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NEC グローバル経営改革≪第三弾≫

JapaneseEnglish

グローバル市場で勝てる革新的な製品を生み出すために
NECが目指した新しい開発基盤のカタチとは?

日本電気株式会社
業種製造業業務設計・開発・製造,生産管理,経営企画
製品PLM/CAD(製品開発)ソリューションソリューション・サービスPLM/CAD(製品開発)ソリューション,日系企業向けグローバルICTソリューション,BC(事業継続)ソリューション,文書・コンテンツ管理ソリューション

企業グループ内に存在する技術アセット(資産)や人的リソースを最大限に活かし、グローバル市場で勝てる革新的な製品をどう生み出すか――。これはすべての製造業に共通したテーマですが、その実現は容易なことではありません。NECでも同様の悩みを抱えていました。複数の事業体ごとに個別最適化されていた開発業務プロセスやルール、コード体系の違いといった様々な壁が、その実現を阻んでいたのです。こうした現状を打破するためにNECでは、各事業体で個別に運用されていた10以上のPDM(Product Data Management:設計・開発データ管理)システムの全社統合に着手しました。その結果、設計・開発情報などの技術アセットや人的リソースの有効活用、さらには生産マップフリー化(どの工場においても同一製品の生産が可能な体制の構築)、BCP対応の強化など、グローバル対応の観点から課題となっていた問題を解消できる開発基盤を整備。複数事業の強みを融合した新製品の実現を力強く推進しています。

事例のポイント

課題

  • 開発体制が各事業体によって縦割りとなっており、個別にPDMシステムが運用されるなど、設計・開発情報をはじめとした技術アセットを全社横断的に有効活用することが困難でした。
  • 工場が事業体に紐付く形であったため、拠点間での生産の移管や生産リソースの融通などが容易に行えない状況でした。
  • 開発業務のプロセスやルールが事業体により異なっており、設計に当たる人的リソースをニーズに応じて柔軟に配備することができませんでした。

成果

  • 設計・開発情報を全社で一元化する統合PDMを構築。これにより技術アセットの全社的な共有が可能になり、アセットの強みを柔軟に組み合わせた製品の開発が可能になりました。
  • 生産BOMを各拠点で共有化できる仕組みをベースに、生産マップフリー化を実現。需要変動への対応やBCP対策のニーズに応えられる生産体制を整えることができました。
  • プロセスやルールの標準化により新製品に必要な技術領域に精通した設計者リソースを適宜配備し、競争力を持った新製品をスピーディに開発していくための基盤が整備されました。

導入前の背景や課題

事業体ごとの縦割りシステムや業務プロセスが課題の温床に

NEC サプライチェーン統括ユニット ものづくり統括本部 シニアエキスパート 西村 英憲NEC
サプライチェーン統括ユニット
ものづくり統括本部
シニアエキスパート 西村 英憲

現在、国内市場は成熟化し、今後のビジネスにおける大きな成長が見込めない状況です。こうした認識のもと、NECではグローバル対応力の強化を念頭に据えた施策を展開してきました。
「強固なグローバル対応力を持つためには、海外市場を開拓できるような新製品やサービスを生み出していく必要があります。その実現にはビジネスユニットや事業部といった事業体がそれぞれ固有のやり方で製品の開発・生産に取り組んでいるという状況を打破しなくてはなりません。そこで、NECはグローバル経営改革の第1弾『経理・購買・販売』、第2弾『グローバルSCM改革』に続き、第3弾として『“One NEC”としての開発基盤』を構築し、グループ全体最適の視点で統一化、統合化を目指したのです」とNECものづくり統括本部の西村 英憲は語ります。

NEC テレコムキャリアビジネスユニット ネットワークプラットフォーム開発本部 本部長代理 大曲 新一NEC
テレコムキャリアビジネスユニット
ネットワークプラットフォーム開発本部
本部長代理 大曲 新一

これまでの課題としてまず挙げられるのが、設計・開発情報をはじめとした技術アセットを全社横断的に有効活用できていなかったことです。量販端末から衛星まで、幅広い製品を開発するNECでは、各事業体によってそれぞれのPDMが運用されていたため、設計データが個別に管理されていたほか、コード体系やBOMの構造なども各事業体で異なり、ある事業体のデータを他の事業体で流用することが容易にできなかったのです。
「例えばコード体系では、事業体Aと事業体Bでは品目コードについて同様のフォーマットをとっていながら、事業体Aでは下2桁を『プリント基板や客先の違い』を示しているのに対し、事業体Bでは同じ2桁で『上位互換性』を表現するといった具合に、その意味がまったく異なっているケースがありました」(西村)。
次に、事業体によって開発業務のルールやプロセスが異なることから、ある事業体の設計者を他の事業体に配備するといったことも困難でした。
「設計変更における改造指示と恒久処置の略称も事業体によって異なっており、例えば同じ『ECO』といった表記でも、ある事業体ではそれが改造指示を意味し、別の事業体では恒久処置を示しているといった状況でした。当然、特定の事業体のプロセスに馴染んだ設計者を、他の事業体に配置しても新しいプロセスに混乱してしまうことになるわけです」とNECテレコムキャリアビジネスユニットの大曲 新一は説明します。

NECプラットフォームズ株式会社 ネットワークプロダクツ開発事業部 統括マネージャー 松下 秀明NECプラットフォームズ株式会社
ネットワークプロダクツ開発事業部
統括マネージャー 松下 秀明

さらに生産工場も、基本的に事業体に紐付く形となっていたことも大きな課題となっていました。例えば、ある事業体の製品に関する需要が予想外に増大した場合に、別の事業体の工場でもその製品を生産するといったことが柔軟に行えなかったのです。地震や洪水などの災害に工場が被災した際も同様で、BCP対策の観点からも問題を抱えていました。
「2011年に発生したタイの洪水では生産拠点に浸水し、数カ月にわたり生産を停止せざるを得ない状況でした。そこで生産を国内の工場で代替したいと考えたのですが、部品表レベルからの調整を膨大な人員を配して手作業で行わなければなりませんでした」とNECプラットフォームズ ネットワークプロダクツ開発事業部の松下 秀明は振り返ります。
このように事業体ごとにプロセスやコード体系、ツールが個別最適化され、さらに設計・生産のインタフェースが異なっていたことで、事業体横断的な新製品開発をスピーディに行えず、市場変化や需要変動に対してタイムリーに対応することが困難だったのです。
こうした問題に加え、システムに関わるコストや運用負担もかかっていました。これまでも組織の統廃合に歩調を合わせ、PDMシステムの統合を進めていましたが、それでも社内には10以上のシステムが稼働している状況でした。その運用管理には30名以上の人員が割かれており、運用コストも肥大化していたのです。

選択のポイント

統合PDMを核にグローバルレベルでのものづくり改革を実践

こうした状況を打破し、グローバル市場で勝てる革新的な製品を生み出すにはどうすべきなのか。市場環境の変化や需要変動に対してもタイムリーかつ柔軟に対応していくにはどうすべきなのか――。
NECが最終的に出した結論、それは各事業体でバラバラだった開発プロセスや業務ルールを標準化し、全社で統合化されたシステム上でグローバルなものづくり改革に挑戦することでした。
その取り組みの中核となったのが、10以上あるPDMシステムを全社で一本化する仕組みの構築です。(図1)そのねらいは、統合化された開発基盤上で技術アセットの全社的な共有化を図り、開発業務に関わるプロセスやルールなどを標準化。事業体横断での製品開発を可能にするとともに、設計に携わる人的リソースの柔軟な配備を実現することでした。
しかしこのことは、一言で言えるほど簡単なことではありません。大規模で多岐にわたる現状を把握し、そこにある課題を全体最適の観点から1つずつクリアしていく必要があるからです。
「そこで、まずこれまで事業体ごとに異なっていたコード体系やBOMの構造、設計変更のプロセスや用語など開発業務ルールを、類型ごとに標準化していく取り組みを行いました」と西村は説明します。
NECでは、製品の特質に応じてI類からIV類まで4つに分類。具体的には携帯電話などの量産型製品をI類、サーバーやストレージ、金融端末などのBTO(Build To Order:受注組立生産)型の製品をII類、メインフレームコンピュータや放送機器などのセミカスタム製品をIII類、そして防衛や宇宙に関わる分野の製品をはじめとする受注設計型のフルカスタム製品をIV類としています。こうした分類ごとに、最適な開発プロセスやルールの標準を定めていったわけです。
もちろん、このことには多大な労力と時間が必要でした。標準化というのは1つの変革であるため、頭では理解できても、現場にすんなりと受け入れられるとは限らないからです。そこで決定できないルールについては、実務責任者会議で最終判断を仰ぐとともに、業務ルールの合意を含め、標準化の作業には徹底的に時間を割き、出張や外出をいとわず数多くのステークホルダーに1つひとつ説明し納得してもらいました。
その一方で、PDMシステムの機能標準化についても、各事業体や関係会社のキーマンで構成される「全社ワーキンググループ」を立ち上げ、社内外のベストプラクティスなども取り込みながら機能要件を定義していきました。
具体的には「全社視点」「開発現場視点」そして「製品特性視点」の3つの観点でPDMにおいて提供すべき機能を整理して標準化案をまとめ、各事業体に要請してフィット&ギャップを実施したり、プロトタイプを作成するといった取り組みを通して、ブラッシュアップしていくというアプローチをとりました。
また、PDMの統合に合わせ、「DM-HUB(Design & Manufacture-HUB)」と呼ばれる設計-生産間のインタフェースシステムの仕組みを構築しました。これは統合PDMと工場の生産管理システムの間にあるハブの役割をするものであり、世界中どの工場においても同一製品の生産を可能にする、いわゆる“生産マップフリー”の実現のために導入されました。さらにもう1つEMS(Electronics Manufacturing Service)やODM(Original Design Manufacturer)といった外部のベンダーと安全に設計情報を共有するための「外部ポータル」を設置し、水平分業型のものづくりを推進するための仕組みもあわせて構築しました。

図図1:統合PDMシステムの全体概要
NECでは、各事業体で稼働する10以上のPDMを1つに統合。アセットの全社横断的な活用と開発業務プロセスの標準化を図るとともに、統合PDMに格納された設計情報を効率的に生産拠点に流通・共有化を図る仕組みをDH-HUBとして実現しています。

導入ソリューション

求められるPDM機能をレイヤごとに整理し実装

今回の取り組みにおいてNECでは、PDMシステムの統合化に加え、DM-HUB、外部ポータルといった新たなシステムの構築を行いました。
統合化されたPDM基盤には、自社の提供するPLMソリューション「Obbligato III」を採用しています。今回、Obbligato IIIをベースにNECが構築した統合PDMには、各事業体や分身会社のメンバーで構成される全社ワーキンググループで定義された要件を、いくつかのレイヤに整理して実装しています。
具体的には、最下層の「データ領域」のレイヤ上に、パッケージが提供する基本機能となる「Base」、NECグループが共通で利用する機能を提供する「Common」、そしてBtoB、BtoCといったビジネスモデルに応じたプロセス支援機能を提供する「Module」、さらに事業体ごとに必要となる、顧客やターゲット市場の違いに対応する機能を業務アプリケーション側で提供する「Option」です(図2)。
具体的な機能としては、BOM管理や設計変更管理、ドキュメント管理、図面管理、原価管理、プロジェクト管理など、製品開発において不可欠な業務がこの統合PDM上で行えるようになっており、稼働開始時には品目で2,400万件、構成情報1億2,000万件、ドキュメント1,800万件という膨大なデータが登録されています。運用開始とともに、約6,000人が利用しており、2年後にはグループ全体で17,000人が活用する予定です。

また、DM-HUBは、「設計BOM」を「生産BOM」へと変換し、工場側の生産管理システムに引き渡す役割を担っています。具体的には、まずDM-HUB上で設計BOMをコピーして生産拠点別の生産BOMを生成。次に各拠点の生産技術者が副資材や工程などの生産に必要な情報を付加。その後、拠点別の生産BOMを各拠点の生産管理システムに取り込んで生産するという流れとなります。
ここで大事なポイントは、変更の際も拠点の生産管理システムではなく、DM-HUB上の拠点別の生産BOMをメンテナンスする点です。こうしておけば、ある製品を他工場で増産する場合や、災害などで他工場へ移管するケースでも、すでにその製品を作っている拠点の生産BOMを共有することができ、元々生産していた工場が追加した副資材などの生産情報を確実に引き継げます。つまり、各生産拠点はDM-HUBとつながっていることで、NECグループが手掛ける様々な製品の生産を迅速に立ち上げることができるのです。
一方、外部ポータルは、ODMやEMSなどNECグループ以外の企業との間で、設計・開発情報を安全に共有するためのサーバー。DMZ(社内外から隔離されたネットワーク領域)上に置かれています。外部ベンダーは統合PDM上の設計・開発情報をこの外部ポータルを介してダウンロードできるだけでなく、設計成果物のアップロードをすることも可能です。どのベンダーがいつどういう情報を取得したかといったログについても厳密に管理されています。

図図2:Obbligato IIIをベースに開発プロセスとシステムを統合
全社ワーキンググループで定義された要件を、汎用性などに基づいて「Base」「Common」「Module」「Option」といったレイヤで整理し機能を実装しています。

導入後の成果

グローバルな競争力を備えた新製品開発のための基盤が整う

今回NECが構築した、統合PDMを中核とするこのシステムは、モバイル基地局、超小型マイクロ波通信装置(PASOLINK)、光通信装置、海底ケーブルなどの通信事業者向けネットワーク製品を開発するテレコムキャリアビジネスユニットやNECグループのICT機器の開発・生産・販売を担うNECプラットフォームズといった事業体で運用を開始。開発業務を担う国内およびインド、米国、生産拠点としてはタイ、香港、さらに販売拠点ではオランダ、オーストラリアなどの国々において活用されています。
その成果として最も重要なのが、技術アセットや人的リソースの有効活用、さらには生産マップフリー化、BCP対応など、グローバル対応力の強化という観点から重要なテーマに据えていた様々な要件を満たした基盤が整備された点です。
特にPDMの統合化が実現され、製品開発のプロセスが標準化されたメリットは大きく、グローバル市場で勝てる新製品開発を支える基盤となっていくでしょう。
「今日では、異なる事業体の製品をいくつか組み合わせ、それらの強みを融合して新たな製品として開発するケースも増えています。このとき、以前なら新製品を開発する設計者は複数の事業体ごとのシステムに実装されたプロセスやルールを理解し、使いこなす必要がありました。しかし今後はそうした面倒もなく、標準化されたプロセスさえ理解していればよいので、開発業務をよりスピーディに実践していけるようになり、また、コモンプラットフォーム化推進の基盤となります。」と松下は語ります。
また、製品の高機能化・高度化にも大きな威力を発揮すると期待されています。
「今後IoT時代を迎え、また次世代(5G)ネットワークに向けて、技術の融合がますます進み、それぞれの技術領域でのノウハウを持つ設計者が知識を出し合い、技術を結集して1つの製品を開発するというような機会も増えてくると思います。今回のシステムによって、別の部門の持つ技術アセットを有効活用したり、様々なスキルを持った人材を必要な開発現場へと流動的に配備することで、グローバル市場で競争力のある新製品をよりスピーディに生み出せるようになることを期待しています。」と大曲は強調します。
さらにコスト面でも大きな効果が見込まれています。システムの統合化により社内で分散稼働していた、システムの運用管理が極小化。運用コストだけで年間5億円のコスト削減を見込んでいます。さらに人件費や今後の開発コストなどを考慮すれば、そのコスト削減額はビジネス上も大きなインパクトを持ちます。

今後の展望

取り組みのなかで培ったノウハウを活かし日本の製造業を支援

今後、NECでは、この統合化されたPDMシステムを中核に構築された環境の活用をより広範な事業体へと順次広げ、およそ2年の間にグループ全社への展開を完了する予定です。そうした取り組みを進めるなかで、今回構築した仕組みを製品開発という上流工程だけでなく、保守やメンテナンスといった下流工程にも活かしていく考えです。
さらに、今回の取り組みで培った、複数事業体にわたるPDM統合化や業務プロセスの標準化などに関するノウハウを同社が開発・販売するPLMソリューション「Obbligato III」に取り込み、これを提供することで、製造業のお客様のグローバルビジネス拡大を強力に支援していきたいと考えています。

写真:プロジェクトメンバー

※Obbligatoは、日本電気株式会社の日本、米国、中国、香港、台湾、シンガポール、タイおよびその他の国における商標、または登録商標です。

企業プロフィール

日本電気株式会社

本社 〒108-8001 東京都港区芝5-7-1
設立 1899年7月17日
資本金 3,972億円(2014年3月末現在)
売上高 単独 1兆9,024億円、連結 3兆431億円(2013年度実績)
従業員数 単独 24,237名、連結 100,914名(2014年3月末現在)
事業内容 世界トップクラスのIT・ネットワーク技術を活かした製品・サービスの提供を通じて、企業や官公庁の情報システムを支える一方、交通管制システムや人工衛星などの社会インフラ事業にも注力。安心・安全で便利・快適に暮らせる社会づくりに貢献している。
URL http://jpn.nec.com/

(2015年03月30日)

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