
より豊かで生き生きと暮らせる社会を、
行政DXを通じて叶える

小松 正人
1993年入社。自治体・総務省・マイナンバー制度担当等を経て、国内行政DXソートリーダーを担当。国際社会経済研究所(IISE)兼任。2024年4月より官公ソリューション事業部門長。
日本の行政は、少子高齢化社会への対応、住民と職員のwell-beingの実現という、二つの課題に直面しようとしています。NECではデジタルの力を活用しながら、国全体のカルチャー変革をサポートしていくことで、これらの課題を乗り越えた先にあるより豊かな未来を創造するチャレンジを続けています。
「社会を止めない。暮らしを止めない。行政を止めない。」果たしてそのメッセージには、どのような思いが込められているのでしょうか。デジタル・ガバメントを推進する小松 正人(こまつ まさみ)が、行政DXにかける思いを語ります。
行政職員をサポートするAIによって自治体業務を止めない
日本の行政はどのような課題に直面しているのでしょうか。
現在、日本の出生数はピーク時の約3分の1に減少しているのに対し、高齢者数は増加を続け、2042年には高齢化率がピークを迎えることが予測されています。その結果、自治体では人口減と労働人口減による税収減が進みます。また職員の定数も減りますが、自治体職員の業務量は変わらず、いままでと同様の業務をより少人数でこなす必要が出てきます。
一方で、最近では国民の意識変化が進み、高度成長期の利便性向上や効率化優先の社会から、働きやすい・暮らしやすい等、生き生きと暮らせる社会の実現、いわゆるwell-beingが求められるようになってきています。

行政を止めないために、どういった支援ができるのでしょうか。
少子高齢化社会への対応と、住民と職員のwell-beingの実現。これらの課題を同時に解決するにあたって、NECではデジタルを活用することで活路を見いだせると考えています。
例えば自治体職員の業務をAIでサポートできれば、少人数でも従来と同じ業務量をこなせます。行政手続きもスマホでできるようになれば、直接役所を訪れる人が減り、少ない人数でも対応できるようになります。
働き方という点でも、近年、ICTの普及によってリモートで仕事ができるようになっていますが、それがもっと進むかもしれません。こういった未来を可能にするのがデジタルの力で、NECの技術はその点において大きく貢献できると考えています。
これまでNECが行政機関に提供してきたソリューションで、印象深いものはありますか。
コンビニエンスストアで自治体の住民票の写し等の証明書を交付できる仕組みを総務省に提案し、社会実装できたことです。住民が役所にいかなくても、全国いたるところにあるコンビニエンスストアの多目的コピー機で住民票の写しが印刷される。まさに、デジタルの力で社会が変えられることを実感した印象深い体験でした。
最新の事例としては、どういったものがあるのでしょうか。
NECが独自に開発した、高い日本語性能を有する軽量なLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)「cotomi(コトミ)」を活用した行政支援です。自治体業務に特化したLLMの構築として、2023年11月から相模原市役所で市行政事務における生成AI活用の共同検証が始動しました。医療機関での活用も視野に入れており、2023年10月~11月に東北大学病院で実証実験を行いました。橋本市民病院においても同様の実証実験を2023年10月から行っています。
また、AI活用により児童相談所の業務負荷を軽減するシステムを静岡市と構築し、2024年4月より運用を開始する予定です。
[関連プレスリリース]
これらのソリューションにより、どのような効果が期待されるのでしょうか。
生成AIが行政の現場で支援できることはたくさんあります。例えば総合窓口のアシスタント。住民からの問い合わせに対して、最適な回答をAIが生成し業務をサポートしていきます。さらに、法令や地方行政の根幹である例規の検索、公開文書の個人情報部分のマスキング等、様々な分野で活用が期待されています。
医療機関では、2024年4月から適用が開始される「医師の働き方改革」に対して、これまで以上に医師の業務を効率化する取り組みが重要になっています。そこで医師の時間外労働の原因の一つとなっている、診療情報提供書、退院サマリなどの文書作成支援に生成AIを活用することで、医師の記録業務の効率化を実現し、医師の労働環境の改善や健康維持に寄与することが期待されます。
児童相談所でのAI活用に関しては、これまでの相談対応におけるノウハウを学習したAIが過去の類似事例などを提示することで、経験の浅い職員をサポートするほか、音声認識AIによる記録業務の効率化により、職員の負荷を軽減。2022年12月~2023年3月に行った実証実験において、約54%の対応の質向上、約33%の業務時間削減を実現しています。AI活用の効果として、「心理的な負荷が軽減された」「情報の引き出しが増えて対応の幅が拡がった」という現場の方からの声も頂戴しています。
行政DXを推進するとともに、国全体のカルチャー変革にもチャレンジ
ソリューションの提供以外に働きかけていることがあれば教えてください。
行政DXを実現していくためには、自治体職員の意識も変わっていく必要があるため、カルチャー変革に取り組もうという自治体も徐々に増えてきています。NECでは2018年より社内変革プロジェクト「Project RISE」を推進しています。これを自治体にも適用できないか検討を始めています。

カルチャー変革を推進する背景にはどんな考えがあるのでしょうか。
従来のようにお客さまの依頼に応えてソリューションを提供するだけでなく、たとえばソートリーダーシップ活動を通じて政治家や有識者、官僚等への政策提言を積極的に行い、NECがもっているノウハウやテクノロジーを提供しながら、社会をよりよい方向に変えていきたいと考えています。
そして、社会や暮らしを止めないために、我が国全体のカルチャー変革にも、より積極的にチャレンジしていきたいです。行政DXの分野で世界をリードしているデンマークでは、すべての国民が社会全体でどうありたいのかを考え、「こうありたい」というイメージをしっかり持っています。みんなで話し合ったうえで目標を決め、デジタルをうまく活用して目標と現状とのギャップを計画的に埋めていくデンマークの人たちの姿勢も、ぜひ参考にしたいところです。その結果として、日本の行政DXが推進され、より豊かな未来に向けてチャレンジし続けることができればと思います。
少子高齢化社会への対応、住民と職員のwell-beingの実現に向けて、デジタルの力を駆使することで、より豊かな未来を築いていく。「社会を止めない。暮らしを止めない。」NECはこれからも、様々な角度から行政DXを推し進めるだけでなく、積極的にソートリーダーシップ活動を推進していくことで、すべての人々が生き生きと暮らせるデジタル社会を創っていきます。
