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学生のみなさんへ2021インタビュー:美島 咲子
2021年3月26日
「音」を検知して安心・安全な社会へ

データサイエンス研究所
美島 咲子(みしま さきこ)
工学で修士号を取得後、2018年4月にNECへ入社。学生時代から音響信号処理を専攻し、NECでもその研究を発展させて研究と実証実験に取り組んでいる。2020年度に開催された音響イベント検知の国際学会「DCASE2020 Workshop」では運営メンバーの1人として携わった。
自動化や省人化を支える音響イベント検知技術
私はいま、データサイエンス研究所で音響イベント検知技術の研究をしています。そのなかでも私たちのグループが取り組んでいるのは、移動体の音や振動などの時系列信号から周囲の状況を理解する移動体状況理解です。車や電車などの移動体には雑音が混入しやすいですから、正確に目的音を検出するためには信号処理や機械学習を駆使して、より高精度な技術の開発と改良を積み重ねていくことが重要です。
直近では、ごく短時間にしか観測できない突発音を高精度に検出・識別するアルゴリズムの開発に携わりました。機械や装置の稼働中に発生するわずかな音を検出して、その発生要因を識別するものです。また、加速度センサで取得した振動情報から部品の異常を検知する技術開発にも取り組んでいます。音響イベント検知に関連する技術の適用範囲を他種センサにも拡大しようと奮闘しているところです。
移動体状況理解は、故障や異常の早期発見につながる技術です。数年前に新幹線の台車で亀裂が見つかるという重大インシデントがありましたが、異音からこうした事態を早期に予測検知することができれば、多くの利用者の安心・安全につながります。また、メンテナンス面でも大きなメリットがあります。従来の保守点検作業は、専門家の方々の豊富な知識と経験を頼りにしていました。しかし近年では高齢化に伴う人材不足が懸念されています。こうした状況をカバーするためにも、自動化による異常検知は重要になるのです。また、将来的には自動運転バスなどにおいても、車内の様子や車体異常を検知するために必要不可欠な技術になるはずです。私たちのチームでは、そうした未来を見据えて、日々研究開発と実証実験に取り組んでいます。
企業にいながらアカデミアにも参加できる

NECに最初に興味を持ったのは、情報処理学会に参加したときでした。さまざまな大学や企業が講演を行うなか、NECの講演者は非常にわかりやすく的確に技術の価値を伝えるプレゼンテーションをしていたんです。トップレベルの研究になるとどうしても技術の価値がわかりにくくなってしまうものですが、NECは自分たちの技術がもつ価値や効果を広く伝える工夫をしていると感じました。こういうことができる企業であれば、最先端の研究成果を広く社会に伝えて、より利用価値のある事業やサービスに展開していけるはず。そう考えて、NECに関心を持ちました。
また、NECは音響分野において長い歴史をもつ企業です。電話交換機を製造していた創業時から雑音処理のアルゴリズムを開発していましたし、音声認識から派生して声認証や音響イベント検知など、とどまることなく新しい独自技術を開拓してきました。そのぶん、他の研究所にはない貴重で豊富なノウハウがあります。
アカデミアでの存在感も大きく、開発だけにとどまらない本格的な研究ができるのも魅力かもしれません。実際、学会にはたとえ聴講であっても自由に参加することができますし、論文発表にも積極的です。社会に出て応用研究をしてみたいけれども、アカデミアでの研究もつづけたいという方には、ぴったりなのではないかと思います。
お客様に恵まれた環境

私は学生時代から音響信号処理を研究していたので、研究分野としては、当時と大きくは変わっていないかもしれません。ただ、決定的に変わったのは、導入先のお客様と直接対話する機会ができたことです。これによって、自分の技術が社会のなかでどのように役立つかを明確にイメージすることができるようになりました。大きなやりがいにもつながっています。
データサイエンスでは、活きたデータをどれだけ取得できるかが命ですから、お客様の存在は重要です。そのぶん、NECはさまざまな領域で長年ビジネスをしてきた大企業です。既にたくさんのお客様との間に信頼関係が構築されています。「一緒にデータを取ろう」とお客様から言ってくださることさえあるのは、恵まれた環境であると感じます。
また、私たちのような研究では「まずやってみる」という姿勢が大切だと考えています。まずはプロトタイプを提案し、チームメンバーやお客様とのディスカッションを通じてさらにブラッシュアップしていくことが重要です。学生時代の私は、どちらかというと一人でじっくり考えるタイプだったのですが、NECに入ってからは、何か思いついたらまずは形にしてみて、周りの意見を聞きながら改善していくというスタイルを意識するようになりました。周りには気軽に意見を聞かせてくれる同僚や先輩がたくさんいるので、いつからかこの環境を活かさなくてはもったいないと思うようになったというのも理由ですね。実際、一人で考えると物事の一面に囚われてしまいがちですが、異なる視点から意見をいただくことで創造的なアイデアが産まれますし、開発スピードも上がります。これも、たくさんの研究者がいるNECの魅力かもしれません。
音響イベント検知は、社会の安心・安全を実現するために役立つ技術です。これからも自分の研究によって、すこしでも安心・安全な社会づくりに貢献できたらと思っています。

私の一日ご紹介


学生時代の自分へ

休日何してる?

趣味は5歳から始めたバイオリンです。社内にもNEC弦楽アンサンブルというサークルがあるので、そこで活動しています。最近は新型コロナウィルス感染症のせいで、仲間と直接音を合わせることはできませんが、部屋で練習をしたり、リモートでアンサンブルしたりしています。また、学生時代に同期がゴルフボールの打撃音の解析をしていたことがきっかけで、たまにゴルフも楽しんでいます。
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