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Transgene社、NEC、BostonGene社、治験中の卵巣がんおよび頭頸部がん患者さんの遺伝子解析で協業
2020年10月6日
Transgene SA
日本電気株式会社
BostonGene Corporation
がん治療向けウイルスベース免疫治療の設計開発を手掛けるバイオテクノロジー企業Transgene SA(トランスジーン、注1、以下Transgene社)、NEC、生物医学ソフトウェアによりがん患者さんに最適な精密医療を提案するBostonGene Corporation(ボストンジーン、注2、以下BostonGene社)の3社は、卵巣がんおよび頭頸部がんの患者さんを対象に欧米で行われている個別化治療ワクチンTG4050(注3)の第Ⅰ相臨床試験において、がん患者さんの遺伝子解析で協業します。TG4050はTransgene社独自のmyvac®プラットフォーム(注4)とNECのAIを活用したネオアンチゲン予測(注5)システムから構成されています。
Transgene社のmyvac®プラットフォームは、ウイルスゲノムエンジニアリングなどの革新的なテクノロジーを用いて、患者さんごとに個別化された免疫療法の迅速なモジュール型製造を実現します。
TG4050は、がんワクチン接種のために最適化されたウイルスプラットフォームに基づくmyvac®プラットフォームと、NECのAI技術を用いて開発された個別化がん治療ワクチンです。本ワクチンは、ネオアンチゲンと呼ばれる腫瘍特異的な抗原変異へのT細胞応答を誘導するために、患者さんの免疫系を刺激することを目的としています。ネオアンチゲンはゲノム変異に由来しており、がん領域で実績のある高度なAI技術を用いたNECのネオアンチゲン予測システムを使用して選択されます。TG4050は、最大30の患者さん固有のネオアンチゲンを標的とするように設計されています。Transgene社は、このウイルスによる個別化がん免疫療法における初の実証を目的として、2件の第Ⅰ相臨床試験を行っています。
本協業でBostonGene社は、2件の臨床試験に登録された患者さんから採取した原発腫瘍のゲノム解析と、トランスクリプトーム解析を実施し、TG4050への反応予測因子と、患者さんに投与されたワクチンへの反応を仲介する可能性のあるがん細胞の内因性および外因性因子の特定を試みます。BostonGene社のプラットフォームは、ゲノム解析とトランスクリプトーム解析を統合して、重大な体細胞変異の特定、遺伝子発現の評価、腫瘍の不均一性の推定、および微小環境の分類などを行い、腫瘍と微小環境の活動を同時に評価します。
BostonGene社は、腫瘍の活動、腫瘍細胞の組成、免疫微小環境およびその他の腫瘍関連プロセスの機能を、データに基づき視覚的に把握しやすい概略図として描写した「Tumor Portrait™ Report」を作成します。また、より詳細な患者さんの腫瘍の個々の発がん状態と免疫原性の洞察については、包括的なレポートとして提供します。
本協業に当たり、各社のコメントは以下のとおりです。
BostonGene社は、次世代シーケンシング(NGS)解析の独自のソリューションと深い専門知識により、腫瘍とその微小環境の詳細なプロファイルを提供してくれます。このTumor Portrait™ Reportは、我々の治験の患者さんのデータを、公開されているエビデンスに照らして確認するのに役立ち、TG4050の開発の加速に貢献してくれます。患者さんのデータを分析するこの新しい方法は、myvac®プラットフォームの開発をサポートする意欲的なトランスレーショナルプログラムの一つとなります。このようなアプローチをTransgene社の研究に統合し、ウイルスによる免疫療法を実用化するための統合フレームワークを構築していきます。
Éric Quéméneur
NECはTG4050 の臨床試験を通じて、BostonGene社とのコラボレーションを強化できることを嬉しく思います。BostonGene社の高度なNGS解析による優れたプロファイリングは、患者さんの腫瘍環境の理解に対して重要な洞察を提供し、またそれがより良い臨床結果に繋がると信じています。
Transgene社とNECにより行われている重要な第Ⅰ相臨床試験を支援できることを誇りに思います。今回の協業は、BostonGene社がコミットしている免疫療法によるがん治療の選択オプション改善と、個別化がん治療の変革を実現するものです。
以上
- (注1)本社:フランス・ストラスブール、会長 兼CEO:Philippe Archinard (フィリップ アーシナー)
Transgene社についての詳細は、こちらをご参照ください。http://www.transgene.fr/
- (注2)本社:米国・ボストン、President and CEO: Andrew Feinberg
- (注3)TG4050はTransgene社のmyvac®テクノロジーとNECのAIをベースとする個別化免疫療法です。このウイルスベースの治療用ワクチンは、NECのネオアンチゲン予測システムによって特定・選択されたネオアンチゲン(患者さん毎に異なる変異)をコードします。予測システムは20年以上にわたって培われたAIの専門知識に基づいており、正確に最も抗原性の高い配列の選択と優先順位付けを可能にする独自のデータによって訓練されています。TG4050は患者さん固有のネオアンチゲンに基づき、腫瘍細胞を認識し破壊することができるT細胞反応を引き起こすことを目的として、患者さんの免疫システムを刺激するよう設計されています。この個別化免疫療法は患者さん毎に開発され、短期間で製造されるものです。卵巣がん(NCT03839524)とHPV陰性の頭頸部がん(NCT04183166)の患者さんを対象とした2つの第Ⅰ相臨床試験が実施されています。
- (注4)myvac®は、Transgene社が開発したウイルスベクターを基にした、固形がんに対する個別化免疫療法のプラットフォームです。myvac®を用いた治療法は、患者さん自身の免疫システムを刺激し、患者さんそれぞれのがんに特徴的な遺伝子変異を用いてがん細胞を識別、攻撃するように設計されたものです。Transgeneはバイオ工学、デジタルトランスフォーメーション、確立されたベクター設計ノウハウおよび独自の製造設備をつなぐ革新的なネットワークを立ち上げました。Transgene社はmyvac®の開発のためにBpifranceより「Investment for the Future」基金を授与されています。myvac®の最初のプロダクトであるTG4050は、現在2つの固形がんの臨床試験で評価されています。
- (注5)ネオアンチゲン予測には、NECが新たに開発したグラフベース関係性学習を利用します。このAIエンジンは、NECが独自に蓄積してきたMHC(Major Histocompatibility Complex, 主要組織適合性遺伝子複合体)結合能の実験データをもとに学習させた予測技術を中心に多面的な項目を総合評価し、患者さんそれぞれが持つ多数の候補の中で、有望なネオアンチゲンを選定することができるものです。
NECの創薬事業について
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC AI創薬事業部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com

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