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ASNARO-2

電波を使い地表を観測
高性能小型レーダ衛星「ASNARO-2」が完成

電波を使い地表を観測

高性能小型レーダ衛星「ASNARO-2」が完成

高性能小型レーダ衛星「ASNARO-2」が公開されました。NECは同衛星の開発から運用までを担当します。衛星質量570kgと小型軽量ながら、地表の1mの物体を識別可能な高い観測能力を持つ「ASNARO-2」についてご紹介します。

雲の下を、電波で“見る”

空から地表を見る――
旅客機に乗ったときの大きな楽しみです。そんな楽しみの敵は雲です。現代の旅客機は高度1万m以上の高空を飛びますが、曇っていれば窓の外に見えるのは雲の波だけとなってしまいます。
この事情は宇宙を飛ぶ衛星でも同じです。天気予報の衛星画像を見れば一目瞭然、地球はいつも大量の雲に覆われています。見たい地点の空が曇っていれば、衛星から地表を見ることはできません。
そこで電波で地表を見るレーダー衛星の出番です。光は雲に遮られますが、電波は雲を透過することができるからです。レーダー衛星を用いれば、雲の下だけではなく、火山の噴煙の下や、夜間でも地表を観測することができます。近年、国際的にも、レーダー衛星への期待が高まっています。

ASNARO-2の模型。レーダーアンテナと太陽電池を展開した軌道上での形態

2017年8月9日、NECが開発したレーダー衛星「ASNARO-2」の機体公開がNEC府中事業場で行われました。ASNARO(Advanced Satellite with New system Architecture for Observation)は、国際市場で競争力を持つ小型の地球観測衛星を開発する、経済産業省のプログラムです。NECは衛星メーカーとしてASNAROプログラムに参加し、光学衛星「ASNARO-1」とレーダー衛星「ASNARO-2」を開発しました。

完成したASNARO-2。太陽電池パドルとレーダーアンテナは折り畳まれている。本体は上半分と下半分とで色が違うが、上がミッション機器部分で下が衛星バス「NEXTAR」である

ASNARO-1は2014年に打ち上げられ、2017年現在、軌道上で運用中です。 ASNARO-2では、NECは衛星運用も担当します。「地表のここを撮る」という運用計画を決定し、画像を得るところまでを一貫して行います。

レーダー衛星を小型軽量に

可視光から赤外光で地表を観測する光学観測衛星は、太陽で照らされた地表を観測します。光源は太陽で、衛星自らがライトで地表を照らすわけではありません。対してレーダー衛星は、自ら電波を発射し、地表で反射して帰ってきた電波で画像を得ます。レーダー画像はアンテナが大きいほど高精細な画像が得られますが、アンテナが小さくても、受信データを地表のコンピュータで処理することで、仮想的に大きなアンテナで受信したのと同等の高精細画像を得ることができます。これは合成開口レーダーという技術の特徴の1つです。

レーダー衛星の最大の利点は、曇っていても夜間でも、地表を見ることができることです。欠点は、装備がかさばることです。電波を発射するには、発信器を搭載する必要があり、発信器を動かすための電力も必要です。また、衛星は電力を太陽電池から得るため、より大面積の太陽電池も必要となります。そのため、衛星が大がかりになるわけです。現在、世界各国が運用しているレーダー衛星は、1.2~2トンぐらいの質量です。
これに対してASNARO-2は、質量570kgと小型軽量です。それでいて、地表の1mの物体をも識別することが可能な、高精細画像を得ることができます。

目的を絞って衛星を小型化

ASNARO-2は高精細の画像を得ることに特化した設計をしています。「ここを観測する」と決めた場所に集中して高精細で観測することで、地表の1mの物体をも識別するという高精細画像を得るのです。
ですから、ASNARO-2は、広範囲に画像を取得できる、大型衛星と組み合わせて使うと、その威力を発揮することができます。大型衛星が地表をスキャンし「ここを撮ろう」という見当をつけた場所を、細かく観測するのに向いているわけです。
それでもASNARO-2の観測能力は「狭い場所を細かく」というだけではありません。大型レーダー衛星のように地表の広い地域を観ることもできます。その場合は、画像の解像度を少々下げる代わりに、広範囲を帯状に観測します。

衛星バス「NEXTAR」で低コスト・短期間開発

ASNARO-2の機体概要

ASNARO-2は、一方の端に合成開口レーダーのアンテナを、もう一方に太陽電池パドルを装備しています。アンテナと太陽電池パドルは、打ち上げ時には畳んであり、軌道上で展開する仕組みになっています。
写真を見ると分かるように、本体は大きく2つに分かれています。レーダーが付いている側がミッション機器部で、もう一方が電力や通信といった衛星の基本機能が載っている部分です。
この基本機能の部分のことは特に「衛星バス」といいます。衛星バスは、電源、通信系、姿勢制御系、熱制御系などの、どんな衛星であっても必ず必要な機能をひとつにまとめたものです。衛星バスがあると、異なる機能を持つミッション機器部分を搭載することで、さまざまな機能の衛星を従来よりも簡単に製造できるようになります。
ASNARO-2の衛星バスは、NECが開発した「NEXTAR」というものです。

多様なミッション機器部と簡単に組み合わせることができるように、さまざまな工夫が盛り込まれています。たとえば内部の各機器間のデータのやり取りに、パソコンのネットワークのように「配線をつなぐだけでデータをやり取りできる」仕組みを採用しています。各機器を共通配線につなぐだけで相互にデータのやり取りができるわけです。ASNARO-1も同じ「NEXTAR」を使っています。NEXTARを使用することでASNARO-1とASNARO-2は、短期間、低コストで開発することができました。

ASNARO-2の模型。レーダーアンテナと太陽電池を展開した軌道上での形態

国際的にASNARO-2のような小型のレーダー衛星に対するニーズは、益々、高まっていくと考えられています。というのも、レーダーによる地球観測には、火山活動や土砂崩れなどの自然災害の監視、変化しつづける都市の土地利用状況の把握、鉱物資源の分布を調べる資源調査、海氷の観測、船舶の監視など、さまざまな用途があるからです。
これらのニーズに応えるため、NECはこれまでの衛星開発だけではなく、ASNARO-2プロジェクトにおいては、軌道上での運用も提供します。また、将来的には、得られた画像を加工・処理して、お客様にとって重要な情報を抽出し、提供する、ソリューション・プロバイダーとしての総合的な社会的役割を果たすことを目指しています。

取材・執筆 松浦晋也 2017年9月28日

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