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未来を創る -次世代が拓く研究:三谷 昌平

2026年5月15日

米国駐在で国際的なガイドライン策定をリード

三谷 昌平

セキュアシステムプラットフォーム研究所
主任
三谷 昌平

物理学で修士課程修了後、2013年4月に防衛系事業部の設計開発職としてNECへ入社。主に通信設備や計算設備などのハードウェア開発に従事する。2018年に社内公募制度(注1)を利用して研究所へ異動。セキュリティ向けAIの研究開発に携わる。2024年からは国際政治学や法学で名高い米国のジョージタウン大学の客員研究員として2年間駐在。AI信頼性研究/ルールメイク活動に従事する。現在は日本に戻り、米国駐在時代の活動を引き続き日本側から連携推進している。

事業部の設計開発職から研究職へ

私はもともと、防衛系の事業部門で募集していた設計開発職に応募してNECへ入社しました。研究職入社ではありません。大学で量子物理学を専門にしていたこともあり、NECの研究所が求める専門性とはマッチングしないだろうと考えて、当時は研究職を選択肢から外してしまっていたのです。

その後、5年間ほど事業部門で働くなかで実際の業務を体験し、もしかしたら研究職でもやっていけるかもしれないと思い、社内で職種を応募する「社内公募」で研究所の人材募集を見かけて研究所へ異動してきました。

異動後は、セキュリティ向けAIの研究開発に従事しました。AIのベースとなる機械学習は、物理学で培った統計的な推論などの知見が活かせる分野です。また、そもそも大学時代にセキュリティを専門に研究する方は多くないと思いますので、上手くキャッチアップしやすい領域でした。実際、私の周囲にも物理学出身の研究者が多く在籍しています。加えて、事業部時代に取り組んできた防衛とセキュリティの考え方は親和性が高かったこともあり、異動後もあまり大きなギャップを感じることはありませんでした。

その後はゼロトラスト(注2)の考え方のもとで人とシステム、社会が関わって安全性を確保するためにはどのような標準に落とし込むべきかという研究を欧州の大学とともに取り組むなどしてきました。

  • 注2:
    ゼロトラスト:すべてのアクセスにはリスクがあると考え、厳格な認証やアクセス制御を行うセキュリティモデル

ガイドライン策定に向けた初期コミュニティ立ち上げに成功

こうした国際的な研究や事業部で築いたスキルが評価され、2024年からは米国のジョージタウン大学に客員研究員として駐在することになりました。目的は、AIの安全な利用を実現するための標準化・ガイドライン策定です。

AIは現在、米国をはじめとして政府機関や金融機関などの中枢でも使われています。これにより生産性は大きく向上しますが、気がつかないうちに重大事故やセキュリティ問題の種が埋め込まれてしまう危険性が高まっていることも事実です。後に判明したリスクを突かれて簡単に攻撃されることや、大規模なお金の流出が起きるなどの問題は、徹底的に防がなくてはなりません。そのためには、新技術を開発するだけで足りません。政府機関や産業界が問題意識を共有して合意を醸成することで、初めて技術が社会的に有効活用され、安全を実現することができるのです。

幸い、米国ではこうしたルールメイクの際に積極的に民間事業者から話を聞いて政策に反映するというスキームが築かれています。NECもここに貢献できることはないかと活動し、昨年は米国の主要政府系ステークホルダーであるNIST(National Institute of Standards and Technology アメリカ国立標準技術研究所)やNSF(National Science Foundation 国立科学財団)などの機関を招き、AI分野での新たな標準・ガイドラインへ向けた初期コミュニティを立ち上げることに成功しました。

ちなみに、こうした活動の基盤としても、研究の成果は極めて重要です。専門コミュニティから評価を受けた論文が、ルールメイクの場を立ち上げる重要な根拠になります。今回のガイドラインコミュニティ立ち上げでも、注目度の高い国際学会で採択された AIの安全性に関する論文が根拠になりました。

また、このようなさまざまな分野のステークホルダーから構成されるコミュニティにおいては、事業部での経験が役立ったと思っています。開発された技術が実際の環境のなかでどう動くかということや、何度も現場で修正を加える必要があることなどの実装プロセス全体を学べたことで、実用的、具体的な内容に言及できるようになりました。机上の空論ではなくて、研究者・事業者の両方の立場から発言できることが大きく役立っています。

米国で博士号取得を目指す

いまは日本に戻ってきていますが、今後は研究者が国際的な標準化の場に出ていきやすくなるような仕組みをつくっていけたらと考えています。標準化というと、どうしても地味な活動に見られがちですが、生体認証をはじめとしたNECが得意とする技術では信頼性や安全性が肝になりますし、そのような高い安全性を担保する必要がある領域でこそ標準は極めて重要になります。社会的な価値やNECとしてのベネフィットを社内外に示すことによって、研究者のモチベーションを生み出していけるような仕組みづくりを目指したいと思っています。

また、個人的には今後、米国大学での博士号取得を検討中です。今回の米国での経験を経て、国際的な場で信頼を得るためにはPhDを持っていた方がいいと強く実感したからです。NECには博士号取得を奨励する制度もあるので、それらを活用しながら可能性を探っていきたいと思っています。

私の一日ご紹介

学生時代の自分へ

休みの日、何してる?

最近まで米国にいたのですが、米国では5歳の子どもを連れて地域のイベントによく顔を出していました。ハロウィーンパーティやダンス会、図書館のお絵描き会や子どものお祭りなど、いつも出かけ先には事欠きませんでした。子ども同士が遊び始めると、親同士も自然と会話することができるので、さまざまな人と話をして地域に馴染む良いきっかけになりました。

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