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学生のみなさんへ2021インタビュー:宮本 貴也
2021年3月26日
世界トップレベルの顔認証研究

バイオメトリクス研究所
宮本 貴也(みやもと たかや)
理学で博士号を取得後、2019年4月にNECへ入社。学生時代は素粒子理論物理学を専攻していたが、入社後は顔認証技術の研究に携わっている。第23回 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2020)ではMIRUインタラクティブ発表賞を受賞した。
顔認証の価値と利用シーンを拡大する
私は現在、NECのバイオメトリクス研究所で顔認証技術の研究をしています。NECは生体認証で世界トップレベルの技術をもつ企業です。特に顔認証では、米国国立標準技術研究所(NIST)主催のベンチマークテストで世界No.1※の評価を5回獲得しています。
しかし、近年ではディープラーニングの技術革新の波が世界中に広がり、顔認証システムの開発競争が激化しています。当然のことながら、NECも現在の座に胡坐をかくわけにはいきません。日々新しい論文に目を通したり、新しい技術の研究開発に努めたりしながら、チーム一丸となって研究に取り組みつづけています。
私が主に担当しているのは、顔認証の利用価値や付加価値を拡大するための基礎研究です。顔認証の基礎精度や速度を向上させる技術研究はもちろん重要ですが、一般的に、精度と速度はトレードオフの関係にありますから、運用シーンにあわせて精度と速度を最適化させていくことが重要になるのです。たとえば最近ではスマートフォンにも顔認証システムが搭載されていますが、こうした小さなエッジデバイス上ではサーバ上のように高速な計算ができず、認証速度が落ちてしまいます。高精度に認証できるかわりに、数秒間かかってしまうようであればストレスを感じてしまいますよね。いまはわかりやすくスマートフォンを例に挙げて話しましたが、小さいエッジデバイス内で完結できるシステムの構築は、企業エントランスやネットワークが通じない屋外ゲートでの活用など、他にも幅広い活用用途があるのです。
また、最近では感染症対策用のサーモカメラや夜間防犯用の赤外線カメラが使われる場所も増えてきています。こうした人間の目でも判定が難しいような画像でも高精度かつ高速に動く顔認証システムの開発をすることにも大きな価値があるでしょう。多様なシーンにも対応できる顔認証を開発することで、NECの顔認証技術の利用価値やブランド価値をさらに高めていくことをめざしています。
尖った人材が100人以上集結

NECのバイオメトリクス研究所には、現在100人を超える研究者が在籍しています。生体認証の研究を中心とする研究所で、ここまで大規模な組織は世界でもあまり多くないのではないでしょうか。
一人ひとりの研究者も、突き抜けた専門性をもつ尖った人ばかりです。アルゴリズムが詳しい方、ハードウェアの専門家、プログラミングやソフトウェアの実装に秀でた方など、各方面で世界トップレベルの知識とノウハウをもったスペシャリストが揃っています。博士号を取得している方も多く活躍しているのも特徴ですね。異分野から参加された方も多く、宇宙物理学の分野で成果を出した後に加入された方や、海外の大学で生物学の博士課程を修めてから入社した方もいます。さらに面白いことには、理系だけではなく文系の方もいるんです。
これだけ多様なバックボーンをもつ100名強のスペシャリストが、それぞれのアプローチから研究に取り組み、お互いに日々議論を重ねながら研究しているのです。トータルでものすごいパワーになりますよね。世界トップレベルを誇るNECの生体認証技術は、こうした研究環境が支えているのだと思います。
技術の応用先を見据えた研究

博士課程の終盤、私はこのままアカデミアに残るか、それとも企業研究者になるかという二つの道を前にして、非常に悩みました。結論を出すために、卒業を1年間延ばしたほどです。それくらい悩みました。
その結果ようやく私が導き出した答えは、自分はモノづくりや社会に展開するかたちで研究がしたいのだ、ということでした。自分のつくった技術で世界中の皆さんの生活が変わったり、喜んでくれたりする。それこそが最も嬉しいのだと感じたのです。自分の技術が製品やサービスとなって社会に広がっていく喜びを味わえるのは、企業研究の醍醐味だと思います。
ただ、そのためにはアカデミアの研究とはまた別の視点が必要です。技術の新規性や科学的な面白さだけでなく、技術がどう社会に役立っていくかということを見据えた研究姿勢が重要になります。一番望ましいのは最終的なアプリケーションまで見通すことですが、研究段階からそこまでのビジョンを描くことはなかなか難しいものです。
だからこそ、いま私が重要視しているのは、一般の方や専門外の方にも「それはすごいね」と思っていただけるように説明する力です。わかりやすく価値を説明することができれば、ビジネス部門の方も技術の意義を理解して、現場のニーズや役立つ展開を提示してくれます。お互いのディスカッションもスムーズで建設的なものになるものです。
すごい国際学会に論文が通るような技術を、さらに製品化や事業化にも繋げられるのが理想ですよね。最先端の研究はもちろん、事業化を見据えた研究姿勢と各部門との連携によって、これからも社会に大きく変え得る技術の研究を進めていきたいと思っています。

私の一日ご紹介


学生時代の自分へ

休日何してる?

2019年に子どもが産まれたので、いまは子育てを楽しんでいます。最近は公園まで散歩に行くことが多いですね。はじめは近くの公園を回っていたのですが、少しずつ距離を延ばして、つい先日は片道1時間ほどかけて動物園まで行ってきました。さすがに疲れてしまって、帰りは電車でしたが(笑) いつか新型コロナウィルス感染症の感染拡大が落ち着いたら、家族で遠出したいですね。
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