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新たな挑戦 ーキャリアで拓く研究:松尾 司
2026年2月9日
事業化を成功させる研究環境と風土

ビジュアルインテリジェンス研究所
主任研究員
松尾 司
国内メーカで、ホログラフィ(光の干渉・回折を利用して物体の三次元情報を記録・再生する)の原理に基づいた顕微鏡の研究開発に取り組んだ後、会社を移り組織切片の顕微鏡画像の解析技術開発に従事。2023年2月にNECへ入社後は3Dや画像処理技術のノウハウを活かし、LiDAR(Light Detection And Ranging)等によって3Dデータとデジタルカメラ等の2D画像の位置を自動照合する技術やSARに関する技術開発などに従事。主任研究員として、研究技術の事業化を目指している。

事業化の成功につながる多様な顧客と研究者の意識
私は学生のときにレーザを使った光計測の研究に取り組んだ後、国内のメーカに入社してホログラフィ技術を使った顕微鏡の研究開発に取り組んでいました。しかし、事業化を目指して9-10年間研究を続けていたものの、最終的に事業化が頓挫してしまったのです。開発技術が適用できる有望な市場探索や社内リソース確保が思うようにいかず、「技術としては面白いけれども事業としては成り立たない」という経営判断が下り、立ち消えになってしまいました。
そこで、事業化してからのフェーズを経験してみたいと強く思うようになり、転職を決意しました。転職先は、その頃新事業を立ち上げたばかりという企業で、私はその中で顕微鏡画像の解析技術を開発する業務に従事することになりました。新規事業ならではの日々のダイナミックな環境変化を刺激的に感じていましたが、残念なことに、事業全体の方針として画像解析技術開発にかけるリソースが縮小されることになってしまいました。私の業務も画像処理ではない他領域への転換が避けられなくなってしまったため、今後のキャリアを考えたうえで再度の転職という道を選び、縁あってNECに入社しました。
NECへ入社後に実感したことは、NECは規模が大きく、多様なお客様と多様なビジネスのお付き合いがあるということです。なので、仮に新しく生み出す技術が一つの領域で使えなかったとしても、違う領域や業界にご提案するという試みがスムーズにできます。これは、今までNECの1/10、1/3ほどの規模の企業で働いてきた私からすると、非常に恵まれた環境であると感じます。
また、それだけでなく、研究者一人ひとりが研究の初期段階から事業化のイメージを持っているという点には驚かされます。「●●のお客様に提案する」というイメージを研究初期段階から意識しているというのは、強く感じるところです。研究という不確実性の高い活動において、どう効率的にアウトプットを目指していくかということを皆がしっかりと考えています。その結果として、例えばAという事業とBという事業両方にアプローチできるような設計で開発を進めるなど、効率的な社会価値創造への意識が生まれ、事業化の加速や成功に活かされているのだと思います。

成果への意識が自由な研究を加速
現在取り組んでいる研究は、LiDARというレーザ光を利用した測距技術によって構築した3Dデータとデジタルカメラの写真等の2D画像の撮影範囲を自動照合する技術です。インフラ点検向けに実証実験を進めているほか、最近は他用途への展開に向けた活動も進めています。
また、面白いことに、最近取り組むことになった合成開口レーダ(SAR)は、その開発初期段階ではマイクロ波ホログラフィとも呼ばれており、1社目で研究開発していた顕微鏡のホログラフィの原理と同じです。顕微鏡と衛星リモートセンシングという、桁違いのスケールの違いがあるにも関わらず過去の経験が活かせているのは、自分でも不思議な気分です。また、現在は主任研究員として管理職を務めています。実は1-2社目では管理職を経験したことがなかったのですが、入社時から役割を任せていただきました。管理職としては、研究成果をいかに事業に結びつけるかという成果が強く求められます。厳しいように聞こえるかもしれませんが、これは成果さえ出せば自由ということでもあります。いたずらに長時間勤務するのではなく、きちんと成果を出すという指針で皆が働いていることは、健全な職場づくりのためにも不可欠です。実際、働き方や作業場所は自由で、リモートワークを活用する人もたくさんいます。
自分の技術で、事業化まで実現したい
これから目指していきたいことは、自分が手がけてきた技術で事業化を実現し、売り上げが立つところまで経験したいというのが第一ですね。やはり、9-10年かけたものの事業化できなかったという1社目での経験があるので、そこは何としてでも実現したいです。さらに、それを実現できた暁には、今度は自分自身で研究テーマを一から立ち上げて、また同じように製品化・事業化を実現していきたいと思っています。
現在、私の研究は3Dや画像処理がコアになっていますが、何か一つの分野で「この技術は松尾に聞けば大丈夫だ」と思われるような存在になっていきたいですね。そのためにも、研究する技術から大きなビジネスに結び付けていく必要があると思いますので、やはりまずは事業化を意識して取り組んでいきたいと考えています。
また、少し広く社会に目を向けると、自分の子どものためにも持続可能な世界であってほしいということを考えています。実はNECに入社後、少しだけ脱炭素資源循環研究グループというところに在籍した時期があったのですが、そこでドバイで行われたCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)に参加したことがあります。自分が持っている技術と地球温暖化の緩和や適応に結びつける道筋はまだ検討できていませんが、そうした社会価値の実現にもゆくゆくは貢献できればと考えています。

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