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行政DXの社会実装に向けて
NECデジタル・ガバメントDay 2022開催日:2022年11月30日(水)
主催:NEC
Figma上の活発なコミュニケーションで生まれる効果
次に先人に学ぶという意味でパフォーマンスが高い組織の代表でGoogleを取り上げてみたいと思います。Googleなど組織として強い会社は、データ・エビデンスドリブンの行動原理やチームワークを中心とした採用基準を採用しており、組織のナレッジを循環させる仕組みも充実しています。そして、意思決定者と現場の距離が近い、これも重要なポイントになってきます。Googleの中で新規事業を始める際に「デザインスプリント」という手法を取ることが多いと聞いています。デザインスプリントというのは、不確実性の高い状況下においていかに早くプロトタイピングを進めていくかを突き詰めた手法です。デザインスプリントの重要な要素として、その戦略を実行する責任を負う人々をしっかりチームメンバーに含めておくことも大切です。1週間~2週間、ケースバイケースですが、意思決定者の予定もちゃんとロックして、チームの中に入れ、ユーザーの理解やプロトタイピングも一緒に体験しましょうということを言っています。
やはりGoogleのようなワールドクラスで優秀な人材を集めた組織であったとしても、ユーザーやプロダクトを考える現場と意思決定者の分断が起こっている状態でエスカレーションしていくというのが問題を生んでいるというような意識から出てきているのではないかと思っています。
さらに、そのベースとなるものが「心理的安全性」です。組織としての学習効率を高める一番の基盤はこの心理的安全性と言えるのではないかなと考えています。心理的安全性とは、無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、「このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味しています。これがあるからこそ、分からないことを素直に聞くことができたり、新しいアイデアの提案だったりがやりやすくなります。心理的安全性が高まると、コミュニケーションの量が増えて、情報が増えて、アイデアもたくさん出て、活用されるようになる好循環が生まれてきて、これは全て「学び」に対して有用と言えるのではないかと思います。ゼロの状態からいかにユーザーを理解していくのか、そのスピードを上げていくためにこういったことを考え続けていくことが必要です。Googleでさえ心理的安全性とデザインスプリントを用いて意思決定と制作を一体化させ、様々なアイデアが出るような素地を作っているということです。
最後のパートとなりますが、弊社が経験してきた事例から参考になるポイントをご紹介しようと思います。まず最も重要なポイント、ウィークリーではなくデイリーの打合せのセットがあります。私たちは遠隔密着型の組織を目指していますと申し上げましたが、その源泉となっているのはこれに寄与する部分が多いと思います。スケジュールの例をお出ししているのですが、一番上に定例ミーティングが入っています。15分でも30分でもいいです。ポイントとなるのは、顔を合わせる頻度になってきます。一週間に一度ミーティングしてそこでまとめて報告したほうが効率がいいよねという風に思いがちなのですが、デイリーの頻度を保っておくとコミュニケーションが非常に円滑化することを感じられるはずです。2日、3日空くと話しにくくなる、というようなこともあるかと思いますし、チームの全員が乗り越えていけるかというと、人によってコミュニケーション特性も違いますし、バラつく部分はあるのではないかと思います。毎日顔を合わせることが習慣になると、チーム内での情報量の標準を合わせるようなこともできますし、他の全ての行動を加速させるようなメリットが出てくると思います。ぜひ挑戦してみてください。
二つ目、本日のネタとしてはこちらが本題です。コラボレーションに適したツールの利用ということで、Figmaを始めとしたコミュニケーションツール、コラボレーションツールを使っていきましょうということで、こちらが私たちが普段使っているツールの一例となっています。特にAnywhereでは立ち上げ当初からFigmaを用いてデザインを行ってきました。
インターフェースのデザインファイルだけではなく、周辺の情報もなるべくFigma上に置いておくと、チームメンバー皆がそこを参照できるようになります。情報収集や内容の把握なども私たちはFigma上で行いますし、フィードバックも付箋を書く、コメントの機能を使うなどFigmaの中で完結するように活発なコミュニケーションを実現しています。こうした進捗を先ほどお話したデイリーミーティングで見直しながら進めていくイメージです。
こちらは私たちがイベントサイトのデザインをしている実際のFigmaの画面ですが、重要なポイントはクライアントにもこのデザインファイルを見せるようにしているということです。なるべくビューワー権限でもいいからログイン出来るようにしています。そうするとプロジェクト内のブラックボックスを減らしていくことができます。
先程松本さんのお話にもありましたが、伝言ゲームが行われるプロジェクトはやはりうまくいくことはほとんどないかなと実感しています。なおかつ変化が激しい時代と申しました。当初の前提やプランナーが言うことはどんどん変わることは往々にしてあり得ます。そのような状況の中で、Figmaを用いてチームでデザインすることでより強くて豊かな表現を目指していくことができるようになると思います。繰り返し申しますが、ポイントは作り切りではなく、改善を前提とした計画を目指していただきたいと考えています。中々難しいことだとは認識しているのですが、一度で作りきるということは現代においては幻想であるという前提でプロジェクトの計画を立てていただけるとそれ以降の活動に余地が生まれるのではないかなと考えています。
井手 斎藤さんありがとうございました。プロジェクトの密着度という話から始まり、デザインやデザイナーに対する理解を関係者で上げたところで、どんなマインドセットでチームを作るか、という点にも触れていただきながら最終的にFigma活用の具体的な取り組みをお話しいただきました。非常に示唆に富んだお話をありがとうございました。
NECにおけるデザインという切り口
井手 それではここで、NECの官公庁領域での実践事例について、簡単にご紹介させていただきたいと思います。
NECでは官公庁領域でのDXの取り組みとして、デジタルの力で一人ひとりが主人公になれる社会を目指し、これまで培ってきた実績に基づいて新たなチャレンジも行っています。さらにその中で、デザインの活用にも力を入れていまして、特に2020年からデザイン経営を急速に推進しています。今年度からは経営企画部門の配下に、デザイン部門を位置づけ、同時にブランドとコミュニケーションの部門も建て付け、更にこれを統括する役員を設置し取り組んでいます。
そのような状況の中で、デザインの活用領域を3つのフレームで整理しています。一つは狭義のデザインで、体験価値を向上する製品サービスのデザインに取り組んでいます。二つ目は広義のデザイン、事業としてのビジョンを構築し体験価値に基づいてサービスを構築するという取り組みを推進しています。さらに、三つ目の経営のデザインでは、会社の姿勢の打ち出しにデザインのチカラを活用しています。
以上のような取り組みにより、単にタッチポイントの色や形だけではなく、サービス構築にもデザインのチカラを活用し、様々なプロジェクトを通じて社会やお客様に価値提供させていただいております。
こうした事例も含めて、改めてNECとして行政領域において、DXを推進していく上で大切にしている3つの視点がございます。
一つ目がよりよいUI/UXの創出です。二つ目がより良いサービスの追求、三つ目が将来の社会を構築する営みです。NECは、この3つの視点を大切にして取り組んでいます。三つ目について補足しますと、国民の皆様を中心に、官庁・自治体の皆様、今日ご登壇いただいている松本さん、齋藤さんのような専門知識をお持ちの企業・団体の方々と、私たちNECのエンジニアとデザイナー、シンクタンク、デンマークで展開している海外拠点などが様々な領域で蓄積した知見や経験を、常に共有しながら将来社会の構築に取り組んで参りたいと思っています。また、そのような対話の場を作り提供することも弊社として取り組んでいるところです。
NECとしての取り組みをご紹介させていただきました。改めて本日は、デザインコラボレーションツールのFigmaを様々な角度から取り上げて、皆さまと考えてまいりました。では最後に松本さん、改めて官公庁領域でFigmaを今後どのように活用していただきたいかといった点に対して改めてご意見あればいただきたいと思います。
松本 はい、ぜひFigmaのコラボレーション機能を活用していただきたいです。それによってコミュケーションのハードルがぐんと下がり、先ほど齋藤さんからお話がありました心理的安全性が高くなり、声が大きい人だけでなくみんなの発言が活発になります。そこから生まれるイノベーションを体感いただきたいです。またFigmaはFigJamというオンラインホワイトボードツールも提供しておりますので、これも皆さまが活用いただけるツールです。ぜひお試しください。
井手 ありがとうございます。では最後になりますが斎藤さん、これまで官公庁領域で実践されている中で、改めてこのセッションをご覧のみなさまに対して、具体的なアドバイスなど頂戴できればと思います。
齋藤 まずはFigma上に議論の場所を作っていただくことが大切かなと思います。本日私がお話してきたような内容は頭で理解するのが中々難しいところがありますが、体験してみると早いということも事実です。まずは体験するということを意識していただきたいと思います。Figmaのようなツールを使うことは言語を変えるくらいのインパクトがありますが、そういった環境要因をいかに活用していくか、それをきっかけにチームを変えていくことにトライしてみてはいかがでしょうか。
井手 ありがとうございます。まだまだたっぷりお話を伺いたいところですが、残念ながらお時間来てしまいました。改めて松本さん、斎藤さん、本日はありがとうございました。