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プリント基板ノイズ対策セミナー 2022年2月

講演への質問と回答

2022年2月24日開催「プリント基板ノイズ対策セミナー 2022年2月」でいただいたご質問と、講師からの回答を掲載いたします。

  • セミナー講演資料(テキスト)は、2月24日開催「プリント基板ノイズ対策セミナー」にお申込いただき、セミナー後アンケートに回答していただいた方に配付しております。

NECソリューションイノベータ株式会社 矢口への質問と回答

対象の講演

(13:30 ~ 14:40)
装置設計段階でのEMI対策とESD電流の振舞い

        NECソリューションイノベータ株式会社   矢口 貴宏
       

Q1ガンを使った際、端の方から電流が流れやすくなるのはなぜでしょうか。
A1まだ確実な理由は分かっていませんが、エレクトロニクス実装学会・低ノイズ研究会の中でのディスカッションを記載します。ESDの第一波は500MHzを中心とした周波数成分を持ちます。そのため電流の自己反発等が発生し、離れた経路を通り、その結果プリント基板の端を通るのではないかと考えています。
Q2ESDガンによる信号線への影響は示されたグラフから約10ns程度で無くなるようですが、それほどの短時間で不具合を起こすほどの影響になるのでしょうか?例えば10MHzパルスで1パルスの時間は100nsですが?
A2第一波の瞬間による誤動作については10MHz信号では問題ないかもしれません。しかし電源・GND間のESDによる電圧変動のアニメーションをお見せした通り、ESD第一波により電源・GND間に電圧変動があちこちに発生し、さらに瞬間ではなくある程度の時間維持します(池に石を落とした時、の波があちらこちらへ移動し続けるイメージ)。これが誤動作の一因になると思われます。それ以外にもGND自体にコモンモードノイズがあちらこちらへ移動し続けることもありうるため、結果的に信号・GND間ノイズが、第一波より後でも残り続けることが誤動作の一因になると思われます。
Q3基板FGとシャシの接続ポイントは1点と4点の場合では、EMI・ESD的にはどのような違いがありますか?
基本的にはより多くの点で接続しておいた方がよいのでしょうか?
A3EMI的に見た1点接続は逆F型アンテナというアンテナ構造に近くなるため、放射ノイズ増大のリスクが高まります。
次にESD的に見た1点接続はプリント基板FGとシャーシの接続が弱くなるため、例えば基板側にESDノイズを印加した場合にESD電流がシャーシに逃げづらくなります。また基板SGとシャーシ間での共振状態(逆F型アンテナと同様の原理)が出来上がるため、誤動作のリスクも高まると思われます。その点で多点での接続が望ましいと考えます。
Q4基板の端を通るノイズの幅には何か法則性があるのでしょうか?
A4エレクトロニクス実装学会・低ノイズ研でのディスカッションでは、シミュレーションで確認すると3mm~5mm以上の幅に集中するようです。
Q5電源/GNDの共振する周波数は基板の形状によるものでしょうか?
A5基板の形状によることが多いですが、正確には基板内の電源ベタとGNDベタのAND形状(上下で対抗している形状)に主に依存します。このAND形状がパッチアンテナの構造になるためです。
Q6電源層は最近ベタではなく、パターンで引くことがあると他社さんから聞くのですが、ノイズの観点でベタとパターンではどちらが効果的でしょうか。
A6EMIの観点では電源配線の方がよいと考えます。ただしPI(パワーインテグリティ)も考慮する必要がある場合、ある程度の電源ベタが必要なケースがあります。
ESDの観点でも、電源・GND間共振による誤動作を防ぐ点では電源配線の方がよいと思います。
Q7ESDとスリットの結果なのですが、シミュレーションの結果でしょうか?実測の結果でしょうか?
実測の場合、どのように測定されたでしょうか?
A7スリット有り・無しの2枚の基板の比較は実測です。測定はESD可視化システムを利用しました。
プリント基板の構造ですが、USBコネクタの金属部は、スリット有りの場合プリント基板のFGに接続し、スリット無しの場合プリント基板のSGに接続しています。
ESDガンをUSBコネクタの金属部にあてESDノイズを印加します。その時に磁界プローブでプリント基板の数mm上方で磁界をオシロスコープで測定します。この磁界から磁界プローブに違い層のプリント基板のFG/SGを流れる電流を観測できます。この測定を基板上の5mm×5mmメッシュで行い、最後にアニメーション化(時間による電流の動き)しました。
Q8高周波が流れているパターン直下のGND層がスリットによりリターンパスが切れた場合、電源層がリターンパスになることが理解できません。
高い電位の電源層がどうやってリターンパスになるのでしょうか?
A8直観的な説明ですが、信号線が最も近いGNDベタや電源ベタに対してクロストークを起こすイメージです。このクロストークで揺らされたことにより発生する経路がリターンパスになります。そのため電位の高さは関係なく、物理的に近いことが支配要素になります。
信号線直下のGND層にスリットが存在し、そのスリットの下に電源層がある場合には、信号線から電源層が直接見えるため電源層にクロストーク結合し、その部分だけ電源層の電位が高周波で揺れます。もし、スリットが小さければ電源層の揺れはそれほど大きくなく、GND層のスリットの縁をリターン電流が流れるため、電源層はリターンパスとしてはほとんど機能しません。しかしスリットが大きい(数cm)になると、GND層の縁よりも電源層へのクロストークが大きくなり、結果的に電源層にリターンパスが発生します。
補足ですが、この状態ではGND層のリターンパスと電源層のリターンパスがつながっていないためリターンパス不連続となり、GND層と電源層にコモンモード電流が発生し最終的に放射ノイズを大きくする要因になります。
Q9ESD対策として3端子コンデンサを低ESTコンデンサとして4隅に置く対策がありました。
これはEMI対策としても有効なのでしょうか?
A9はい、有効です。
EMI的には、コンデンサのESL(寄生インダクタンス)はコンデンサの性能悪化になります。低ESLはコンデンサとしての機能を高めるためEMI対策として効果を高めることができます。
Q10ESD対策として、FGに必要な太さはどの程度になるのでしょうか?パターンやスルーホールがESDによってダメージを受けることはあるのでしょうか?
また、2層基板と4層基板では、EMI・ESDに対してどちらが有利でしょうか?
A10FGの太さ(幅)はそこに流れる電流で決まります。電流がESDのみであればそれほど太い必要はありません。(正確には評価していないので具体的な数値は分かりませんが、ESD電圧が十数kV程度であればFG幅は数mm程度以上あれば十分ではないかと思います)
2層・4層ですが、あくまで一般論としては4層の方がEMI/ESD的に有利だと思います。4層はGNDベタを大きく取りやすいためGNDの安定性が高く、これがEMI/ESD的にノイズ低減になります。
Q11FGがP板上にあるとノイズを増やすのはアンテナになりやすい?というお話ありましたが、それは何故ですか?
FGとSGを一体化すると下がるとのことですが何故そうなるのでしょうか?
A11FGとSGが横に並んで存在すると2導体による共振器が出来上がります。あくまでイメージですが音叉のようなものです。これがアンテナ構造となります。
FG・SG一体化は、これもイメージですが音叉の2柱の間に金属を埋めた形と同じになります。2導体のよる共振がなくなるので、アンテナとして機能しづらくなります。
Q12基板端近くに放射ノイズ対策としてVIAを入れているが、狭い間隔で打つのはあまりよくない?
A12これはまだよくわかっていません。
基板端での狭い間隔のヴィアは、基板端でのGNDインピーダンスを下げます。これによって基板端までコモンモード電流が流れやすくなり、結果的に放射ノイズが大きくなるかもしれないという検証結果があります。
しかし原因がヴィアの数なのかはまだ定かではなく、さらに検証が必要だと考えています。
Q13ESD GunだけでなくEFTBやインパルスでもできますか?
A13ノイズは直接印加が必要なのでEFTBはできません。
また、インパルス評価は、信号等に直接インパルスを印加できれば測定は可能かもしれませんが、これまで評価したことなないため現状では保証できません。
もしご興味があれば共同検証等も検討いたしますのでお声がけください。

NECソリューションイノベータ DEMITASNXチームへの質問と回答

対象の講演

(14:40 ~ 15:10)
最新版DEMITASNXを用いたノイズ対策事例

        NECソリューションイノベータ株式会社 DEMITASNX開発チーム

Q1ESDチェックでスリット跨ぎエラーでチェックすべき信号は全てに対してチェックした方が良いのでしょうか?
A1基本的には全ての信号になりますが、特に以下のネットはチェックを推奨します。
・クロック、およびリセットなど制御系の信号
・低電圧駆動の信号
Q2コンデンサの動的モデルに対応しますか?
A2解析(プレーン共振解析・PI解析)で用いるコンデンサモデルは、動的モデル(DCバイアスモデル)に対応していません。従来からあるSPICEモデルのみです。
Q3ターゲットインピーダンスが周波数成分で変わっていたのですが、ターゲットインピーダンスはツール内で周波数成分での計算は行われますか。
A3はい。DEMITASNXは、周波数毎にターゲットインピーダンスを計算することもできます。またICベンダー様から入手したターゲットインピーダンスを設定することも可能です。
Q4部品の特性は自分で設定できるのですか?例えば、インダクタの並列C、Rなど汎用品でないものも使用しているため。
A4解析(プレーン共振解析・PI解析)で用いる解析モデルは、編集が可能ですので、部品の特性を自分で設定することができます。また部品ベンダー様から入手したSPICEモデルも設定できます。
Q5ターゲットインピーダンスの周波数範囲はどう決めるのが妥当でしょうか?また、電源の種類(コア、I/O)によっても変わるでしょうか?
A5電源の種類やICの動作周波数、その他に回路の動作タイミング(同時動作など)にも依存しますので、IC毎に周波数範囲は異なります。最近は、ICベンダー様からターゲットインピーダンスの提供が増えていますので、ICベンダー様にご確認ください。
Q6オンラインサービスについて詳細を教えてください。
A6
DEMITASNXのオンラインサービスは、DEMITASNXのインストールや操作することなくDEMITASNXの結果を入手できるサービスです。
サービス内容は下記2種類です。

① EMIチェックサービス
サービス概要
・主要4チェック※(人工知能AI機能付き)のチェックサービス
 ※ 1.基板端、2.リターンパス不連続、3.GVまたぎ、4.デカップリングキャパシタチェック
・機能制限による低価格提供
・CADデータの準備だけでEMIチェック結果レポートを入手

② 電源/グランド プレーン共振解析サービス
サービス概要
・プレーン共振の解析サービス
・基板内の電源を解析、解析結果レポートを入手
・キャパシタ配置など具体的な対応策をご提案

現在、株式会社ニソール様とQuadcept株式会社様から提供しており、詳しい情報は下記HPをご確認ください。

株式会社ニソール:  https://www.cadlus.com/demitasnx/online.html

Quadcept株式会社:  https://www.quadcept.com/ja/service/demitasnx/

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