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消費財メーカー向けセミナーのNEC講師4名が参加者へ説明している様子消費財メーカー向けセミナーのNEC講師4名が参加者へ説明している様子

消費財メーカーの業務基幹システムの未来

~第3弾 消費財メーカー向けセミナーレポート~【2025.10.15】

カテゴリ:DX・業務改革推進SCM/MES/FSMその他

NECでは、2025年9月19日(金)、NEC本社ビルに消費財メーカーのお客様をお招きし、消費財メーカーのあるべき基幹システムを考えることをテーマとしたセミナーを開催いたしました。
本セミナーは、第一部としてNECの社内事例による社内DXについて、第二部として消費財メーカーにおける基幹システムのモダナイゼーションおよびSAPによる基幹システムの在り方についてのそれぞれ講演と、第三部としてお客様とNECのスペシャリストが当該テーマにおいてディスカッションするラウンドテーブルの全3部構成で行われました。
ここでは、その概要について詳しくご紹介いたします。

[目次]

【第一部】NEC社内事例 ~NECが推進する社内のDX~

NEC コーポレートIT戦略部門/データ&アナリティクス統括部 ディレクター 水野 雅継
NEC コーポレートIT戦略部門/データ&アナリティクス統括部 中村 健一

前半は、NEC本社ビル24階フロアに設置された特大ディスプレイ前にて、NEC ITシステム部門の水野と中村が社内DXの取り組みについて説明しました。

NEC水野 雅継が社内DXの取り組みについて紹介している様子
NEC水野 雅継が社内DXの取り組みについて紹介している様子

●NECのSAP導入と社内DXの歩み
NECは、中期経営計画において、「3つのDX」を経営の中核に置いています。
社内DXにおいては、データドリブン経営を実現するべく、システム周りのモダナイゼーションを進めているところです。こうして社内に蓄積されたDXのナレッジは、お客様や社会のDXに還元・循環させていくという位置づけにあります。

「NEC2025中期経営計画)の説明スライド

NECの基幹業務のDXは、それまで事業体ごとのシステムが乱立し内部統制が不足するという課題解決のため、2008年にSAPを導入したことが最初のフェーズです。これにより、内部統制強化や決算日程短縮化などを実現させました。

「基幹業務のDX」の説明スライド

その後のフェーズ2においては、データドリブン経営の走りとすべく、データベースとしてSAP HANAを導入し高速化を図りました。
さらに、フェーズ3としてS/4 HANAへのコンバージョンを行い、デジタル経営基盤を固めました。
しかしながら、まだまだEnd to Endでの標準化は不十分であり、これからデータドリブン経営に向けて、真のDXに向けた基幹システムのモダナイゼーションに取り組んでいくフェーズにあります。
そこで、SAPとの戦略的協業を進め、2025年5月に「RISE with SAP」に移行し、価値最大化を図っていく方針です。

これまでの具体的成果として、データドリブン経営を進める前提となる、様々な角度からのダッシュボードの構築が挙げられます。


「経営コックピット」は、基幹システムおよび周辺システムから得られたデータをOneDataプラットフォームに集約し、グローバルの財務状況や商談の状況、品質やリスク、セキュリティの状況、NEC 単体の業績や AI による予測、従業員のエンゲージメント状況といったデータを可視化しています。
このダッシュボードは一般社員にも公開されており、経営層から各部署に同じデータを見ながら指示を出し、行動に繋げるといった使い方がされています。

NEC中村健一が「経営コックピット」についての紹介をしている様子
NEC中村健一が「経営コックピット」についての紹介をしている様子

さらに、社長である森田の視点で状況を分析するAIも構築しています。画面には森田の画像が表示され、画面の中の森田に話しかけるように聞けば、森田の声で回答するという仕組みです。

NEC取締役 代表執行役社長 兼 CEO森田隆之のAIが、 さまざまな質問に回答するデモンストレーションの様子
NEC取締役 代表執行役社長 兼 CEO森田隆之のAIが、
さまざまな質問に回答するデモンストレーションの様子

このAIには、森田の過去の発言や周辺の情報を読み込ませ、森田が考えるであろう内容に近づけています。何ごとにおいても、経営はどう判断するかの参考となり、「AIであれば本人には聞きにくいことも聞ける」などと社内では好評です。
※当日は、ダッシュボードの各要素についても説明を行っていますが、ここでは割愛いたします。

後半は、セミナー会場に移動して、NECの石黒が下記テーマにて講演を行いました。

【第二部】基調講演1:NEC社内事例 ~基幹システムのモダナイゼーション~

NECコーポレートITシステム部門 基幹DX開発統括部 プロフェッショナル 石黒 朗記
2013年からグローバルSAPメンテナンス責任者として運用を統括し、2019年よりSAP S/4HANA®化を推進。2022年以降はクリーンコア導入とAI活用を中心に、社内DXの加速と基幹システムの高度化に取り組み、持続的な業務変革を推進中。

●クリーンコア・アプローチによる基幹システムのモダナイゼーション
NECの基幹システムと周辺の状況としては、下図のとおり中央にG1と呼ばれるSAP の基幹システムがあり、その周辺に約200のサブシステムと連携しています。

「NEC基幹システム周辺の現状」の説明スライド

したがって、変更には多大な工数を要するという課題があり、①クラウド化完了(2025年5月に完了済)、②クリーンコア化、③最新化バージョンアップという3ステップでのモダナイゼーションを考えています。

今後のクリーンコア化からバージョンアップまでの全体プロセスとしては、その開発工数や期間削減のために、バージョンアップ影響の抑制と開発生産性向上の2軸で進めます。

前者では、SAPの提唱する「5Dimension」によるクリーンコア化の理解から、UI/UXやアーキテクチャの検討、さらにSide by Side開発などのグランドデザイン策定までを行い、後者では生成AI・Toolchainを駆使してのモダナイゼーションによる開発生産性の向上を目指すというものです。

NEC石黒朗記による「基幹システムのモダナイゼーション」の講演の様子
NEC石黒朗記による「基幹システムのモダナイゼーション」の講演の様子

●生成AI・Toolchainの最大活用で変わるモダナイゼーションの開発プロセス

モダナイゼーションは、下図のとおり4つの工程に分けて考えています。

「生成AI・Toolchainを駆使したモダナイゼーション」の説明スライド)

使用ツールとしては、可視化においては「LeanIX」や「Signavio」、調査・分析および設計・開発では主にAIを活用し、テストは「Cloud ALM」と「Tricentis」を用いる。そして、可視化で出てきた情報からテストシナリオを持ってきてテストを自動化するといった流れです。これにより、50~90%という高い効率化を目指します。

4ステップの具体的な中身としては、次のとおりです。
まず「可視化」は、「LeanIX」でシステムのライフサイクルなどを自動的に可視化。また、マイニングツールで使っていないシステムを自動的に可視化し断捨離に繋げます。
「調査・分析」においては、AIエージェントにより、クリーンコアに向けたアーキテクチャと公開インターフェースの検討を自動化します。
「設計・開発」も、AIエージェントにより効率化させます。もちろん、いずれにおいても“AI任せ”ではなく、どの工程も最後は人間がチェックし品質を担保します。
これらによって非常に効率化できる上、精度においてもトータルで94%という高い数値を実現しています。

第二部:基調講演2:食品・消費財メーカーにおける基幹システムの在り方

製造ソリューション事業部門 製造システム統括部 ディレクター 高増 弘一郎
食品・消費財メーカー様を中心にプロセス製造業の基幹システム構築プロジェクトに従事、スクラッチ開発やPKG・サービス導入などの様々な形態でのシステム導入経験を保有。

引き続き、NECの高増が、「食品・消費財メーカーにおける基幹システムの在り方」というテーマで講演を行いました。

NEC高増弘一郎による「食品・消費財メーカーにおける基幹システムの在り方」の講演の様子
NEC高増弘一郎による「食品・消費財メーカーにおける基幹システムの在り方」の講演の様子

食品・消費財メーカーのシステム全体像として、ここでは図のとおりに整理しています。

「NECが考える食品・消費財メーカーのシステム全体像」の説明スライド

基幹システムの領域としては、サプライチェーンマネジメント(SCM)と、財務などのFinancial Planning & Analysis(FP&A)の領域に大別できます。SCMにおいては、経営・事業戦略とバリューチェーンにおける業務の2つの役割に分け、併せて3つの領域に分けています。

それぞれにおいて、目的に応じたサブシステムが存在しています。L1では統合事業計画やKPI設計など、L2では事業計画、開発、営業などの業務領域ごとの様々なサブシステム、L3においては財務会計や人事給与などの管理におけるサブシステムが該当します。
こうした基幹システムを構築するに当たっては、業界特性を考える必要があります。消費財メーカーにおいても、下図のように取扱商品や得意先との商習慣に独自の特性があります。

「食品・消費財メーカーの基幹システムに求められる業務特性」の説明スライド

商品で言えば、賞味期限の管理や荷姿の多様性など悩ましい特性があります。取引先においては、リベートや帳合といった商習慣の複雑さや、在庫管理における機会損失と廃棄への対応など、難しい特性があります。

●SAPクリーンコアに向けた考え方
こうした特性を踏まえた基幹システムの在り方として、この前に石黒がお話ししたSAPクリーンコア化について考えてみたいと思います。

NECでは、G1という会計など基幹システムからスタートしましたが、着目いただきたいのは図の赤枠で、SCMなどの周辺システムはSAPを採用していないことです。非採用の理由としては、SCMは企業として勝ち抜いていくための差別化領域と位置付け、独自に専用ソリューションを採用しているからです。

「NECのSAPクリーンコア事例」の説明スライド

そこで、SAPクリーンコアを見据えた一つの方向性として、SCM領域は事業戦略に沿ったシステム変化を、FP&A領域は事業継続のための維持・効率化を追求すべきと考えています。

SCMにおいては、変化する事業環境に迅速に対応すべく、事業の目的用途別に随時見直すことが必要です。そこで、事業特性に合った既存資産や専用ソリューションを活用します。
一方、FP&Aにおいては、事業継続のための効率化や共通化を進めるべく、SAPクリーンコア化による標準化を推進するというものです。

●今後の基幹システムに向けたアプローチ
今後の基幹システムに向けたアプローチとして、モダナイゼーションのパターンを整理してみました。これにより、サブシステムに期待される目的や効果からモダナイゼーションのパターンを設定することができます。

「目的は何か、効果は何か?」の説明スライド

当社にご相談いただいたモダナイゼーションパターン整理の事例として、SAP適用範囲を定める際、サブシステムの将来的な役割を定義し、保有する機能からSAP適用範囲を定めたものがあります。こうした事例を通じて、SCM領域においては、SAPの機能では不十分ということではなく、既存システムの仕組みを維持したいというニーズの強さを感じています。

最後に、NECが考える食品・消費財メーカーが直面するSCMの課題を整理してみます。

「NECが考える食品・消費財メーカーが直面するSCM課題」の説明スライド

これからの事業・業務課題と、次世代業務基幹システムの機能群を戦略、計画、オペレーションの領域に分けて関連性を表示しています。
食品・消費財メーカーの基幹システムには、ダイナミックな事業環境変化と収益性向上に対応する必要があります。例えば、最近特に多く耳にする課題として、物流に関わる問題があります。この人手不足やトラック不足などのリソース成約課題だけでなく、ポートフォリオ変革に伴う事業の入れ替えにも対応が求められると考えています。
以上、講演終了後に質疑応答を行い、第三部のラウンドテーブルに移りました。

【第三部】NECの専門家とお客様とのディスカッション

ご出席のお客様とNECのスペシャリストが、事前アンケートで多かった課題として、次のテーマでディスカッションを行いました。

第三部NECの専門家とお客様とのディスカッションの様子
第三部NECの専門家とお客様とのディスカッションの様子

●新しいテクノロジーやアーキテクチャの採用に対する課題
●経営や事業・業務からの要望に対する課題

お客様の企業における課題や解決の方向性に関して意見交換を行い、意義のある時間を共有いただくことができました。

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