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まだ人力?!生成AIを使ったクラウド運用効率化を始めよう
~AWS Summit Japan 2026 登壇レポート~
生成AIを使って、クラウド・ガバメントクラウドの運用を楽にしませんか? AWS Summit Japan 2026での講演内容をご紹介します
こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのご支援をしている堀田です。今回は、2026年6月25日~26日に幕張メッセで開催されたAWS Summit Japan 2026でのパートナーセッション登壇内容についてご紹介します。

AWS Summit Japan 2026に登壇しました!
NECはAWS Summit Japan 2026に「Diamond Sponsors」として協賛しており、今回はスポンサー枠で登壇の機会をいただきました。講演タイトルは次のとおりです。
「まだ人力?! 生成AIを使ったクラウド運用作業効率化を始めよう!
生成AIを使ってクラウド・ガバメントクラウドの運用を楽にしませんか?」

生成AIを用いて、クラウドおよびガバメントクラウドの運用を効率化したい、楽にしたい。この思いをお伝えしたいと思った講演です。ここで少し裏話を…実はセッション登壇にあたり、発表資料の初回締切は登壇の1か月以上前に設定されていました。資料の締切が1か月以上前ということは、話す内容はさらにそれより前に決めておかなければなりません。生成AIの進化の速さを考えると、1か月以上先でも陳腐化しない「話すネタ」を決めるのは、相当に覚悟が必要でした。本コラムでは、その講演内容をかいつまんでご紹介していきます。
講演テーマ:クラウド/ガバメントクラウド運用の手間
クラウドでは、従来のオンプレミス環境と比較して「情報収集の手間」と「運用の手間」が増えます。情報収集の手間は、クラウドサービスのリリース速度の速さに起因します。運用の手間は、クラウドから発せられるアラートやログの量に起因します。講演では、当社環境の実績をもとにした試算もご紹介しました。AWSアップデートの確認・影響評価やガバメントクラウドテンプレートの更新調査といったアップデート追随に年間6人月(980時間)、セキュリティ系のアラートは月475件にのぼり、一次対応と重要アラート調査を合わせると、最大で年間12.5人月(約2,000時間)の対応工数が必要になる可能性がある、という試算です。

従来のオンプレミス環境と同様の運用体制のままクラウド運用を開始しているプロジェクトも多いのではないでしょうか。この従来になかった手間に振り回されているプロジェクトも少なくないと思います。さらに、振り回されることを避けるために、情報収集と運用が半ば形骸化してしまっているプロジェクトも世の中にはあるかもしれません。しかし、これは避けなければならないことです。講演では、この課題に対して生成AIによる情報収集と運用の効率化について、NECでの実践事例を4つご紹介しました。
ガバメントクラウドでの生成AI利用条件
本題に入る前に、前提のお話です。ガバメントクラウドで生成AIを利用する際には、利用条件を考慮する必要があります。以前のコラムでもご紹介したように、次の3つの条件があります。
- 条件① 国内で利用可能なモデルであること
- 条件② ISMAP要件を満たすこと
- 条件③ 生成AIメーカーとデジタル庁(または利用組織)の契約関係
参考:ガバメントクラウドで生成AIを利用するには?
https://jpn.nec.com/government/solution04/col_g.8/index.html
最新の生成AIモデルや、生成AIモデルのバージョンを好きに選べるわけではないことに注意が必要です。ガバメントクラウドで生成AI活用を検討する際は、まずこの3条件を満たすモデルの選定が出発点になります。
活用① クラウド最新情報 AI自動分析・通知機能
1つ目は、AWSからのリリース情報を定期的に確認し、メールやMicrosoft Teams、Slackなどへ投稿する仕組みです。AWSの情報更新サイト(https://aws.amazon.com/jp/new/)の情報を取り込み、運用環境の設計情報などを加味して、生成AIによる情報の重みづけを行います。これにより、運用者に依存しない、統一されたレベル感での情報収集ができるようになります。運用している環境を踏まえて、リリース内容の重みづけを変えた通知も行っています。例えば、ガバメントクラウド上でシステムを運用している場合、原則として国内リージョンのみを使用しているはずです。国内リージョンが対象となっていないリリース情報であれば、そこまで注意を向ける必要はありませんので、優先度の低い情報として通知します。

「気の利いた人」が情報を参照し、内部展開する——そんな属人的な運用となっているプロジェクトもあるのではないでしょうか? 生成AIを利用することで、属人性を排除したAWS更新情報の収集と展開が可能になります。確認していたプロセスそのものが変わり、利用中サービスの更新を取りこぼすことなく、翌営業日には手元に届く。毎朝の運用ミーティングでそのまま使える形になります。
活用② GCASガイド 規定・技術情報検索機能
2つ目は、ガバメントクラウドの規定・技術情報を自然言語で検索できるようにする仕組みです。GCAS(Government Cloud Assistant Service)は、ガバメントクラウドのオンボーディングツールとして、情報提供・問合せ対応・利用申請等を行うWebサービスです。また、「GCASガイド」としてガバメントクラウド関連情報の一部が一般公開されています。一部とはいえ、一般的なクラウド運用にも非常に参考になる情報が掲載されており、クラウド運用に携わる方には一読いただきたい内容です。このGCASガイドの内容をより検索しやすくするために用意したのが本機能です。GCASガイドの掲載内容を取り込み、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)で利用できるようにしています。
RAGを利用することで、自然言語で必要な情報を検索できます。「こんなようなことが書いてなかったっけ?」といったあいまいな記憶や、会話の中で出てきたキーワードなどからも検索ができるようになります。回答にはGCASガイドの出典元URLを明示しますので、確かなエビデンスに基づいた検討ができます。ガバメントクラウドの運用だけでなく、開発や移行に対応する方にもとても有益です。

- ※GCASガイドは「公共データ利用規約(第1.0版)」にて提供されています
- 出典:デジタル庁「GCASガイド」GCASコピーライトポリシー
https://guide.gcas.cloud.go.jp/readme/policy-and-contact/copyright-policy
活用③ セキュリティアラート AI自動分析・通知機能
3つ目は、セキュリティアラートの自動分析・通知です。クラウドからはとても多くのアラートが発出されます。また、内容を理解するにはクラウドのスキルが求められます。膨大なログ、かつ内容の把握にスキルが求められるため、アラートの対応には時間を要します。アラートには緊急度レベルが付与されているものの、最高レベルのアラートもそれなりの数が飛んできます。私が懸念しているのは、徐々にアラートを見なくなっていくことです。
そのような状況を避けたいと思い、アラートの自動分析・通知機能を作りました。例えば、AWS Security Hubから発出されるログを生成AIで要約するとともに、自分たちの運用環境の情報も加味して影響度合いを判断します。また、次に必要なアクションの提案も行うようにしています。これにより、運用者のスキルに応じた対応のムラをなくすとともに、生成AIが提示するアクションが、対応作業スタートのヒントを与えてくれます。夜間休日でも同じ品質で要約されますので、引き継ぎの品質も平準化されます。

ただ、わかりやすいアラートであっても、大量に送付されてくれば、やはり見なくなってしまう恐れはあります。まずは、アラートの発出量そのものを下げることが重要です。そのためには、開発チームへの対処依頼が必要な場合もあります。本機能によりアラートの対処方法も分かりやすくなりますので、開発チームへの連携がこれまでよりしやすくなると思います。本機能に加え、アラート対応としては以下をお勧めしています。
- 対応ルールを設け、アラートが発出された際の対応方針・修正方針を定める
- 対応ルールに基づきアラートの原因対処を行う場合 → 開発チームへ連携する
- 対応ルールに基づきアラートの原因対処を行わない場合 → 本機能にて対処不要フラグの設定などでの対応を検討する
活用④ クラウド運用支援チャット機能
4つ目は、少し毛色を変えて、「問いかけて、引き出す」プロアクティブな運用に向けた仕組みです。ここまでの3つが「届いた情報をAIが整理してくれる」仕組みだとすると、こちらは運用者からAIへ能動的に問いかけて、状況把握や改善案を引き出すための仕組みです。生成AIにMCPを組み合わせることで、運用中のAWS環境の様々な情報を収集することができます。チャット形式で利用できるようにしていますので、AWSスキルの高くない方でも、自然言語で会話するように情報収集ができます。
<キーワード解説> MCP(Model Context Protocol)
生成AIが外部のツールやデータソースと連携するための仕組み(プロトコル)です。MCPを使うと、生成AIがチャット越しにクラウドの構成情報、コスト・利用状況、運用ナレッジなどを直接参照しながら回答できるようになります。
利用イメージは次のとおりです。
Q.(運用者)
直近6ヶ月のAWS利用料を月別・サービス別に集計し、20%以上増加したサービスがあれば原因を分析してください。
A.(AI/MCPによる回答)
AWS利用料 直近6ヶ月分析レポート/月別・サービス別コスト集計と増加要因分析
~(省略)~
結論:直近6ヶ月の分析により、AWS Security Hubの急激な増加(214%)が最大の課題であることが判明しました。このサービスだけで総コストの58%を占めており、早急な対応が必要です。
確認ポイントとして~(省略)
例えばこの結果を「幹部報告用の体裁にしてほしい」と依頼すれば、そのような体裁で出力してくれますし、原因のさらなる深堀りを依頼することも可能です。従来であれば「取得・分析できる人に依頼して、調整して、待つ」だった情報収集が、質問するだけ、数分で完了に変わります。この環境は、利用者のPCからインターネットへの接続とMCPクライアントの導入を行うだけで実現できます!…はい、それができれば苦労はしません…よね。 組織のセキュリティ、端末利用ルールなど、様々な理由でこれができない環境で業務をされている方が多数いることを、NECは理解しています。そこで、我々はこのチャット環境を閉域網から利用できるよう構成しました。さらに、リモートデスクトップやセキュアブラウザを提供するAWSサービスである「Amazon WorkSpaces Applications」を経由して接続できるようにしました。これにより業務端末とAI/MCP環境の分離を実現し、セキュアな環境での業務が必要な方でも利用できるようにしています。LGWANやGSS G-Net、その他の閉域網から接続することができます。

これによって、知りたいと思った時に、すぐに、自分で、環境情報を自分の言葉で調べることができるようになります。さらに、AWSクラウド運用に利用するSaaSやミドルウェア用のMCPを組み合わせることで、より効率的な運用が可能となります。
AIの活用に向けて
何を改善すると業務が効率化されるのか?
AIを業務に活用する際には、まず現在の業務フローを整理することをお勧めしています。そのうえで、どの作業を効率化・省力化すると効果的なのかを検討します。AIを使うと本当にいろいろなことができますが、業務に役立てるためには、業務の流れ・フローに即したAIの利用が定着への近道だと思います。PoC(実証実験)を脱し、現場で利用されるAIへの第一歩になると思います。そして、効率化された時間を是非システムや運用のよりよい検討のために使っていただきたいと思います。
進むべきか、立ち止まるべきか
現在のAI関連サービスの進化スピードは想像をはるかに超えています。「こんなことができたらよいのに…」と思っていたことが、しばらくすると実際にできるようになっていることが多いのではないでしょうか。今回講演した内容も、おそらく先々にはより簡易に実現できるようになるでしょう。では、できるようになるまで待つべきでしょうか? これはなかなか難しい問題です。コストパフォーマンスを考えれば、サービスが登場するのを待つという戦略も十分あり得ます。ただ、総合的な観点では、個人的には進むべき(試してみるべき)だと思っています。前述の通り、AIを業務で活用するには業務フローの整理・可視化が重要です。自分たちの業務のどこにAIが適用できるのか常に検討しておくこと、そして現在のAIでどこまでのことができるのか、現在地を把握しておくことは、方向を見失わないための重要なポイントだと思っています。
まとめ
今回の講演でお伝えしたかったことを整理すると、次の3点です。
- 運用の「定型業務」の手間を減らし、本当に必要な「非定型業務」に集中する
情報収集・アラート対応・改善活動の3領域で、生成AIによる効率化の実践例をご紹介しました - ガバメントクラウドでも生成AIは活用できる
3条件を満たすサービス選定が出発点です - 受け身から、問いかける運用へ
セキュアに分離されたAI/MCPとのチャットで、誰でもプロアクティブな運用が可能になります
AIを活用し、よりよいシステム運用への改善につなげていただきたいと思います!
さいごに
当日は多くの方に足を運んでいただき、講演後のブースでも活発なご質問・ご相談をいただきました。あらためて御礼申し上げます。


講演会場の様子
生成AIによる運用支援は、これからクラウド・ガバメントクラウドの現場に確実に広がっていくと考えています。一方で、ツールの導入自体が目的化してしまっては、本来の効果は得られません。大切なのは、現場の一人ひとりが自分たちの業務を見つめ直し、手を動かしながらAIの勘所をつかんでいくことだと考えています。
NECでは、ガバメントクラウドおよびクラウドに関するトータルサポートに加え、こうした生成AI活用に向けた知見の蓄積と社内外への展開にも力を入れています。クラウド検討や生成AI活用の良きパートナーとして、ぜひお気軽にご相談ください!
本コラム内容は公開日の時点の情報を基に記載しています。

執筆者紹介
堀田 佳宏(ほった よしひろ)
NEC
官公インフラDX事業部門
官公ソリューション統括部
上席プロフェッショナル
2026 Japan AWS Ambassadors
2026 Japan AWS Top Engineers(Services)
2026 Japan All AWS Certifications Engineers
学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。
