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学生のみなさんへ2015インタビュー:今岡 仁
2015年5月
今岡 仁

バイオメトリクス研究所 リサーチフェロー&ダイレクタ
今岡 仁(いまおか ひとし)
世界No.1の精度とスピードを誇るNECの顔認証技術開発の立役者。現在は開発チームのリーダーとして、グローバルなチームを束ねる。
圧倒的な精度とスピードで世界一を実証したNEC独自の顔認証技術を開発
NECの顔認証技術は、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)の顔認証技術ベンチマークテストで世界No.1の実力を証明した技術です。約99.7%もの照合率を誇り、誤認率は競合他社の約10分の1という圧倒的な精度です。それに加え、処理速度も1画像あたり0.3秒という競合他社を大きく引き離すスピードを実証したことで、世界的にも大きなインパクトを残しています。
ここに生かされているのはNEC独自の学習アルゴリズムや機械学習の技術、そして何よりも大きいのは、やはり地道な一歩一歩の積み重ねですね。顔認証には顔を検出するというステップや顔の特徴点を抽出するステップなど、さまざまな段階があるのですが、各ステップで課題を一つひとつ洗い出すことによって、性能を向上させています。たとえば、特徴点抽出のステップでは、目のそばにしわがあると、そこを目と間違えてしまうというようなことが起こりかねないわけですが、こういった誤認を引き起こす可能性をすべて洗い出して解決していくということで高い精度を実現しています。革新的なアルゴリズムの開発はもちろんですが、こういった地道な努力との両輪があってこそ、私たちの顔認証技術の精度とスピードは実現できています。
NECは、NISTのベンチマークテストに初めて参加してNo.1を獲得した2010年から、3回連続で第二位を圧倒的に上回るトップの精度や速度を実証してきました。次ももちろん防衛しなければなりません。王座を守りつづけるっていうのも、本当になかなか大変なんですが(笑)、これからも精度とスピードで世界をリードしつづけたいですね。
安心・安全確保はもちろんサービス面でも広がる顔認証の可能性
NECの顔認証技術は、私たちの生活をより安心で便利なものにするために、世界中のあらゆる場所で役立てられています。代表的な例としては、出入国管理システムですね。20カ国以上でご活用いただいています。ベンチマークテストで世界No.1を実証したことにより、世界各国から多くの引き合いをいただくことができました。この他にも、アメリカやアルゼンチンなどさまざまな国の警察・司法機関でもご活用いただいています。また、すこしおもしろいケースとしては、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン®様での導入事例があります。年間パスをご購入されたお客さまが初回入場の際に顔を登録しておくことで、次回以降は顔認証で入場できるというシステムです。まさに「顔パス」で入場できるので、ご来場される皆さまにも喜んでいただけていますし、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン様®でも、パスの発行やお客さま本人確認にかかる手間やコストを大幅に削減することができました。
このように、顔認証は安心・安全の確保だけにとどまらない、新たな可能性にあふれたテクノロジーです。いま私たちのチームでは「誤照合ゼロ」に向けて、革新的なアルゴリズムの開発や地道な改善作業をつづけています。誤照合ゼロが実現すれば、いよいよ顔認証におけるストレスがなくなります。公共機関や大学入試会場での本人確認など、当たり前のように顔認証がそこにある、便利で安心できる社会を実現できると信じています。

世界に大きなインパクトを与えるNECでの研究開発
開発において重要なことは、研究室にとどまっているだけではなく、お客さまのもとでヒアリングをして大切な点を抽出するということだと思っています。実際にお客さまと会ってお話を伺うと、実は細かな点だと思っていたところが重要であったりだとか、ちょっと違う視点や気づきを得られたりするものです。また、異なる視点という意味では、NECにはデバイスの研究者からネットワークの研究者、ソフトウェアの研究者に至るまでICTに関わるさまざまな研究者がいますが、これはNECならではの非常に恵まれた環境だといえると思っています。たとえば、暗号技術やデータベースなど、ちょっとでもわからないことがあったら、同じフロアの専門家のもとへ気軽に話を聞きに行くことができます。これは、NECの研究開発を加速させる一つの理由だといえるでしょうね。
2010年は、NEC社内で社長賞を受賞することができましたが、やはり研究者として最もうれしいのは、自分の開発した技術が世界各国で広く使われているという事実です。これが社会ソリューションをグローバルに展開するNECで研究する何よりの醍醐味だと思っています。
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