行政DXの社会実装に向けて

NECデジタル・ガバメントDay

【パネルディスカッション】
『徹底討論!霞が関で職員がワクワク働くための4提言~行政のミライのために~』

【登壇者】

  • NECガバメント・クラウド推進本部マネージャ 諸藤洋明 氏(モデレーター)
  • 株式会社千正組 千正康裕 氏
  • プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会) 栫井誠一郎 氏、北川由佳 氏

職員がワクワク働くための働き方改革とは

諸藤 『徹底討論!霞が関で職員がワクワク働くための4提言~行政のミライのために~』のモデレーターを務める諸藤です。今回は霞が関の働き方改革に精力的に取り組み、『ブラック霞が関』や『官邸は今日も間違える』といった書籍も出されている元厚労官僚の千正康裕さんと、2003年秋に霞が関の構造改革を目指す若手職員によって結成された「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」副代表のお二方(栫井誠一郎さんと北川由佳さん)とともに、働き方改革だけではなく、行政の在り方自体がどう変わっていくのか、ディスカッションしていきたいと思います。まずは「プロジェクトK」についてご説明願います。

栫井 「プロジェクトK」は、2003年の設立以来、「ビジョン・ミッション・バリュー」を掲げて、自分たち、ひいては日本をハッピーにしていこうと、さまざまな活動を推進しております。例えば、官僚がメディアで自由に発言するのは難しいことですが、あえてメンバーが気持ちを代弁することで世論を変えて行ければと思っています。
北川 国土交通省で働き始めて12年目になりますが、私が「プロジェクトK」に入ったのは「霞が関で働く楽しさを共有したい、働く人が幸せでなければ良い政策が作れない」という問題意識を持ったことです。私が考える働く楽しさは「白紙で物事を考えられる。自分の意見を職場で言うことができる。行ったことに対して適切な評価を受けられる」ことだと思っています。

プロジェクトK
(新しい霞ヶ関を創る若手の会)
栫井誠一郎 氏

諸藤 具体的に官僚の方はどのような瞬間に楽しさを感じるのでしょうか。
北川 やはり目の前に存在している困り事を何らかの手段で解決する方法を見つけた時ですね。
諸藤 栫井さんが霞が関を外から見て、ここ数年間で大きく変わったと感じることは。
栫井 私は官僚6年、起業家10年の経験から官民の橋渡しにも取り組んでいますが、世代での価値観は相当変わってきた気がします。主体性を尊重しオープンイノベーション的にやっていきたいという若い人たちが出てきました。組織や上司がそういった若い人たちの力を活用して霞が関を変えていけば、より面白いことができるし、良くなるのではないでしょうか。

プロジェクトK
(新しい霞ヶ関を創る若手の会)
北川由佳 氏

諸藤 千正さんからも霞が関の働き方改革についてお話し願えますか。
千正 私は2001年から18年半、厚労省で働いてきました。最近は、過酷な労働環境の中で、体調を崩す職員や離職する若手も増えています。国家公務員志望者も減っています。このままでは霞が関が国民の期待にこたえられなくなるのではないかと強い危機感を持っています。官僚のためではなく、社会のために、霞が関の仕事のやり方や働き方、変えなければいけません。無駄な仕事を減らし、必要な仕事もシステムに任せたり外注したりすることにより、官僚でないとできない政策をつくる仕事に時間を使えるようにすることが大事です。また、霞が関の努力に加えて、国会改革も必要です。例えば前日の夜に質問通告があったとします。そこから答弁作りを始めたら深夜残業決定です。私は公務員が元気で働く、やりがいのある職場づくりによって、政策をよくすることを応援してています。

株式会社千正組
千正康裕 氏

デジタルツールの活用で行政の未来を拓く

行政職員が能力を発揮して有効な施策を打ち出しよりよい未来をつくる

諸藤 行政職員の働き方は行政の未来に繋がると考え、実はNECも行政職員や関係者の方々にヒアリングをさせていただきました。その中から行政職員と行政機関の未来の姿として導き出した12項目を図にしました。SDGs(持続可能な開発目標)の17項目のように「これを目指して何ができるのだろうか」と皆さんと考えていきたいです。「霞が関のしごとを3倍楽に」「霞が関のしごとを3倍速に」をスローガンとして業務にデジタルツールを使う前提で抜本的な見直しが大事だと考えています。各業界では、サービスとしてのソフトウェア「SaaS」がデジタル化を後押ししています。「こんなことが行政として必要なんだ」「企業側もこんなテクノロジーがあるから簡単にできますよ」と意見を出し合えれば、「産官学+民」の想いと力をデジタルでつなぐGovtechに関わる関係者のエコシステムが実現できると思っております。具体的には業務負担の軽減、政策の立案でのサポート、そして国民と行政職員の繋がりです。
千正 鍵はダイバーシティー(多様性)ではないでしょうか。役所の人にとってみると外の知恵を借りなければいけないことがすごく増えており、多様な人が参画できるような関わり方があれば、さまざまな人の知恵が使えると思います。
栫井 ただ、外の知恵を持っている人が来ても結局その人に権限を与えないという問題もあります。「それを国民に説明できるの?」「幹部が恥をかくじゃないか」と言って、リスクがあるとその時点で止められてしまうからです。「まず、やってみよう」と言った挑戦者を勇者として奨励するような文化も同時に作らないといけないですね。
北川 私の経験では、まだ若い組織では3年目、4年目の若手でも権限を与えられ、いろいろやってみろということがありました。そういう経験があると、挑戦していこうという意欲を持てると思います。
諸藤 デジタルの活用とともに挑戦を奨励するような文化も必要ということですね。今後も行政の未来を一緒に考えていければと思います。ありがとうございました。

NECガバメント・クラウド
推進本部マネージャ
諸藤洋明 氏(モデレーター)

2022年3月 iJAMP企画特集より転載

前へ

  • 1
  • 2