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NECグループ11万人で挑むAI変革チャレンジ【HR変革】
人事部門の壁を打ち破るAI活用のリアル
人材配置やキャリア相談、評価制度、問い合わせ対応など、業務範囲が広がる人事領域。ジョブ型人事制度への移行を見据える中で、現場では従来のやり方だけでは対応しきれない課題も見え始めています。本ページでは、AIを活用しながら、人材配置の考え方やキャリア支援のあり方、日常業務の進め方を見直してきた取り組みをご紹介します。
取り組みの概要を動画で紹介
キャリア相談をAIでより円滑に、もっと気軽に
戦略人事にAIをフル活用せよ
問い合わせ効率化AIでビジネスに力を
HR変革チャレンジ❶ AIキャリアトーク
ジョブ型時代におけるキャリア相談の新基軸
―AIがキャリアの壁打ち相手になる未来へ―

人事部門 AIプロジェクト推進担当
磯口 実史 Mifumi Isoguchi
人事部門 AIプロジェクト推進担当
伊藤 由紀子 Yukiko Ito
経営システム部門 AI開発担当
倉地 崇裕 Takahiro Kurachi
ジョブ型人材マネジメントへの移行にともない、需要が増えつつあるキャリア面談。人的リソースの限界をAI活用で解決しようと試みた本プロジェクトの取り組み内容について、AI変革プロジェクト推進担当の磯口、伊藤、経営システム部門AI開発担当の倉地の3名に話を聞きました。
ジョブ型人材マネジメント時代に、
社員一人ひとりのキャリア自律を支える「AIキャリアトーク」
Q.AI導入前の人事面談に関する課題感についてお聞かせください。

伊藤:NECは2024年度よりジョブ型人材マネジメントを導入し、社員一人ひとりにキャリアの自律が求められる新たな時代へと移行しています。これに伴い、キャリア相談の件数は年間で約550件にのぼり、年々増加傾向にあります。しかし、対応可能なキャリアアドバイザーの数には限りがあり、社員が相談しづらい心理的なハードルも存在している状況でした。
磯口:社員のなかには、「他人にプライベートのことを話すのが恥ずかしい」「相談して弱い人間だと思われたくない」といった気持ちの方もいます。そういった方々でも、24時間365日、いつでも気兼ねなく相談できる相手を作れないか。こうした背景を踏まえ、AI変革のプロジェクトとして取り組んだのが、「AIキャリアトーク」です。このシステムの目的は、社員が気軽にキャリアについて相談できる環境を整えることで、キャリア自律を支援すること。人間のキャリアアドバイザーを何人も作るイメージをゴールとして設定し、プロジェクトを進めていきました。
AIがキャリアの壁打ち相手になる未来へ。
自律を促し、自分らしく働くための伴走者を目指す。
Q.AI導入において苦労したことや、社内浸透の際に工夫したポイントについてお聞かせください。

倉地:初期モデルは既存AIの模倣にとどまり、満足度は約6割と低迷しました。理由としては、多様なユーザーのニーズに応えきれなかったためです。この課題を解決するため、キャリアアドバイザーの面談手法や理論をAIに学習させました。そこから得られた知見を基に、「情報提供モード」「傾聴共感モード」「アクションプランモード」といった複数の対応モードを実装。利用者のニーズに応じて切り替え可能にすることで、柔軟かつ的確な対応を実現し、ユーザーの満足度も大幅に向上しました。
磯口:しかし、社内ホームページや会議、各種HR施策を通じて露出を増やす試みは行ったものの、認知はまだ十分とは言えない状況です。最近では社内浸透のため、ランチ会やタッチ&トライなどの草の根活動に注力しています。一方で、フィードバックアンケートから若手からシニアまで、利用者層それぞれの悩みがAIキャリアトークを通じて明確になってきたことは想定していなかった成果ですし、1on1面談の前後に壁打ちとして日常的に活用されるなど、使い方の幅が出てきたのも興味深いです。
伊藤:「キャリア自律を目指しましょう」と伝えても、受け取った方々は「何から始めればいいのか」と迷うことが多いと思います。そういう時に、「こういう学びがありますよ」と提案し、従業員を勇気づけ、モチベーションを高めるサポートの部分までAIキャリアトークが担えたらいいなと考えています。社員の皆さんが、自律的に目的を持って、自分らしく働くためのサポート手段の一つとして、AIは十分活用できると考えています。
HR変革チャレンジ❷ HRBPサポートAI
人事の仕事がAIでもっと面白くなる!
―AI活用でビジネスへ貢献する人事へ―

人事部門 AIプロジェクト推進担当
橋本 祐喜 Yuki Hashimoto
人事部門 AIプロジェクト推進担当
菅崎 理功 Riku Kanzaki
HRBP部門では人事データの利活用が進んでおらず、人材配置の最適化や人材発掘、スキルアップの面でも課題がある状況です。そんな中で、社内の人事データをAIで活用可能な状態にし、より公平かつ多様な人材発掘や人材育成を通じたビシネスへの貢献を目指している、菅崎と橋本の二人に話を聞きました。
膨大な人材データとどう向き合い、どう活用するか。
人材最適配置やパフォーマンスマネジメント等の課題にAIで立ち向かう。
Q.AI導入前のHRBP部門の課題感についてお聞かせください。

菅崎:これまでNEC社内には膨大な人事データが蓄積されてきましたが、その多くは記述式の長文テキストをはじめとする非構造化データ。数万人分もの膨大な情報を扱うのは極めて困難であり、有効な活用には至っていませんでした。BIツールが整備され、HRダッシュボードで全社規模の見える化が進んではいたものの、ミクロなデータ管理はExcelやAccessといったツールに依存していたため、一部の担当者に運用が属人化している状況でした。さらに、HRBPが直面する課題は部門ごとに異なります。若手の離職防止が急務な組織もあれば、特定職種の担い手不足や人事評価プロセスに悩む組織もあり、その内容は多岐にわたります。こうした現場の困りごとにAIを導入すれば、誰もが容易に必要な情報を取得できる環境が整い、人材の発掘や評価傾向の分析、育成プランの提案といったタレントマネジメントへの幅広い活用が可能になるはず。そんな期待値を込めて、本プロジェクトを始動させました。
橋本:私自身もHRBPとして、日常的に現場の人事課題に直面してきました。従来の運用では、担当者個々の知見や経験に依存する場面が多く、全社的な人材の可視化や適材の発掘、部門間での最適配置を迅速に実現することに強い課題を感じていました。その解消に向けてAIを活用することで、ビジネスのバリューチェーンを整理した人材ポートフォリオの構築や、客観的で精度の高いタレントマネジメントを実現できる可能性が見えてきました。
AI活用により、人事が本来注力すべき部分にフォーカス。
「人事という仕事は面白い」という気づきが、変革をドライブさせる。
Q.AI導入において苦労したことや、社内浸透の際に工夫したポイントについてお聞かせください。
菅崎:AI開発時と社内浸透時の壁は大きく2つありました。1つ目は、膨大すぎるデータの中から、いかに必要なものだけを選別し、処理するかという点です。弊社の技術と開発部門との連携で対応し、どのデータが本当に必要なのかを取捨選択しながらなんとか解決することができました。当初は本当にうまくいくのかどうか不安でした。2つ目は、人事担当者がAIを使えるかどうかです。橋本さんのようなアーリーアダプター(新技術をいち早く業務に取り入れる層)もいましたが、全員が利用しているわけではなく、信用面などから利用率が伸び悩んでいる点が今も課題ではあります。解決策として最も重視したのは1対1のコミュニケーションです。説明会でAIを紹介しても多くの人は使おうとしませんが、関心を持った方とは個別に話し、その数を徐々に増やしました。今では、毎日利用しているようなヘビーユーザーが20名程に増え、ライトユーザーを含めるとほぼ全員が利用している状態になりました。こうした熱量の高まりを受けて開催した説明会には、9割以上の方に参加いただき当日はハンズオン形式で実際に使っていただいたほか、AIへの向き合い方についても丁寧に解説し、大変好評を得ました。
Q.AI活用におけるHRBP部門の今後のビジョンについてお聞かせください。

橋本:AIの活用は部門や業務への理解を深める一助となり、経営層との対話も極めて円滑に進むようになってきています。また、キャリア採用者にとっても、AIが業務理解を促進する強力なエンジンとして機能し出してきました。今回のプロジェクトを通じ、キャリア採用入社の私自身、もはやAIなしでは仕事が立ち行かないほどその価値を実感しています(笑)。さらに、AIの導入によって私自身が「人材発掘」や「最適な配置」といった人事が本来注力すべき核心的な業務に専念できるようになったことで、人事という仕事の面白さが大きく底上げされたように思います。
菅崎:AI活用のベースとして今後目指していきたいのは、社員一人ひとりに最適化したパーソナライズHR制度や育成施策の実現です。まずはクライアントゼロとして自社での試行錯誤を積み重ねることで組織のレベルアップを図り、将来的な外販・他社展開を見据えた強固な基盤を築いていきたいと考えています。
HR変革チャレンジ❸ 問い合わせ効率化AI
「問い合わせ6万件」から「問い合わせ0件」への挑戦
―人事部門に貯まったFAQとナレッジをAIで形式知化する―

人事部門 AIプロジェクト推進担当
中西 理絵 Rie Nakanishi
経営システム部門 AI開発担当
倉地 崇裕 Takahiro Kurachi
人事部門には日々多様な問い合わせが寄せられており、FAQやナレッジの体系化が十分に進んでいない状況です。そんな人事サポート部門の現実的な課題に対し、AIを活用してどのように解決したのかについて、人事業務改革をリードし、問い合わせ対応のAI化プロジェクトを担当した中西と、現場のニーズを受けてAIの全体設計やプロンプト作成・試作を行った倉地の二人に話を聞きました。
年間6万件のデータを高精度FAQへ昇華させる、
人事発「問い合わせ効率化AI」の挑戦
Q.AI導入前の人事部門における課題感についてお聞かせください。

中西:人事部門では、従業員から寄せられる年間6万件もの膨大な問い合わせへの対応が、長年の課題となっていました。これまでもマニュアルや社内サイトの見直しなど、地道な改善活動を通じて問い合わせの削減に取り組んできましたが、ナレッジの属人化や情報の分散・複雑化により、その効果には限界がありました。こうした中、AIの進化を背景に、従来の延長線上にはない抜本的な改革によって「問い合わせそのものを減らせないか」という問題意識が芽生え、「問い合わせ効率化AI」プロジェクトが始動しました。
倉地:本プロジェクトは、将来的な全社展開を視野に入れた拡張性の高いAI基盤の構築を目指しており、そのファーストフェーズとして人事領域での検証を開始しました。まずはスモールスタートとして、年間6万件の問い合わせ履歴と対応実績をソースに、AIを活用した「FAQナレッジ」の体系化に着手しています。散逸していた過去のデータを構造化し、高精度なナレッジベースへと昇華させる。このプロセスを通じてモデルの有用性を証明し、他部署への段階的な横展開へとつなげていく計画です。
AI活用で「問い合わせゼロ」の未来へ。
本番データ投入と現場の知恵がAIの精度を向上へ導く。
Q.AI導入において苦労したことや、社内浸透における工夫ポイントについてお聞かせください。

倉地:開発初期、AIの回答精度はわずか20~30%。当初はダミーデータに頼らざるを得ず、現場の工数制約も相まって、プロジェクトは試行錯誤の連続でした。転機となったのは、「生きたデータ」の投入です。人事担当者が、年間6万件に及ぶ実回答からピックアップしたデータを「良質」と「不適合」に一つひとつ丁寧に選別。この地道なフィードバックの積み重ねにより、精度は現在5~6割にまで向上し、実用レベルへと進化を遂げました。プロジェクト始動から約4ヶ月。現在は、特性の異なる7種類のAIを稼働。単一の機能に留まらず、複数の角度から問い合わせ対応をバックアップする多角的な支援体制を実現しています。
Q.AI活用における今後のビジョンについてお聞かせください。
中西:本プロジェクトの原動力となったのは、想像を超える開発スピードでした。「こんなことはできないか」という抽象的なオーダーに対しても、倉地さんは「まずは試してみましょう」と即座に試作を提示してくれました。この圧倒的なレスポンスがあったからこそ、私たちはここまでたどり着くことができたのだと感じています。AIは決して「魔法」ではありません。技術の進化は著しいものの、現時点では導入するだけで全てが完結するものではないことを実感しました。だからこそ、最初から完璧を求めて作り込むのではなく、運用を通じて改善を重ね、現場で育てていく「未完成の知」として捉えています。人事部門が日々のナレッジ更新やメンテナンスを継続する。そのコミットメントこそが、AIの精度を磨き、組織の共有知へと昇華させていくのだと考えています。私たちが目指す究極のゴールは、「問い合わせをしなくても済む世界」の実現です。人事の役割を「対応」から「創造」へとシフトさせ、創出した余力を従業員サービスの向上へと充てていく。手続きに伴う迷いや手戻りを減らすことは、働きやすさの向上にもつながります。こうした取り組みを通じて、効率化と価値創造を両立し、組織全体のエンゲージメント向上に寄与していくこと。それこそが、本プロジェクトの目指す姿です。
- ※本資料は2026年3月時点の情報に基づいて作成しています。
- ※本資料に記載されている内容は、取材時点での情報に基づいており、将来の成果や効果を保証するものではありません。
- ※所属・担当は取材当時のものです。
