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5年分の進化でAIはぐっと身近に クラフトビール開発の「仲間」と呼ばれたNECのAgentic AI
2025年5月29日

AIは“ツール”から“Buddy”(仲間)へ。そんな触れこみとともに発表されたNECと協同商事 コエドブルワリーで開発したAIクラフトビール「人生醸造craft」が6月から出荷されます。チョコやプリンなど毎年のようにNECのAIを用いた商品開発を重ねており、クラフトビールは2020年にも好評を博した両社コラボの第2弾です。この5年でAI技術がどう進化したのか。3月末に行われたメディア向け説明会の様子から読み解いてみます。
「前回のクラフトビールから5年。なぜ再びつくりたいと思ったのか」。3月の説明会で出た質問です。「この間、AI技術は大きなブレイクスルーがあった」と切り出したのはこのプロジェクトをリードしたNECの千葉雄樹。NECは2023年にNEC開発の生成AI「cotomi(コトミ)」、2024年に自律的にタスクを分解して業務を実行するAgentic AI(AIエージェント)を発表しました。それらを駆使してNECがPurposeに掲げる「新しい社会価値創造にチャレンジしたかった」と力を込めた千葉の後で、コエドブルワリーの朝霧重治社長は「スキルのある仲間が1人増えたようだった」と続けました。この言葉は複数のメディアで報じられました。


今回開発した「人生醸造craft」は20代~50代の各世代がもつ価値観や特徴を分析し、味や香りで表現しています。NECのAgentic AIは「20代をイメージした新しいクラフトビールのレシピを提案して」というざっくりした指示でも「ペルソナ作成」「レシピ情報検索」「レシピ案作成」など複数のタスクに分解して実行できるのが特長。例えばこれまで膨大な工数がかかっていたレシピや材料の組み合わせに関する情報収集も、Agentic AIが自律的に行い、叩き台をつくってくれます。そして、これをもとにチャット形式でAIと職人が相談し、さらに職人同士で協議を重ね、レシピは完成。このプロセスは、従来に比べて工数を40%削減できたといいます。
2020年は「AIが出したデータをもとに人間がレシピを考え、そこに交流はなかった」という朝霧社長。「無機質な存在と思っていたAIが人間味さえ感じるようになり人間の限界を超えていく」としつつ「でも怖くないんです、仲間だから」と微笑みます。


もともとこのビールは、上司や先輩との会話の糸口に悩む若手社員のつぶやきがきっかけで、世代間コミュニケーションの促進をテーマに発展してきました。第2弾では人と人だけでなく、人とAIのコミュニケーションも進化させたNEC。「仲間、といってもらえたのは、我々のめざすことが一つ到達できたという証し」とNECの千葉は語り、こう続けます「(AIを)仕事のBuddyとして一緒に協力させていただくよう育てていきたい」。