Japan
サイト内の現在位置
Transgene社とNEC、個別化ネオアンチゲンがんワクチンTG4050が、頭頸部がんに対して2年以上の無再発状態と持続的なT細胞の応答を示したことを確認
~第I相臨床試験のデータを米国臨床腫瘍学会 ASCO 2025で発表~2025年6月2日
Transgene SA
日本電気株式会社
- HPV陰性の局所進行性頭頸部がんの患者さんを対象とした無作為割付(注1)第I相臨床試験において、標準的な補助療法終了後の追加治療として、個別化ネオアンチゲンがんワクチン「TG4050」を投与した治療群の患者さん全員が最低2年以上(中央値30カ月)の無再発状態を維持することを確認しました。この結果はTG4050のProof of Principle(PoP:概念実証)を支持するデータとなります。
- TG4050による単剤治療は良好な忍容性を示し、個別化がんワクチンの製造から投与という一連のプロセスの実行可能性を確認しました。
- TG4050は長期にわたり、ネオアンチゲンに特異的なCD8+ T細胞の免疫応答を誘導しました。
- これらのデータを、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)においてRapid Oral Abstract Sessionで発表しました。
がん治療向けウイルスベース免疫治療のデザインおよび開発を手掛けるバイオテクノロジー企業Transgene SA(トランスジーン、以下 Transgene社、注2)と日本電気株式会社(以下 NEC、注3)は、米国・イリノイ州シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)の2025年次総会において、HPV陰性頭頸部がんに対する個別化ネオアンチゲンがんワクチン「TG4050」の第I相臨床試験の追跡調査に関する良好なデータを発表しました。
今回発表したデータは、切除可能なHPV陰性の局所進行性頭頸部扁平上皮がんの術後補助療法において、TG4050を用いた単剤治療での個別化免疫療法が安全かつ実行可能であることを支持する内容です。また本ワクチンによって誘導される抗腫瘍免疫応答の持続性について評価したところ、ネオアンチゲンに対する免疫応答が2年間持続することを確認できました。これら安全性、実行可能性、免疫学的活性、および無再発期間(再発または死亡を認めない生存期間)の結果は本臨床試験のエンドポイント(注4)を満たす内容となります。
個別化ネオアンチゲンがんワクチン「TG4050」について
TG4050は、Transgene社の個別化免疫療法プラットフォーム「myvac®」に、NECの最先端AIを活用した「ネオアンチゲン予測システム」を組み合わせて開発したワクチンです。ネオアンチゲン予測システムは、20年以上にわたるNECのAI技術を結集して開発され、高い精度でネオアンチゲン配列の予測を行うことができます。
本がん治療用ワクチンは患者さん固有のネオアンチゲンに基づき、腫瘍細胞を認識し排除することができるT細胞反応を引き起こすことで抗腫瘍効果を発揮します。ワクチンは患者さん毎に設計・製造され、治療に用いられます。
今回発表したデータについて
今回発表した、HPV陰性頭頸部がんの患者さんを対象とした第I相臨床試験のデータは、Transgene社のウイルスベクターを基に開発したTG4050の概念を実証(Proof of Principles)するものとして以下の結果を示しました。
- 第I相臨床試験の追跡調査において、TG4050を投与した治療群の患者さん16人全員が2年以上(中央値30カ月)にわたって無再発状態を維持しました。一方、観察対照群の患者さん16人のうち3人に再発が認められました。
- TG4050の投与開始後2年以上にわたって、ネオアンチゲンに特異的なCD8+ T細胞の応答が持続していることを確認しました。
各社のコメント
TG4050の単剤療法において、2年以上にわたる持続的な臨床応答と免疫原性(注5)が確認できたこと、かつ良好な安全性プロファイルが見られたことは重要なマイルストーンです。これらの結果は、TG4050の臨床的な有用性を示すとともに、補助療法としてのHPV陰性頭頸部がん治療手段の開発を加速するという当社のコミットメントをさらに強化するものです。
Transgene社, Chief Executive Officer, Dr. Alessandro Riva
今回の2年間にわたる持続的な有効性を示すTG4050の良好なデータから、この個別化がんワクチンプログラムの臨床的可能性と将来性が明らかになりました。これらは、最先端AI技術を活用したNECの創薬アプローチの有効性を示しており、また患者さんや医療システムの双方に対して長期的な価値を創造する私たちの決意に支えられた成果です。
NEC Corporate EVP兼CTO 西原基夫
TG4050は、HPV陰性の頭頸部がんの術後補助療法における単剤治療として、無作為割付多施設第I/Ⅱ相臨床試験(NCT04183166)で評価を行っています。第I相臨床試験で有望なデータを得られたことから、Transgene社とNECはTG4050の共同開発を第Ⅱ相パートへと拡大しました。
現在進行中の第Ⅱ相パートは、より大人数の患者集団における有望なデータの取得、および免疫学的、臨床的効果を評価することを目的としています。試験に参加するすべての患者さんは2025年内に無作為割付される予定です。なお、第I/II相臨床試験全体では約80名の患者さんを対象予定としています。
本内容について、2025年6月6日午後10時(日本時間)より、英語による電話会議が予定されています。また、終了後にはTransgene社のウェブサイトにアーカイブが公開されます。
- 電話会議ウェブキャストリンク:
https://edge.media-server.com/mmc/p/x49uzc62
- 個別電話ID取得用リンク:
https://register-conf.media-server.com/register/BId8c981041ca84dad92bb2faa73fc5344
- Transgene社:
http://www.transgene.com/
以上
- 個別化ネオアンチゲンワクチンTG4050の臨床試験について
TG4050は、HPV陰性頭頸部がんの患者さんを対象とした第I/II相臨床試験(NCT04183166)で評価されています。本臨床試験では、手術を終え、補助療法を受けている間に各患者さんに合わせた個別の治験薬が設計されます。半数の患者さんには補助療法の終了後、直ちにTG4050を投与し、残り半分の患者さんには、標準治療の追加治療として、再発後にTG4050を投与します。この無作為割付臨床試験は、再発リスクの高い患者さんに対するTG4050の治療効果を評価するものです。第I相パートは、32名の評価可能な患者さんで行われています。第II相パートは、現在進行中です。
- 個別化免疫療法プラットフォームmyvacについて
myvac®は、Transgene社が固形がんをターゲットに開発したウイルスベクター(MVA-Modified Vaccine Ankara)ベースの個別化免疫療法プラットフォームです。myvac®由来の製品は、患者さん自身のがんに特有の遺伝子変異をもとに設計されており、患者さんの免疫システムを刺激して、腫瘍を認識・排除することを目的としています。Transgene社は、バイオエンジニアリング、デジタル・トランスフォーメーション、確立されたベクター化のノウハウ、独自の製造能力を組み合わせた革新的なネットワークを構築しています。Transgene社はmyvac®の開発のためにBpifranceより「Investment for the Future」基金から支援を受けています。TG4050は、myvac技術を活用し臨床試験を実施した最初のプロダクトです。
- NECのネオアンチゲン予測システムについて
ネオアンチゲン予測にはNECが開発したグラフベース関係性学習を利用し、標的ネオアンチゲンを予測するために、複数の生物学的データを学習させています。頑健なT細胞応答を引き起こす可能性を計算するため、NEC独自のHLA結合能および抗原提示能AIツールを含む機械学習アルゴリズムを用いて、標的ネオアンチゲンは慎重に求められます。これにNEC OncoImmunityが加わり、今後もNECは世界トップクラスのネオアンチゲン予測パイプラインの強化に務め、世界中の患者さんのために個別化がん免疫療法の治療効果を最大限に引き出すことを目指します。詳細は以下をご覧ください。
NECのAI創薬事業:https://jpn.nec.com/solution/ai-drug/
NEC Bio B.V.:https://www.nec-bio.com/en_DD/research-and-innovation/our-approach/
- (注1)無作為割付:被験者を目的治療群(治験薬を投与して効果を調べる群)と対照群(対照薬などを投与する群)のどちらに割り振るかをランダムに決定する手法のことです。無作為化により、被験者を恣意的に特定の治療群に割り振るといったバイアスを無くし、公平に評価できます。
- (注2)本社:フランス・ストラスブール、CEO:Alessandro Riva
Transgene社について:https://www.transgene.fr/
- (注3)本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田隆之
- (注4)エンドポイント:臨床試験における治験薬の有効性や安全性を客観的に確認するための評価項目です。
- (注5)免疫原性:抗原などが体内で免疫応答を引き起こす能力のことです。
NECの創薬事業について
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC AI創薬統括部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com
NECは、安全・安心・公平・効率という
社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる
持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/profile/purpose/