社内のみなさまに本当に助けられました。
人とのつながりが研究成果に結びつく環境

私がNECに入社した理由は、見学に訪れたときに面白そうな研究をしているという印象を受けたことと、働いている人の魅力でした。研究の現場でもそうですし、人事の担当の方、面接を受けた技術者や幹部の方も、みなさん非常に話しやすくて、「ここで一緒に研究がしたい」という思いを強くしました。
私は、入社してから10年になりますので、周りの人が何の研究をしているのかをある程度把握できています。やりたいことがあれば、まずは誰かに話してみることが大切です。すると「この技術はこの人がやっている」「誰かを紹介してくれる」という流れでつながりができていきます。これは、研究を進めるにあたって非常に良い効果があります。
若い頃は、飲み会の席で偉い方に勢いでやりたいことを伝えたりしましたけれど(笑)、そのときも話を真剣に聞いてくれて理解もしてくれましたし、実際にやらせてもらえたこともありました。学生時代とは違い、仕事では何も言わないでいると、言われたことだけをやることになってしまいます。そうならないためにも自分からこれがやりたいという意見を言うことは非常に大切です。そして、それをきちんと受け止めてくれる方々がたくさんいるのがNECの文化で一番良いところだと思います。
学生のみなさんには、夢中になれる技術や研究を探してほしいと思います。それがもし他の誰かが求めているものであれば、その人と話をして、どんどん良いものをつくっていくという活動を続けてみてください。その経験は将来、必ず自分の武器になると思います。
ものをつくる経験は非常に大きなパワーになります。もしそういう経験と思いを持ってきていただけるならば、NECには活躍できる環境が必ずあるはずです。

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コロナ禍で外に飲みに行くことがなくなったせいか、いろんなビールを買うようになりました。家で飲むときは毎回できるだけ違うビールを買っていて、微アルコールのビールの美味しさを発見しました。友人とのリモート飲みの際にも、酔いすぎないように微アルコールのビールを間に挟んでいます。コロナ禍が終息したら、いろんな種類のビールが飲めるお店を探したいですね。
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