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NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人

製造業のSCMを高度化。
「決算を待たずに舵を切る」
AIネイティブ時代の経営意思決定

「Anaplan Connect Tokyo 2026」イベントレポート【2026.10.21】

カテゴリ:AX/AIデータドリブン経営サプライチェーン

2026年9月14日(月)・15日(火)に、東京・六本木のグランドハイアット東京にて企業の計画業務や意思決定の高度化をテーマにした国内最大級のイベント「Anaplan Connect Tokyo 2026」が開催されました。
AnaplanのSolution Advisory PartnerであるNECは、昨年に引き続きブース展示とともにブレイクアウトセッションに登壇し、「『決算後追い』から『期中制御』へ~AIネイティブ時代におけるSCM高度化と意思決定改革~」と題して講演を行いました。ここでは、その概要をお届けします。

【目次】

●「Anaplan Connect Tokyo 2026」の概要

Anaplan社は、米国マイアミに本社を置き、日本をはじめグローバルに拠点を展開する、AIを活用した業界をリードするシナリオプランニング・分析プラットフォームのプロバイダーです。組織全体を連携させて経営計画の立案や運営を効率的に行う製品が強みで、NECも製造業のお客様を中心にSCM(Supply Chain Management:サプライチェーンマネジメント)のソリューションとしてご提案しています。「Anaplan Connect Tokyo 2026」は、日本における同社のカンファレンスとして開催され、数多くの来場者を集め盛況に終わりました。
15日のアジェンダは、モーニングセッションに始まり、5つの基調講演および20のブレイクアウトセッションで構成され、会場のロビーではスポンサー企業17社が展示ブースを構えました。

●NECブース:「稼ぐ力」を最大化する意思決定とSCMの高度化

NECのブースでは、製品別の実効利益と資本収益性(ROIC)で儲けどころを見極め、シミュレーションで打ち手を選び、期中に軌道修正する意思決定の高度化を、製造業での分析ユースケースやデモを交えてご紹介しました。

多くの来場者で賑わう「Anaplan Connect Tokyo 2026」の会場とNEC展示ブースの様子
多くの来場者で賑わう「Anaplan Connect Tokyo 2026」の会場とNEC展示ブースの様子

●NEC講演:『決算後追い』から『期中制御』へ
~AIネイティブ時代におけるSCM高度化と意思決定改革~

【講演者のご紹介】
NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人
NECに入社以来、SEとして基幹業務システムを中心に、製造業のお客様のシステムインテグレーションに従事。現在は、製造業向けの新規事業開発をリード。

「AI Native Company」~AIの存在を前提に経営を変える

昨年のAnaplan Connect Tokyo 2025では、AI活用によって実現する将来像をお話ししました。当時は2~3年後の景色をイメージしていましたが、実際にはこの1年、特にこの半年で、AIを取り巻く環境は想像以上のスピードで変化しています。昨年が未来像の提示だったとすれば、今年は、AIの存在を前提に業務や意思決定のプロセスをどう再設計し、実装するかが問われる段階へ進んだといえます。
NECでも「AI Native Company」を掲げ、自社と社会の変革に取り組んでいます。
私が考えるAIネイティブとは、AIを単なる効率化の道具として使うのではなく、AIの存在を前提に、業務プロセスや仕組みそのものを変えていくことです。AIは価値創出や成長の源泉であり、経営そのものにかかわる存在になっています。

AIの役割も、コンテンツ生成や業務効率化を支援するツールから人と協働するパートナーへと変わりました。さらに今後は、人とAIが協調しながら持続的に企業価値の向上を実現する経営基盤としての存在へ進化していくと考えています。

では、それを経営の意思決定にどう活かすのか。今回は特にSCM(サプライチェーン・マネジメント)を題材にお話しします。

NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人による講演の様子
NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人による講演の様子

「決算を待たずに舵を切る」

SCMの現場は、関係者が多く、さまざまなトレードオフが存在します。市場や為替、原材料価格などの変化も激しく、常に迅速な判断が求められます。こうした複雑な状況を人手だけで回すのは、もはや難しくなっています。この人手で回しきれない複雑さこそが、AIの進化がカバーできる領域です。

AIとデータを組み合わせることで、これまで十分に反映できなかった「人の意思」を経営に組み込めるようになります。重要なのは、個別部門の部分最適の綱引きではなく、企業全体、サプライチェーン全体を見た全体最適です。その判断のモノサシが、資本収益性の向上です。

「今なぜSCMなのか」についての説明スライド

皆さんにも、「もっと早く分かっていれば打ち手があったのに」という経験があるのではないでしょうか。変動の影響は、発生した瞬間には見えにくい一方、見えるようになったときにはすでに手遅れになっていることがあります。掲げたKPIが期中には十分に見えず、変動による影響をその場で答えられないというケースもあります。

そこで今日、最もお伝えしたいのは、「決算を待たずに舵を切る」ということです。
変動に強い経営能力を、組織の力としていかに獲得するか。これは、ツール導入の話でも業務改善の話でもありません。経営の話です。

決算は企業にとって重要な共通言語ですが、締めた数字は過去の結果です。一方で、経営には「動かす数字」も必要です。期中に期末の着地点を予測し、その時点で必要なアクションを取る。期末の決算は単なる結果ではなく、答え合わせの場になります。

ファクトを「掴む」~「動くツリー」に数字を載せる

まず、意思決定の土台となる事実を把握します。ただし、単にデータを集めることが目的ではありません。経営が目指す方向とつながっていない数字は、意思決定にはつながらないからです。

実装にあたっては、「業務」「組織/人材」「IT/AX」という三つの変革を別々に進めるのではなく、三位一体で仕組みにしていく必要があります。

「昨年のおさらい×今年はさらに実装へ」についての説明スライド

特に重要なのがKPIツリーです。KGIから財務KPI、KSF、業務KPIへとつなげる基本的な構造自体は新しいものではありません。ほとんどの層はロジックで、今ならAIでも降ろせるでしょう。ただしKSFだけは、AIにも導出できません。因果関係についての仮説と現場のコミットメントを踏まえて、人が決める必要があります。ここに現場の「腹落ち」があって初めて、経営と現場の業務が本当の意味でつながります。

「KPIツリー設計とKSFの腹落ち」についての説明スライド

KPIを置くと、組織間で数字の配分を巡って議論になる。渡された現場からは、「これは自分の数字ではない」と返ってくる。

形だけのKPIツリーは、現場に配られた瞬間に「他人の数字」になってしまいます。一方、現場とともにKSFを決め直し、自分たちの仕事と数字の関係を理解できれば、「配られた数字」は「自分たちで握った数字」へと変わり、現場は自分事として動き始めます。KPIツリーは単なる管理手法ではなく、経営と現場をつなぎ、組織を同じ方向へ導くための仕組みです。この違いが非常に重要だと考えています。この「動くツリー」に数字を載せてファクトを捉えることで、経営とSCM業務を連動させた意思決定につながります。

また、このファクトを捉える際には、PLだけではなくBSやキャッシュまで含めて捉える必要があります。例えば、製品ごとの粗利益率と棚卸資産回転率だけを見ると、ほとんどの製品が効率よく稼げているように見えることがあります。しかし、主要部材の在庫やサプライチェーン上のコストまで含めて実効利益という視点で捉えると、評価が大きく変わる場合があります。

「Factを掴む『実効利益』で見える景色」についての説明スライド

同じ製品を見ていても、どの情報を含めるかによって景色は変わります。誤った景色を見れば、当然、誤った評価や意思決定につながります。ただし、最初から完璧な精度を追求する必要はありません。責任と合意が成立するレベルで適切に粗く捉え、まず意思決定につなげることが重要です。
さらに、キャッシュの視点でも同じです。単年度では黒字に見えていても、過去に過剰に調達した在庫が残っていれば、累積キャッシュでは赤字が続いている可能性があります。手元のキャッシュは、次の成長に向けた打ち手の原資です。経営の観点で、この差は決定的です。だからこそ、時間軸を変えて先を見ることが重要になります。

「先を見通す」「決める」~期中でのアクションへ

見える化だけで終わらせるのではなく、次にこのまま進んだ場合、期末にどこへ着地するのかを予測します。そして、その結果を踏まえて具体的な打ち手を決めます。この三段階まで進んで初めて、期中に舵を切ることができます。

NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人による講演の様子

「先を見通す」段階では、何もしなければ期末にどこへ着地するのか、そして目標との差がどれだけ生じるのかを把握します。着地点や目標とのギャップの幅を変動が発生したタイミングで数字として把握できれば、それが舵を切るトリガーになります。変化を捉え、AIにその影響や論点を整理させることで、「期末はどうなるのか」という問いにも即座に答えられる。講演では、その画面イメージを示しました。

さらに「決める」段階では、AIを使えば、複数の収益改善シナリオを並べて、期末の着地点の違いを数字で比較できます。講演では、そうした選択肢が並ぶ世界観を示しています。着実に収益を確保するために一時的にブレーキを踏むのか、売上を重視して需要喚起のためにアクセルを踏むのか、それとも複合的な施策でバランスを取るのか。それぞれの施策によって期末の着地点がどう変わるのかを、数字で比較できます。

また、打ち手の効果は一つの結果に収束するわけではありません。良い方向にも、悪い方向にもブレる。その幅を含めた複数のシナリオを見通した上で、どこに着地させるかを決める。重要なのは、予測精度そのものではありません。「その変動の影響はいくらなのか」「今、何を決めるべきなのか」を期中に判断できることです。


ただし、最終的に決めるのは人です。AIの提案をそのまま採用するのではなく、納得がいかなければ条件を動かして、組織間で合意しながら別の案を作ればよい。AIは人を置き換えるものではなく、人がより高度な判断に集中するための存在です。

その意味で、人とAIには明確な役割分担があります。人は、何を目指すのかという方向性を示し、AIの提案を踏まえて最終的に承認するのか、リスクを取ってアクセルを踏むのかを決めます。また、AIのリスクや倫理を統治することも人の役割です。一方、AIは大量のデータを分析し、変化を捉え、将来を予測し、選択肢を提示します。こうした高度な役割分担によって、人は人にしかできない仕事に集中できるようになります。

NECとその先へ ~経営×SCM業務×AX——3つの言語を話せる中期伴走者

NECがこの領域で提供できる価値は、AIの技術だけではありません。これまでに8,000件を超えるAIプロジェクトを支援してきた実践経験、自社でAIを開発しているからこそできる技術の目利き、そしてNEC自身を「ゼロ番目のクライアント」として実践していることがあります。ガバナンス、セキュリティ、倫理、AIリスクの監視や、AI利用に伴って増大するトークンコストについても、自ら課題に向き合っています。成功も、失敗も。こうした実践知は、惜しみなくお伝えしていきます。

さらに、私たちは経営の言葉であるROICや資本収益性を理解すると同時に、SCMやものづくりの現場を理解し、そこにAXとして実装していくことができます。経営、SCM業務、AXという三つの言語を一人の伴走者としてつなげられることが、私たちの強みです。

NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人による講演の様子

改革は構想して終わりではありません。定着化、拡大、高度化まで中長期にわたって取り組む必要があります。構想から実装、定着、そして高度化までやり切ることこそ、私たちが提供したい価値です。

「3つの言語(経営、SCM、AX)を話せる伴走者」についての説明スライド

最後に、私たちNEC自身も、好調な時期が永遠に続くわけではないという苦い経験をしています。過去には長期的な業績低迷を経験し、大規模な事業ポートフォリオの入れ替えを余儀なくされました。だからこそ、経営的に追い込まれてから変革に取り組むのではなく、好調な今だからこそ、将来の成長に向けて舵を切る力を備えることが重要だと身をもって言えます。

AIの存在を前提に業務や社会の仕組みが再定義される一方で、人間の仕事がなくなるのではありません。AIが複雑で大きな力を必要とするタスクを担ってくれるからこそ、人は人にしかできない判断や意思決定に時間を使えるようになります。

「AIで始まり、人が決める」。

変化を捉え、先を見通し、必要なタイミングで舵を切る。これこそが、これからの経営に求められる力だと考えています。

市場環境やサプライチェーンを取り巻く変化がますます激しくなる中、製造業の経営には、決算の後追いではなく、期中に着地を見て舵を切る力が求められています。AIはその前提になる。AIとデータを活用しながら、人が意思を持って判断し行動することで、企業はより強くしなやかな組織へと進化できます。NECはこれからも、お客様とともに製造業の持続的な成長と企業価値向上の実現に向けて伴走してまいります。

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