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10月1日は日本酒の日。新米が収穫され酒造りが始まる時季、「日本酒を後世に伝える」という思いを新たにするために定められました。世界に誇る日本の文化でもある日本酒の味を守り、酒造りを次世代につなげるために、実はNECグループの技術ときめ細やかなサービスも一役買っています。一見アナログなこの世界に、どんな新しい価値を生んでいるのでしょうか。
酒造りの繊細なデータを見える化 味を守り、技能を受け継ぐ
日本の伝統産業とITを掛け合わせ、最近の言葉で言えばDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進める。「真逆の印象がある二つの世界だからこそ、やりがいがある」。NECソリューションイノベータの担当者たちは口をそろえます。
米を水につける時間、発酵にかかる時間や温度、成分など、酒造りには繊細で複雑な工程とデータが多くあります。このデータ管理をデジタル化するのが「NEC清酒もろみ分析クラウドサービス」。もろみは、蒸米、米麹、酒母、水を加えたものを発酵させた液体で、日本酒になる手前の段階です。もろみの出来が酒の味の良し悪しを決めるとも言われています。

このサービスによって、蔵の外でも仕込みのデータの把握ができ、これまでつきっきりだった仕込み中にも外出や出張がしやすくなります。手書き記録の保存より簡単になり負担が減ることで、「味のこだわり」に時間をかけることができるようになるのも利点です。
経験と勘に頼っていると思われがちなデータ管理を見える化することで、改善につながるだけでなく、酒造りの新たな担い手育成に役立つことも期待されています。
「世界中にファンがいる『男山』では、杜氏が代わっても、同じ品質の日本酒を提供していかなければならない」。北海道・男山株式会社の杜氏の言葉です。ほかにも、「国士無双」(北海道・高砂酒造)、「新政」(秋田県・新政酒造)など、名だたるブランドを背負った業界トップリーダーを含む14社が、このサービスを導入しています。

杜氏の悩みを聞きながら 匠の感覚を尊重して育てたサービス
地域に根差した社会課題解決のために、NECソリューションイノベータとしてできることはないか。このサービスの出発点は新規事業のネタ探し。北海道支社のメンバーと、酒蔵の杜氏の学生時代の縁がきっかけで、酒蔵のもつ伝統継承の課題に出会いました。「記録の手間が煩雑なうえ、記録が目的になってきて活用ができていない」。杜氏の生の声をきいてサービスを育て、2016年に実証実験をスタート。2018年に正式にリリースしました。


NEC 清酒もろみ分析クラウドサービスのデモンストレーション画面
酒造りの工程のデータをデジタル化したサービスは、他の企業も提供しています。では、NEC清酒もろみ分析クラウドサービスが誇れるところ。それは「酒蔵の現場の意見をききながらシステムをつくっていったこと」だと、NECソリューションイノベータで、このサービスを立ち上げ当時から担当する田島新也は話します。
ただ数値を自動化するだけでなく、現場の動きをなるべく変えないように、タブレットの入力のフォーマットや、分かりやすさにこだわりました。また、全ての工程のデータ入力をカバーすることで、国税局への報告書類も作りやすい仕組みになっています。
2022年には、それまで手入力していた温度のデータも、温度センサーに対応して自動入力できるようになるなど、今も現場の声を聞きながらバージョンアップが続いています。
業界のリーダーたちが認めた 高い品質の酒造りをサポート
醸造元と向き合うNECソリューションイノベータの担当者も手ごたえを感じています。
「私たちがつくった仕組みを入れたから(鑑評会で)金賞をとれた、と言っていただいたのが本当に嬉しかった」と田島は振り返ります。2022年の全国新酒鑑評会で金賞を受賞した高砂酒造の杜氏、森本良久さんからの言葉です。「シーズン中は常にデータを確認し、過去の成功例のデータに添うようにその日の作業を判断していく。それができたからこその受賞だったと思います」。田島からこのサービスの担当を引き継いだ中島大介も「日本酒の業界の有名なリーダーの方に認めてもらったことも自信になった」と話します。

このサービスは、事業の枠を超えてNECグループが行うシチズンシップ活動とも連携しています。今年20年目を迎えるNEC田んぼ作りプロジェクトで、お酒造りに協力してくれる廣瀬商店(茨城県)も、もろみクラウドを試験導入。「若い人や後継者候補が入ってきたときに、全部ではないけどスムーズに技術の継承ができる」と廣瀬慶之助社長は話します。これをきっかけに「日本酒の世界に興味を持ってくれる人が増えたらいいなと願っています」


日本の伝統を伝えること。それはNECのPurposeである「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」を目指すことにもつながっていきます。