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“品質”を向上させるデジタル変革
ものづくりの未来
「自律化」「つながる」による“品質DX”のすすめ【2021.09.15】
カテゴリ:DX・業務改革推進品質・環境・物流スマートファクトリー(IoT基盤/AI)
いま、盛んに言われている“DX”。製造業の生産現場においても、デジタル化による業務変革で品質や生産性を大幅に向上させる取り組みが始まっています。
しかし、その必要性を感じていない企業や進め方がわからない企業が多いという現状があります。そこで今回は、NECで製造業の当該問題に関わるメンバーに、生産現場のDXの意義や進め方の要点について聞きました。
日本電気株式会社 第二製造業ソリューション事業部 ソリューション推進部 主任 若林弘樹
日本電気株式会社 製造・装置業システム本部 主任 菊地真吾
若林: 2021年になり、人々の生活面・ビジネス面における変化はより大きなものになってきています。2021年版ものづくり白書においても、「製造業のニューノーマルはレジリエンス(サプライチェーン強靭化)・グリーン(カーボンニュートラル)・デジタルを主軸に展開される」と書かれています。
中でもデジタルの領域は、その取り組みに着目されてから久しいですが、それでも「DXに成功している」と捉えているお客様はまだ多くはありません。同白書によると、DXの取り組みは “約95%”もの企業において「未着手または一部部門での実施」にとどまっているという結果が出ています。
NECとして、直接お客様のご支援をさせていただく中でも同様の傾向は感じられます。
というのも、DXの本質は「デジタル技術を活用した業務改革」であるのに対し、これまでのケースでは「スマートデバイスを活用した入力業務の省力化」など、AIやIoT含むICT(Information and Communication Technology)技術を「活用する」「業務に採用する」にとどまり、「現状業務の延長」が圧倒的に多いからです。
菊地: その理由として考えられるのは、日本の製造業はものづくりへの強いこだわりのもと、様々な課題に対して日々改善を積み重ねてきており、「雑巾を絞り切った状態」といった一つの完成型に達しているとの思いがあるように感じます。
そうしたプロセスの中で、熟練者を中心に工夫を重ねながら何とか現場を回せているという状況にあり、DXの必要性が強く意識されていないのではないでしょうか。ICTについて考えるのは情報システム部門の役目であり、生産現場にはやや縁遠いといった意識もあると思います。
デジタル技術による業務変革の例
若林: これまでは、AIやIoTを一部の部門や領域で「活用する」と考えられる企業が多くありました。ただ、このようなレベルでは、効率化、つまり工数の代替でしかなく、投資対効果に置き換えるとインパクトは小規模です。一方で、デジタル技術を取り込み、業務を“変革”され始めているお客さまもいらっしゃいます。2つの事例とポイントをご紹介させていただきます。
1.「自律化」事例
現在も、ものづくり現場においては、熟練者の方が経験と勘で操業を判断している場合がほとんどです。これが、日本製品が高品質であることの源泉であるとも考えられますが、日本国内においては労働人口の高齢化や減少が確実なため、品質の維持のみならず現場の操業が立ち行かなくなっていく可能性も高いです。このような課題に対してのDXの実現イメージとしては、設備の「自律化」が挙げられます。
自律化とは、現場の5M(Material、Machine、Man、Method、Measurement)情報をリアルタイムに収集し、その状況から自律的に最適条件を判断して、設備稼働条件や作業指示にフィードバックするという考え方です。
熟練者が実施してきた業務(=情報を把握し、過去の経験値と照らし合わせ、最適な条件を判断し、対処)の範囲をデジタル技術で代替することになります。
熟練者の経験に基づく属人的な勘まで代替することはまだ難しいものの、頭の中にあってデータ化できる知見やロジックは、AIによって代替可能です。
この効果としては、「効率化/省力化」にとどまらず、「属人性の排除」「無人化」につながっていき、さらには「最適運転による品質不良ロスの削減」という、工数の代替に限定されない抜本的な効果が得られるようになります。
2.「つながる」事例
複数の企業をまたがって形成されるいわゆる「エコシステム」の事例です。
NECでは以前から、解決すべき社会問題である「食品ロス」に対し、小売りや食品メーカーなど単一の企業ではなくバリューチェーン全体で解決する「需給最適化プラットフォーム」を提供してきています。これまでは、競争力の源泉ともなる企業内のデータを外部に積極的に公開する、という考えに否定的なお客様が多くありました。しかしながら、SDGsに対する意識の高まりもあって、「社会課題は社会全体で解決していく」という考え方は今後必ず加速していくと考えられます。
NECでは、この考え方を「製品品質保証」にも適用させていくべきと考えています。製品のバリューチェーンで品質を作り込むことが、社会全体での品質=ステークホルダー(関わる人)の安心安全につながると考えています。
具体的には、バリューチェーンを形成する各社の品質検査情報をクラウド上でつなぎ、エコシステムとして形成することで、「製品不具合発生時のトレーサビリティ迅速化」「過剰品質を抑制し、過不足ない品質を市場投入」することが可能となります。さらには、デジタル技術で当該情報を自動的に吸い上げることで人手の介入を極小化でき、「改ざん防止」にもつなげることができます。こちらの事例では、従来の現場のやりかたから脱却し、業務に変革をもたらすことになります。
デジタル変革を実現する上でのポイント
これら2つの事例のお客様をご支援している中で、ポイントは次の3点と考えています。
1点目は、計画段階です。
上記のような取り組みを実践していく上では複数組織の連携は必須で、トップマネジメントを含めて合意形成を取る必要があります。その中で「必要なコストを投じて行う」といった意思決定、および目指すべき方向性や目的の明確化、また業務自体が変革されることに備えたルールや組織体制の整備、運用/業務面の整備が欠かせません。なぜならば、単なる技術の導入にとどまることで変革を完結することができないなど、こうした観点がおろそかになることでうまく推進できていないお客様もいらっしゃるからです。
2点目は、人材面です。
当然、現場の方々は業務に対する深い知見をお持ちではありますが、デジタル技術が業務に深く関わってくるようになるとITやデータサイエンスに関する知見も必要になってきます。IT部門やデータサイエンティストのメンバーが参画しているお客様ももちろん多いですが、現場業務を理解していないために折り合わないケースも散見され、「現場で業務をする人」のDXスキルを向上することも重要と捉えています。
3点目は、スピードです。
上記の2点のポイントが重要である一方で、経営の観点では効果を出すまでのスピードが求められます。DXにおいては検討すべき観点や採用すべき技術が広範囲/多岐にわたるため、なかなかスピード感を出せず悩むお客さまも多くいらっしゃいます。これを打開するために、今回ご紹介したような他社での「ベストプラクティス」「ユースケース」を取り込むという考え方もポイントと考えています。
NECで貢献できること
菊地: 顧客要求の高度化/多様化に伴い、生産財企業の置かれている環境も大きく変化しています。加えて、内部的にはこれまで以上に業務効率化を求められている企業が増えています。
NECは、生産財企業のものづくりを支援するために、上述のような「自律化」「つながる」を実現するためのシステムのご提供だけでなく、企画/計画策定のご支援、IT/DX面の人材提供や教育ご支援、NEC Industrial IoT Platformを中心としたソリューションのご提供に加え、導入方法や業務活用方法など、豊富な導入実績からベストプラクティスをご提案することが可能です。
中でもNEC Industrial IoT Platformは、常に変化・進化するものづくり環境と共に成長し、次世代ものづくり革新を実現するプラットフォームとしてDX実現の根幹を成すものです。こういったNECのベストプラクティスを採用頂くことで、生産財企業は、より確実に期待効果を創出することができます。
NECでは、日本企業の競争力の源泉である「品質」の高度化へ向け、DXのテーマとして注力しています。
「品質DX」は、いまでも進化/発展し続けています。NECは、個々のソリューション適用による効果創出だけではなく、生産財企業の成長に合わせて、継続的に価値提供させて頂きます。
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