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『AWS Kiro開発による仕様駆動開発体験セミナー』開催レポート
こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのご支援をしている堀田です。
今回は、NECにおける生成AIへの先進的な取り組みの一環として、先日社内で実施した『AWS Kiroによる仕様駆動開発体験セミナー』の模様をレポートします。

はじめに
本セミナーでは、AWSが世界的に展開する高度な技術演習プラットフォーム「AWS GameDay」の仕組みを参考に、運営メンバーが独自のゲーム環境を手作りして実践するという新しい試みに挑戦しました。そのゲームでは、営業組織である官公ソリューション統括部と、SE組織であるパブリックシステム開発部門のメンバーが混合チームを組み、仮想の調達仕様書をベースに「住民向け申請システムの画面モックアップ」を作成します。ただ単に画面モックアップを作るのではなく、AI IDEツールである「AWS Kiro」(以降、Kiro)を用いて各チームで作成し、その出来栄えを競い合うという実践的な内容です。
ゲームを構成する2つの要素
生成AIで開発を加速させる次世代ツール「AWS Kiro」
Kiroは、2025年7月にAWSが発表したエージェント型の「AI IDE(人工知能を組み込んだ統合開発環境)」です。対話型で直感的にコーディングを進める「Vibe」モードと、仕様駆動開発を行う「Spec」モードの2つを備えています。特に後者の「Spec」モードでは、人間の提示した要件から設計、タスクへと段階的に仕様をAIが固めてから安全にコードを生成していくため、開発の不確実性を大幅に減らすことができます。仕様駆動開発というとエンジニア向けの少し堅苦しい印象を持たれがちですが、Kiroのアプリケーション画面は初心者にも分かりやすいUIになっています。また、オバケを模した親しみやすいキャラクターの効果も相まって、開発未経験の営業職メンバーでも最初からスムーズに使いこなせると確信し、今回はKiroを使ったセミナーとしました。
楽しみながら実践力を養う「AWS GameDay」
AWS GameDayは、チームベースの環境で、AWSソリューションを利用して現実世界の技術的問題を解決することを参加者に課題として提示する、ゲーム化された学習イベントです。従来のワークショップとは異なり、GameDayは自由で緩やかな形式で、参加者は固定概念にとらわれずに探索し、考えることができます。
AWS GameDayより抜粋
AWS GameDayでは、参加チームは「クエスト」と呼ばれる課題をこなすことでリアルタイムにポイントを獲得していきます。単に課題をこなすだけでなく、システム障害や予期せぬハプニングといった、現実の運用でも起こりうるトラブルが牙をむくため、現場さながらの迅速な対処能力が問われます。獲得したポイントや失点による順位変動がリアルタイムに得点表へ反映されるため、会場は常に心地よい緊張感に包まれます。実際に手を動かしながら楽しんで学べるこの仕組みは、クラウドの現場で即応できる実践力を養う上で極めて効果的なアプローチです。
なお、NECの官公庁領域対応部門には、AWS最大の技術カンファレンス「AWS re:Invent 2025」内で開催されたGameDayにて世界優勝を果たしたトップクラスの技術者が在籍しています。私たちが日頃から技術の研鑽を怠らず、最先端のクラウドスキルを追求し続けている証でもあります。
「AWS re:Invent 2025 GameDayにてNECメンバーが参加するチームが優勝!」
https://jpn.nec.com/government/solution04/contents14.html
開催レポート
AWSジャパン様による座学&ハンズオン
セミナーの冒頭では、未経験者や初心者のハードルを下げるため、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWSジャパン)様のご支援のもと、仕様駆動開発やKiroの基礎を学ぶハンズオンの時間を設けました。

営業とSEの「越境チーム」がもたらす化学反応
AWS GameDayは実践力を効果的に養うことができますが、シナリオはAWS社で用意されたものが提供されます。今回のセミナーでは、未経験者・初心者を対象にKiroで仕様駆動開発を学んでもらうこと、官庁の調達仕様書形式のお題に対応すること、技術職でなくとも取り組みやすい画面モックアップ作成をゴールにすること、を狙いとしました。もちろん、AWS GameDayにはそのようなシナリオは用意されていません。そこで、AWS GameDayに準じた形で、シナリオからルールまで自分たちで手作りすることにしました!

私たちが日々向き合っている官公庁や地方公共団体におけるシステム調達では、お客様が作成される調達仕様書がすべての出発点になります。仕様駆動開発において最も重要となるのは、実は高度なプログラミングスキルではなく、「何を作るべきかを言葉にする力」です。お客様の真の要望や仕様の意図を正確にくみ取る「営業の視点」と、それを技術的に実現可能な形に落とし込む「SEの視点」。この両者がひとつのゴールに向かって密に混ざり合うことで、仕様の解像度は劇的に向上します。生成AI時代の開発プロセスにおいては、このように職種の壁を越えた協調こそが最大の価値を生み出すと考え、今回は営業職とSE職をあえてブレンドした「1チーム4名、計9チーム」の体制を組みました。9つの混合チームで点数を競い合うゲーム形式としたことで、自然と議論が活発になり、チーム内のコミュニケーションも深まったと思います。

お題はリアルな「仮想・調達仕様書」
ゲームのゴールは、仮想の調達仕様書をもとに、画面モックアップを作成することに設定しました。お題は、運営側が作成した架空の業務である「災害時支援申請ポータルの画面設計等業務」です。各チームにはその仕様書を読み解きつつ、Kiroを使って要件を整理し、最終的に動く画面モックアップへと仕上げてもらいました。シナリオとして用意した仮想の調達仕様書は以下のようなものです。
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1. 調達案件の概要
1.1 調達件名
災害時支援申請ポータルの画面設計等業務(試作)
1.2 調達の背景
主管課においては、自然災害等の発生時に、住民が必要な支援制度に関する情報を確認し、円滑に申請を行うことができる環境の整備を検討している。近年の災害対応事例においては、避難所での情報伝達の困難、申請窓口の混雑、書類提出の遅延、申請者ごとに対象となる支援制度が異なることによる確認負担など、住民及び主管課双方に大きな業務負荷が発生していることが報告されている。このため、災害時支援申請ポータルの住民向け画面について、利用者視点を踏まえた画面設計及び試作を行うものである。
1.3 調達目的および期待する効果
本業務は、災害時支援申請ポータルの住民向け画面モックを作成し、申請導線の妥当性、分かりやすさ及び操作性を確認することを目的とする。モックを通じて以下の効果を期待する。
(以下略)
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この仮想の仕様書をインプットとして、仕様駆動開発ツールで画面ポータルを作成すると以下のような画面を作ることができます。

画面モックアップ制作過程の中では、AWS GameDay同様に様々な場面でポイント付与を行っていくことにしました。ポイント付与はAWS GameDayのように自動化したかったのですが…そこまではかなわず、人力でのポイント付与をおこないました。運営メンバーは会場を動き回りながら、参加者からの質問への回答やヒントの提供を行いました。

左から、
官公ソリューション統括部 和田 拓也
官公ソリューション統括部 栗原 大樹
第一官庁システム開発統括部 土屋 彬
官公ソリューション統括部 阿部 安倫
勝敗を分けたプレゼンテーション
最終ステージとして、完成した画面のこだわりを伝えるプレゼンテーションを実施しました。「AIに仕様を渡して開発するなら、誰が作っても同じシステムができるのではないか」という非常に鋭い質問が参加者から出されましたが、結果は見事なまでにチームごとの個性が現れました。画面のデザインはもちろん、どのような住民の方を想定して動線を設計したか、誤操作を防ぐためにどのようなフォロー機能を盛り込んだかなど、仕様書の行間にある「システムとしてあるべき親切さ」をいかに想像して作り込めるかに、メンバーそれぞれの経験と丁寧さが明確な差となって現れます。まさに、AI時代においても人間にしか真似できない優位性です。


各チームのプレゼンの様子
運営側も想定しないような工夫が随所にみられました
このプレゼン審査の採点には、NEC 官公ソリューション統括部の佐藤統括部長や第一官庁システム開発統括部の細井統括部長に加え、スペシャルゲストとしてAWSジャパン パブリックセクター技術統括本部 本部長の高田様にもご参加いただきました。熱のこもった審査の結果、プレゼンポイントによってそれまでの順位がガラリと入れ替わる大逆転劇が発生し、最後の決め手が「人間の熱意と工夫」であることを証明する素晴らしい締めくくりとなりました。



今回の独自のルールとして、「チームの全員が課題をクリアしなければポイントを付与しない」という縛りを設けました。誰一人として置き去りにしない環境を作った結果、すべてのチームがプレゼン直前の最終段階まで到達し、参加者全員が画面モックアップ作成という目標を達成しました。営業職のメンバーを含む開発未経験者たちが、AIという強力な相棒を得て、自らの手で動くシステムを作り上げたという手応えを得られたことは、非常に大きな収穫です。システム仕様という「言葉・表現」を通じて誰もが開発プロセスに深くコミットできるのは、これからのAI駆動開発ならではの大きなメリットです。
優勝メンバーコメント

生田 桃子(官公ソリューション統括部・営業)
AI駆動開発ツールは初めての体験でしたが、SEや開発職の方との合同チームで協力しながら、楽しく実践することができました。今回のワークでは、チーム全員がそれぞれコードを入力してモックアップを作成したため、実際に手を動かしながら理解を深めることができた点が非常に良かったと感じています。また、チームで優勝できたことも大変嬉しく、今後の業務にも活かしていきたいです。
中田 浩輔(官公ソリューション統括部・営業)
楽しみながらAIの便利さに触れられ、学ぶことができて非常によかったです!
田幡 光(第一官庁システム開発統括部・SE)
仕様駆動開発は、普段行っているバイブコーディングとかなり勝手が違い、生成AIでも高品質なソフトウェア開発ができることを実感しました。今回のセミナーの中では、"お客様目線での機能開発"ができたことが、優勝の要因だと思っています。素敵なイベントありがとうございました!
石黒 大樹(第一官庁システム開発統括部・SE)
AI駆動開発に興味がありセミナーに参加しましたが、調達仕様書をもとに営業&SE/RD(研究開発)の合同チームで課題に取り組むというスタイルがとても実践的で、今後のPJ活動にも活かせそうな大きな学びとなりました。チームが優勝できた要因としても、それぞれの立場から出た発想を柔軟に取り入れたことで、様々な視点から補完できる開発プロセスを踏めたことが大きいと考えています。
さいごに

生成AIによる開発支援はこれから様々な現場に確実に広がっていくと考えています。一方で、ツールの導入自体が目的化したり、ツールに任せきりにしたりしては、本来の効果は得られません。大切なのは、現場の一人ひとりが手を動かし、経験を活かし、情熱をもってAIを使いこなしていくことだと今回のセミナーを通じてあらためて感じました。
NECでは、変化の激しい生成AIやクラウドの領域において、ツールの導入自体を目的とするのではなく、今回のように現場の一人ひとりが主役となって知見を蓄積し、実践に活かす文化を大切にしています。この技術への飽くなき探求心と実践の積み重ねこそが、システム運用の高度化や、安全なシステム移行を可能にする原動力となっています。
ガバメントクラウドやクラウドに関するトータルサポートに加え、こうした生成AI活用に向けた知見の蓄積と社内外への展開にも力を入れています。クラウド検討や生成AI活用の良きパートナーとして、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者紹介
堀田 佳宏(ほった よしひろ)
NEC
官公インフラDX事業部門
官公ソリューション統括部
上席プロフェッショナル
2026 Japan AWS Ambassadors
2026 Japan AWS Top Engineers(Services)
2026 Japan All AWS Certifications Engineers
学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。

