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新たな挑戦 ーキャリアで拓く研究:小寺 雅司
2026年2月19日
情報学と生命科学の境界領域での活躍を目指す

セキュアシステムプラットフォーム研究所
リサーチャー
小寺 雅司
大手SIerでの勤務後、2020年10月にNECへ入社。機械学習の高速化技術の研究開発に従事する。2025年度からはチームの研究テーマ変更によって情報生命科学の研究開発に従事。ライフ・バイオサイエンス分野の統括部との共同研究等、情報学と生命科学の境界領域での研究開発に取り組んでいる。

実際に手を動かせる研究職へ
私は2020年の3月に修士課程を修了後、4月に大手SIerへ開発職として入社しました。研究職に就きたい気持ちもありましたが、当時は企業の研究所に行くのは博士号を持っている人たちというイメージがあったので少し及び腰になっていたところもあり、開発職というポジションを選択しました。開発職であれば、自分でも研究に近しいことがやれるのではないかという気持ちがあったのです。
配属先の仕事はシステムエンジニアのような業務が中心でした。しかも、実際にプログラムやコードを書くのは委託先企業の方々で、新卒で与えられた業務としてはプログラムのテストがメインです。もちろん、これも重要な仕事ではあるのですが、もっとアルゴリズムを考えたりできるものだと思っていた私はミスマッチを感じて早々に転職を決意し、複数社との面接や内定の結果、その年の10月にはNECへ入社しました。
NECを選んだ理由は、その後の上司となる面接官の話にワクワクしたからです。数理的な素養を活かせたりだとか、プログラムを書いたりだとか、論文を書いたりだとか、そういった業務内容を魅力的に語ってくださったことに心が動かされました。
とはいえ、入社当初は正直大変でした。配属されたプロジェクトで使うC++は全く触ったことがなかったですし、アルゴリズムの基本的な知識も不足しており、たとえばソートを「呼び出して使う」ことはできても、その内部で何が行われているのかまでは理解できていないという状況でした。GitHubやLinuxの操作の知識も十分とは言えない状態でした。そうしたなかで、メンターであった上司には根気強く指導してもらったと思います。
一方で、自分に足りない部分が明確だったこともあり、学びながら取り組むこと自体には前向きに挑戦できました。入社から1年ほど経つ頃には徐々に理解が深まり、論文や特許の執筆にも関われるようになりました。
また、入社して驚いたのはオフィスでした。デスクが広くて、モニタも1人2台用意されていましたし、私たちのチームは機械学習の高速化に取り組むチームで計算資源が重要だったこともあったかと思うのですが、大きいサーバを一つ自分用に専有させてもらえたり、高価なクラウドや最先端のGPUも借りられたりと、研究に集中するうえで必要なインフラが十分に用意されていると感じました。

自らの提案からチームの研究テーマが決定
私が入社後に取り組んだのは、機械学習の高速化に関する研究です。アルゴリズムの改良だけでなく、ハードウェアの特性を踏まえて計算機の性能を最大限に引き出すことにも注力し、計算の並列化や高速化、そのための実装まで幅広く手がけてきました。
こうした研究を数年続けるなかで、携わっていたテーマの事業化が決まり、チームとして次の研究テーマを考えるフェーズとなりました。NECでは、研究者自身が新たな研究テーマを提案できる文化があります。私はその機会を活かし、ライフ・バイオサイエンス領域でのAI分野に挑戦したいと上司に相談しました。近年注目されている「AI for Science」という流れのなかでも、特に社会的インパクトの大きい創薬分野に注力すべきだと考えたからです。
ちょうど2024年には、情報学と生命科学の融合領域で成果を上げたAlphaFold2がノーベル化学賞を受賞するなど、分野全体への関心が高まっているタイミングでもありました。こうした背景も追い風となり、私の提案した研究テーマは正式に採用されることになりました。
医学系の学会に足を運んで情報収集を行い、将来的な事業規模も見据えたうえでの提案ではありましたが、役職のない一メンバの声に対して、ここまで本格的に動いてもらえたことには正直驚きました。その後、人事としても大胆に動いてくださって、欧州研究所などの他拠点から新しいメンバを呼んでいただけました。
また、ノルウェーにあるNEC OncoImmunity(NECオンコイミュニティ)というNECの子会社であるバイオインフォマティクスを専門とする企業と適宜連携しながら研究を進めることになりました。
いわゆる「ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー」というと、腰が重くて若手の声が通らないというようなイメージがありますが、少なくとも私のチームに関しては柔軟かつスピ―ディに組織再編が行われたと思います。そのダイナミズムには目を見張るものがありました。
バイオ系分野のソフトウェア高速化は今年度から初期検討を始めた段階なので、現在はこれまで培ってきた高速化技術で関連事業部の役に立つことで精一杯という状況ですが、来年度以降はもう一歩踏み込んだ研究を進めていきたいと思っています。
生命科学の知識を積極的に習得したい
私は研究において、新しい技術を生み出さなければならないという研究者像に必ずしも強くこだわっているわけではありません。まず解きたい課題があり、その課題に対して既存の理論や技術の組み合わせで対応できるのであれば、無理に研究として新しいことをする必要はないと考えています。重要なのは手段の新しさではなく、課題に対して実効性のある解決策を提示できるかどうかです。
一方で、現時点の技術や既存の枠組みではどうしても解決できない課題に直面することもあります。そのような場合には、はじめて研究として新しい手法や考え方を掘り下げていく必要が生じるでしょう。そうしたスタンスで、私は研究というものを捉えています。
いま私が目指しているのは、技術を通じて人の健康や幸福に貢献することです。その観点で見ると、現状の自分には、創薬分野や生命科学に関する知識がまだ圧倒的に足りていないと感じています。計算機サイドからのアプローチで課題に向き合うことはできますが、それだけではどうしても本質的な問題解決に踏み込めません。そのもどかしさを、最近強く意識するようになりました。だからこそ、こうした領域の知識は今後積極的に身につけていきたいと考えています。
その選択肢の一つとして考えているのが、大学院での学習です。私は現在、博士号を取得していないため、将来的には関連分野の博士課程に進学することも視野に入れています。NECには「国内留学制度」という仕組みがあり、選抜に合格すれば、2年間にわたる学生としての生活を会社がサポートしてくれます。今後の研究の進展次第では、こうした制度の活用も検討していくつもりです。
情報学と生命科学の境界領域で価値を生み出せる研究者になることを目指して、これからも研究開発に取り組んでいきたいと思っています。

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