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未来を創る -次世代が拓く研究:河野 航
2026年4月21日
北米研究所発の光ファイバセンシング技術を現地で研究

コネクテッドインフラストラクチャ研究所 (※)
主任
河野 航
物理学で博士課程を修了後、2020年4月にNECへ入社。光ファイバセンシングの応用研究に従事する。2022年10月にはNEC Laboratories America, Inc.(北米研究所)へ赴任。光ファイバセンシングのより基礎的な研究に取り組み、難関国際学会でも論文が複数採択される。2025年10月にNECアドバンスネットワーク研究所(現、コネクテッドインフラストラクチャ研究所)へ帰任。北米で得た経験や知見を活かし、世界中のあらゆる環境で広域にセンシングできる技術として、引き続き光ファイバセンシング技術を開発している。
- ※本記事は2026年3月に実施したインタビューです。
取材時は「アドバンストネットワーク研究所」でしたが、組織改編により現在は「コネクテッドインフラストラクチャ研究所」となっています。

安定した環境で、刺激的な研究に挑む
博士課程を修了する頃、私はちょうど結婚を控えていた時期で、経済的な安定性を考え始めていたときでした。しかし、その一方ではまだ企業に入社する自分のイメージを持つことができませんでしたし、研究開発へのチャレンジを諦めたくないという強い気持ちを持ち合わせていたことも覚えています。
そんなとき、顔を出してみたNECの研究所紹介イベントの一画で、光ファイバセンシング技術を紹介するブースがあるのを見かけたのです。当時はまだ小さな展示だったのですが、そこで光ファイバを使って百km単位でさまざまな事象をセンシングできるという話を聞いて、強い好奇心をかき立てられました。地球上に敷設された通信網を使って大規模なセンシングができ、地球の神経網のようにもなり得るのだというスケールの大きな話には驚きがありましたし、これまでは多体量子論などの研究をアカデミックな興味から進めてきましたが、この技術を社会に応用するということにも新鮮な興味がわいてきたのです。
加えて、選考過程のなかで本技術はNECの北米研究所でコア技術を開発していると知りました。本格的に研究を進めるためには、いつか北米研究所で働くことになるという話も聞き、海外でのキャリアにもチャレンジングな魅力を感じ、内定をいただいてNECへの入社を決めました。

北米研究所での研究で難関国際学会にも採択
入社後は2年半ほど、日本で光ファイバセンシングの応用・実装に取り組んでいました。検証先で初めて微細な地震を検知したときは、いま地球をセンシングしたのだと感動したことを覚えています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が落ち着いた2022年には、いよいよ北米研究所へ異動することになりました。光ファイバセンシングのコア技術は北米研究所が開発しているので、より基礎的なアプローチから取り組むことになります。これまで北米研究所から提供されて活用してきた光ファイバセンシングのデバイスについて、中はどのような仕組みになっていて、どのように計算し、どう挙動しているのかを研究者と密に話ができるようになったのはとても嬉しかったですね。
研究では光ファイバセンシングによって得られる音響信号をうまく活用することをテーマとしています。ただ、音を感知するだけでは意味がないので、どう認識し、いかに価値につなげるかということを常に意識してきました。柔軟な形状をとり、電子デバイスの敷設が難しい環境下でもセンシングできるなどの優れた特長を持った光ファイバセンシングには、さまざまな可能性が開かれています。言語モデルと組み合わせてうまく認識する技術や、光を放射して反射した光から振動を検知するアクティブなセンシング技術の研究についてまとめた論文は、ICASSP (IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing) 2025、CLEO (Conference on Lasers and Electro-Optics) 2025といった難関国際学会にも採択されました。

好奇心のままに面白い研究を目指す
NECの北米研究所には、優秀なAI研究者が多数在籍しています。CVPR(Computer Vision and Pattern Recognition Conference) 、CVF (The Computer Vision Foundation) ICLR (International Conference on Learning Representations) などのトップカンファレンスに毎年当たり前のように名を連ねる研究者がたくさん活躍しているのです。私が赴任した光ファイバセンシングのチームでも、皆さん非常にレベルの高い質問をしてくださって、刺激的な議論ができました。
また、北米研究所にはベンチャー企業のような身軽さと行動力があります。例えば、会議でデモをしようかという話をした翌日には、もうネットショッピングなどで買い集めた物資が揃っていて、早速やってみようという話になります。このあたりはやはり、新しいものが創発される期待感に溢れた面白い環境だったなと思います。私自身としても馬が合いました。
というのも、私自身も広くリサーチしてからいろいろ要素を固めて進むというよりは、まずは茨の道であっても片足を突っ込んでみて、痛かったら痛い思いをしつつ、また別の道を探索していくのを楽しんでいくタイプだからです。自分の好奇心がおもむくままに、自分が面白いなと思う感性を信じて突き進んでいけるような研究者になりたいと思っています。なので、今後の目標も特にこれというものは決めていません(笑)
研究者なので知能労働ももちろん必要ですが、そればかりに頼らず、まずは自分の身体や自分の周囲にあるリソースを使ってポジティブに何ができるのか、どういうことができるのかと考えて進めていき、自分が感じた面白さを最適化するようなかたちで研究を進めていけたらと思っています。
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家族で近くの公園や子どもが遊べる施設にいき、アメリカで生まれた1歳の子どもとアメリカで飼い始めた犬を満足させるまで遊ばせるのがルーティンです。子どもが昼寝をしている合間を縫って、ダイエットのために走りにいったり、友人と少しランチに行ったりもします。学生時代の留学で知り合った博士持ちの友人たちと、サイエンスカフェの企画を進めたりもしています。

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