プリント基板ノイズ対策セミナー 2021年9月
講演への質問と回答
2021年9月2日開催「プリント基板ノイズ対策セミナー 2021年9月」でいただいたご質問と、講師からの回答を掲載いたします。
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セミナー講演資料(テキスト)は、9月2日開催「プリント基板ノイズ対策セミナー」にお申込いただき、セミナー後アンケートに回答していただいた方に配付しております。
株式会社ノイズ研究所 石田 武志 氏の講演への質問と回答
対象の講演 |
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(13:30 ~ 14:50) 株式会社ノイズ研究所 商品開発部 |
- Q1ノイズ研には、TC-815S 用微小ギャップ式放電チップ(12-00010A)というものがあったのですが、通常のESD試験とはどの程度異なるものなのでしょうか。どのような状況を想定しているのでしょうか。
- A1セミナー資料に記載しましたが、立ち上がりが速くり、第一ピーク電流が増大します。第二ピークは、殆ど変化はありません。これは気中放電の厳しい状態を、温湿度環境などに影響されず再現できるメリットがあります。
- Q2石田様の説明資料(p6)で主なイミュニティ試験と効果のイメージの図にインパルスノイズ試験をプロットするとどの位置になりますでしょうか。
- A2バースト(EFT/B)試験に近いですが、より右側のESDの周波数帯域まで延びた位置となります。50nsパルス幅のEFT/B試験に対して50ns~1000nsまでパルス幅を変更できるため、インパルスノイズの方が1パルスのエネルギーも大きくなります。
- Q3Ed.3で議論されている内容をご存じでしたら教えてください。
- A3まだ案の段階ですが、放電電流波形の細かい規定を見直す動きと、放電電流波形を測定する校正環境の変更を検討しています。試験方法については、今まで明確に規定していなかった部分を規定するなど見直しを行っています。各国から意見が提出され、まだ結論は出ていません。
- Q4P16~P17の図中の台上の白い長方形はなんですか?
- A4絶縁シートです。0.5mm厚のプラスチックの絶縁シートをHCP上に配置して、その上にEUT(製品)を設置します。HCPと製品が直接接触させないことが目的です。
- Q5EUTに放電する経路がない場合に除電する必要があるとのことですが、EUTの基板上のGNDラインを銅板(グラウンド板)に落としておきながら静電気を印加する方法は間違っていますでしょうか。
- A5製品が実際に使用される状態で試験を行うのが原則で、試験時の特別な設置、配線などはできなせん。取扱説明書等にアース端子の接地などが記載されている場合はその状態で実施しますが、そうでない限りは余計な接地などはしてはならないのが基本的な考え方となります。明確な指定がない場合は、ユーザーが勝手に判断するあらゆる状況を想定して試験する必要があります。その意味では取説などで、設置方法を明確に規定することが重要となります。
- Q6HCP,VCPに接続する放電抵抗ケーブルは図にあったように放電ガンで印加する側の金属板端面に接続するのですか?
- A6放電抵抗ケーブルは、高抵抗(約1MΩ)のため、印加したESDが放電抵抗ケーブルに急峻に電流が流れることはありません。200ns程度のESDパルスに対して、放電抵抗ケーブルの電流は、その10000倍の2ms程度で緩やかにHCP/VCPの除電を行います。
従って接続箇所を印加場所の近くにするか、反対側にするかによる差はほとんどありません。 - Q7ESD試験前の始業点検でファーストピークがいつもより小さい場合がたまにありますが、何を疑えばよろしいですか?ESD試験機は認定校正はかけております。
- A7正式な測定環境(1.2m角以上のグラウンド板)であれば、正しい第一ピークが観測されますが、グラウンド板が小さい簡易的な環境では、低目に観測されます。ピーク値が大小に暴れる場合は、内部の高電圧リレーの寿命などを疑う必要もありす。ESDガンを確認する場合、1kV程度の低電圧と8kVなどの高電圧の両方での確認をお勧めします。内部断線が発生した場合、高電圧だと断線部分が放電して正常に見える場合があります。規格の規定値を下回っている場合は、再校正などメーカーに確認してください。
- Q8医療のESDですと、気中放電は15kVで行います。人体からの気中放電と大きな違いがあることがわかりました。なぜ、実際の試験のレベルと試験規格のレベルを合うように試験規格は見直さないのでしょうか?
- A8気中放電は、設定電圧と放電放電電流の関係はリニアではなく、高電圧になるほど電流値は頭打ちなり、立ち上がり時間も鈍化します。人体からの放電電流も同様の現象になります。この現象は、周囲の温度-湿度の関係、表面状態などで大きく変化します。一方、接触放電は、リニアな関係になります。周囲環境の条件が整うと、気中放電は、接触放電より非常に厳しい状態にもなりますが、逆の条件では、接触放電より鈍化することもあります。接触放電は、大きくばらつく気中放電の放電電流のピークと立ち上がり時間の中間を狙った設定になっています。この傾向は、低電圧では、気中放電が厳しく、高電圧では接触放電が厳しくなります。
- Q9同軸ケーブルはCになっているとのことですが、信号線-GND間に数kΩの抵抗が入っているアンテナの場合は、Cは帯電しないと言う理解で良いでしょうか?その場合は、微小ギャップ試験をおこなう必要は無いと言う理解で良いでしょうか?
- A9同軸ケーブルの芯線とグラウンド間に抵抗がある場合には、帯電しても除電されますので問題ありません。自動車のフロントガラスのアンテナなど、ガラスがこすれて帯電した電荷がそのまま同軸ケーブルの帯電になる場合がります。前の回答にも記載しましたが、気中放電の厳しい状態の再現という意味での使用用途はあります。
- Q10誘導ESDの考え方として、電気回路を含む製品の梱包材を剥がす(剥離)などで高い電荷をもった場合、梱包材の遠ざかりによって電気回路にも誘導帯電が生じると考えられるでしょうか? この際、通電されてない電気回路に誘導帯電した場合の電荷の挙動は、例えば半導体内部の絶縁膜(コンデンサ構造)を破壊するに至ると考えられるでしょうか? このケースがあり得る場合、帯電電圧が何kV以上が危ないでしょうか?
- A10剥離などの動作では、非常に高い電圧が発生して帯電します。高電圧に帯電した物体の近くに別の物体があった場合、わずかに誘導して帯電しますが、それほど高い電圧にはなりません。ここで高電圧の物体(人)が近づく、離れるという動作が伴うと、帯電量は大きくなります。半導体の場合は、体積が小さくこの帯電量もすくないので、破壊に至ることはないと思います。帯電した物体の取付の接触不良などで、ミクロン単位のギャップがあると放電することがあり、エネルギーは小さいですが、非常に高周波の電磁波が発生して誤動作に至ることがあります。実装された半導体が壊れることはないですが、半導体の場合、セミナー資料にも記載した帯電した半導体が実装されるときに破壊する場合が考えられます。(CDMの試験を参照してください。)
- Q11ギャップ放電に対する対策は、通常の静電気対策と同じでしょうか。
- A11ギャップ放電の現象は、気中放電でもありうる現象となります。ピーク電流の増大は、接触放電の印加電圧値を上げることで実現できますが、高速の立ち上がりの高周波現象は、接触放電で再現できませんので、その周波数領域までの対策が必要となります。
- Q12ESD試験のご説明について。通常の放電と、ギャップ放電 の違いを教えて頂けないでしょうか。(ギャップ放電 とはどのような意味でしょうか?)
- A12ギャップを設けて接触放電を実施する特別な応用なので、国際規格ではありません。接触放電は、ESDガン内部の高電圧リレーが動作して内部配線、放電電極のインダクタンスを通った電流で立ち上がりが0.8nsに制限されますが、放電電極先端にギャップを設けることで、これが放電スイッチとなり、インダクタンス成分が殆どない鋭い放電になります。気中放電も放電電極先端での放電がスイッチとなり、温湿度条件が整った場合、厳しい放電が発生します。参考:回答NO.1,11を参照。
- Q13ESDの放電電流波形について。試験室における電流波形と、実際の住環境(リビングのカーペットの上で発生する放電等)における電流波形に違いはあるでしょうか?また、人の違い(性別や年齢の違い)が影響しそうですがどの程度の違いがあるでしょうか?どちらの質問も、規定されている放電電流波形より実環境の方が電子機器にとってダメージが大きいのであれば、どの程度違いがあるのか教えていただきたいと考えてのものです。
- A13現実には、ESDガンの放電(気中/接触)と人体(気中)の放電があります。まず気中放電で説明します。気中放電の第一ピークは、ESDガンまたは手と放電対象物との寄生容量の放電で発生します。この現象は、気中放電の特性となります。通常、人体がカーペットを歩く、セーターを脱ぐなど15kV程度まで帯電することがあります。気中放電の試験レベル4が15kVとなっているのは、このためです。人体の静電容量はおよそ100pFで、多少太った方でも若干容量が大きくなる程度です。性別なども程んど影響ありません。また人体の抵抗は身体全体に分散しています。この静電容量で発生するのは、第二ピークの部分で、セミナー資料にある人体の場合は、抵抗Rと静電容量CのCRの減衰カーブとなります。ESDガンの場合は、CRに加えて2mのグラウンドリターンケーブルのL(インダクタンス)があり、LCRの共振波形となり、人体からの第二ピークより膨らみます。第二ピークの部分は、接触放電も同じです。接触放電の第一ピークは、温湿度環境に影響を受けず常に一定の放電を発生します。回答8のも記載しましたが、接触放電は、ばらつく気中放電の中間を狙った厳しさとなります。
- Q14気中放電において 湿度による影響によって ガンを印加点まで動かすまでにガンの帯電電荷が失われていくと思いますが、どの程度と考えればよいでしょうか?
- A14気中放電試験で帯電した電極の電圧は、規格で5秒間は保持する規定となっていて、実際にそれ以上の電圧を維持することを確認しています。但し極端に湿度が高い場合や、ESDガンの表面が汚れている場合などは、電圧の保持ができなくなる場合があります。汚れている場合は、アルコールで清掃することで復活します。温湿度も規格で規定する範囲内であることを確認してください。また標準の丸い電極が帯電電圧を保持できるのは、15 kV程度までです。それ以上高い電圧の気中放電を実施するときは、オプションの大きな球状の放電電極に交換してください。また丸型の放電電極に傷などがあると電圧の維持が出来なくなることもありますので、点検してください。
- Q15IEC 61000-4-2 2nd→3rdの変更点で大きい箇所はどのようなものが検討されていますか?
- A15VCP,HCPは、周辺物との寄生容量のコンデンサで印加したESDの電圧の立ち上がりは、数十µsとなり高周波成分はかなりなくなります。間接放電の試験セットアップについては、見直しが検討されていますが、意見が割れて方向性はまだ分かりません。気中放電のばらつきが大きいことは共通認識ですが、改善案については、案がありません。情報として、附属書に気中放電のばらつきとその理由などの解説をこれまでより強化して記載しています。その他は、回答No.3参照ください。
- Q16p.44の右下の4kVの規格だと電子回路にノイズがほとんどでなかったとのことですが、これは何故なのでしょうか。具体的に何が異なるのでしょうか。
- A16右下の4kVは、IEC 61000-4-4 EFT/B試験の規格書に規定された4 kVのL-N同時印加のコモンモード試験です。EUTのAC入力には、コモンモードノイズフィルタが通常実装されています。L-N同時印加のコモンモードだとこのノイズフィルタのコモンモードチョークの機能が完全に働き、ノイズの侵入をブロックします。インパルスノイズの場合、パルス波形に含まれる周波数成分がノイズフィルターの帯域を超えることと、L-N間のノーマルモードに関しては、コモンモードフィルターが殆ど機能しません。インパルスノイズ試験のコモンモードは、グラウンドプレーンを基準としたL又はNラインの1線に印加する試験のため、これもコモンモードチョークが殆ど働きません。そのため1kVでも内部の回路にノイズが侵入しています。
- Q17IEC 61000-4-2 2nd→3rdの変更は、当初2019~2020年ころと言われていましたが、コロナウイルス問題などで延期と聞いています。現時点でいつ頃と検討されていますか?
- A17来春に国際会議が開催できた場合、最短でも2023年発行でそれ以降になる可能性も大きい状況です。
- Q18静電気試験器によっては放電間隔と放電回数を設定出来るものが有りますが、試験規格で求めている試験方法として、この機能を使用しない方が良いのでしょうか。
- A18接地経路が確保されて、印加後に帯電しないEUTでは、1秒間隔で10回印加する設定で問題ありません。気中放電モードの場合、印加間隔の設定はありません。印加回数の設定を行うと、例えば10回の印加を完了した時点でブザーで完了を知らせる機能があります。
- Q19接触放電で放電ガンを放電後、次の充電する際に、ガンの近くのケーブル等に影響が出てしまうのですが、なるべく離すために斜めに接触でも良いでしょうか。
- A19ESDガンは、放電後充電のためリレーを切り替えます。この時、小さいエネルギーですが、高周波のノイズが発生します。このノイズでEUTが誤動作することがあります。現行品の静電気試験器では、このノイズを低減するExtraモードを設定できます。気中放電の場合は、EUTから50cm程度離れた位置に戻してトリガボタンを離すことをお勧めしています。
- Q20プラスチック筐体に使用している金属ねじは電気的に浮いているので、印加の度に除電が必要となりますでしょうか。
- A20帯電して電荷が抜けませんので、毎回除電が必要となります。ネジ単体では、容量が小さいですが、浮いている金属版などが接続されていれば、より放電電流が流れアンテナとなって電磁界が発生します。除電しないで次の印加を実施すると、放電による注入電流が少なくなります。
NECソリューションイノベータ DEMITASNXチームへの質問と回答
対象の講演 |
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(14:50 ~ 15:30) NECソリューションイノベータ株式会社 DEMITASNX開発チーム |
- Q1DEMITASNX Ver5からの無償アップグレード版を利用しています。
プレーン共振解析一括実行機能の利用にはオプション追加が必要ですか? - A1プレーン共振解析一括実行機能は、Ver6以降にご購入いただいたDEMITASNX、またはVer6有償アップグレード版でご利用可能です。
Ver6へ有償アップグレードしていただくか、保守費と同額で買取ライセンスから3年TBLへ移行していただくことで、今回追加したプレーン共振解析 一括実行機能の他、AIによるEMIチェック絞込み機能、回路図連携機能、EMIチェックバッチ実行機能もご利用いただけます。詳細は販売店、営業窓口までお問い合わせください。
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