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学生のみなさんへ2023インタビュー:クラーク ジョン 健志

2023年1月18日

新しいセンシング技術を開発し、AIの進化に貢献する

クラーク ジョン 健志(けんじ)

バイオメトリクス研究所
リサーチャー
クラーク ジョン 健志(けんじ)

カナダで生まれ育ち、博士課程のときに祖母の故郷である日本へ移住。2019年9月に博士課程を修了後はポストドクターとして半年勤務し、翌年4月にNECへ入社。学生時代に研究していたナノフォトニクスや光学材料の知見を活かしながら、光干渉断層撮像技術の研究をつづけている。

指紋の奥にある指紋を認証する

私はいまバイオメトリクス研究所で、光干渉断層撮像(OCT)という技術の研究をしています。光の干渉特徴を活用して、表面下の3D画像を撮影する技術です。もともとは眼科で網膜の構造を調べるために活用されてきた技術ですが、私たちのチームではこの技術を指紋認証に活用しようと研究を進めています。光干渉断層撮像による指紋認証が実現すれば、皮膚表面の指紋だけではなく、その奥にある「真皮指紋」という部分まで読み取ることができるようになります。真皮指紋であれば、たとえ皮膚の表面に傷やしわなどができても高精度な指紋認証が可能になりますし、偽物やなりすましの検知も可能になると考えています。

もともとNECは指紋認証のアルゴリズムに強く、米国国立標準技術研究所(NIST)による指紋認証のベンチマークテストでは世界No.1の評価を複数回獲得しています。私たちが研究開発しているセンシングデバイスが完成すれば、その精度をさらに高めることができますし、社会により広く活用することができると考えています。

研究成果は定期的に論文にまとめて発表しており、入社してから3年の間に2本の論文を書いて学会へ発表することができました。そして、もう1本を今査読中です。周りの研究者を見ても、NECでは1年に1~2回学会へ論文を出す方が多いようです。企業内の研究所ではありますが、学会への参加も積極的です。

「日本企業」の概念をくつがえす自由で先進的な環境

博士課程を修了後、もっと人の生活に影響を与えられるようなものを発明したいと思いがあって、就職活動を始めました。いくつかの企業を回りましたが、NECはリクルーターの方がとても親切であったことが印象に残っています。「良い人材を探す」という視点から私と話すのではなく、「私はどういう研究に興味があるか」「NECの研究所とうまくマッチングするところがあるか」という視点から私と話してくれました。その姿勢がとても心地よくて、NECへ入社を決めた大きな理由の一つになりました。

実際にNECへ入社してみると、会社が非常に柔軟な働き方を推奨していることに驚きました。私が日本企業に就職すると知ると、海外の友人からは「上司との関係が厳しいよ」などと脅されたりしましたが、まったくそんなことはなく先進的な働き方ができています。スーパーフレックス制で出社や終業も自由ですし、多くの方がリモートワークをしています。もちろん上司との関係もフラットで、自由に意見交換することができます。

そして何より、研究所にはさまざまな経験や経歴をもった研究者たちがたくさん在籍しています。他の分野のアプローチをならってみたり、逆にその分野の課題を自分の技術で問題解決を試みたり。そんな異分野同士の交流ができるので、個人の知識を広げることができますし、イノベーションを加速させることができます。

センシング技術でAIを進化させる

私は研究をするとき、自分の知識を広げることを常に意識しています。課題を見つけたら、ただ解決策を探して適用するだけではなく、その問題の本質をきちんと理解する。さらに、解決策を見つけることができたら、その解決策も本質を理解しようと努力する。そうすると、新しい課題を発見して、次の研究テーマを考えることができるようになります。ただ課題に対して解決策を適用するだけに終始してしまうと、自分が次にどうすればいいのかわからなくなってしまうものです。解決策を深く理解した上で適用すれば、今回の課題は解決できたけれども、こうすればもっと精度が良くなるだとか、他の領域でも活用できそうだというような新しいアイデアが生まれてきます。

例えば、私の研究では圧縮センシングという信号処理の手法を使ってOCTの画像の精度向上に取り組んでいますが、この手法は自分の専門分野からかなり離れていたので、当初は理解するのにかなり苦労しました。ただ手法を活用して精度を上げることもできたのですが、あえて圧縮センシングの論文を多数読むなどして、かなり時間をかけて勉強しました。その結果、圧縮センシングをもっとうまく扱う方法を考えつき、次の研究のステップに繋げることができました。

現在の目標は真皮指紋読み取り技術を開発してデバイスとして実用化させることですが、突き詰めると、私の本質的な目標はAI技術を発展させるために新しいデータを提供するということだと考えています。例えば、画像認識ではカメラの画像を使って分析し、さまざまな価値を生み出していきますが、一般的なカメラの画像では解析できる内容に限界があります。カメラ画像以上の情報を得るためには、新しいセンサー技術を開発していかなければなりません。私はセンシング技術の研究者として、新しい情報を提示できる革新的なセンサーを開発して、さらに強いAIの開発に貢献できるようにしたいと考えています。

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ガーデニングにはまっています。大学時代からベランダで小規模にやっていたのですが、最近は広いところに引っ越すことができたので、日本ではすこし高価なラディッシュなどの野菜を育てています。とはいえ、まだまだ上手くいかず、残念ながら毎年ほとんどが青虫に食べられてしまいます。結局野菜は食べられませんでしたが、キレイな蝶々を見ることができたので2歳の子どもは喜んでいました。

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