JA小松市様

日本を代表する製造業のノウハウを農業に応用
データに基づく改善で収穫量・品質の底上げを図る

業種:
  • 農林水産業
業務:
  • その他業務
製品:
  • その他
ソリューション・サービス:
  • サービス/その他

事例の概要

JA小松市様は、建設機械メーカーであるコマツ様と小松市様の三者で発足した「こまつ・アグリウエイプロジェクト」の一環として、トマトの収量・品質の向上を目指す施策を開始しました。具体的には、高度なものづくりノウハウを持つコマツ様の提案を受け、ハウスの環境を可視化するNECの「農業ICTクラウドサービス」を導入。温度や湿度、日照量、炭酸ガス量などの環境データを収集・蓄積し、それを分析してノウハウを抽出することで、従来の経験や勘をベースとする農業の課題を克服しようとしています。取り組みが進めば、各地域の気候や特性ごとに最適な農法も確立できると大きな期待が寄せられています。

課題背景

  • 生産者の経験や勘に頼ったこれまでの農業では、異なる天候条件や圃場の立地に対応して、収穫量、品質の底上げを図っていくことが困難でした。
  • 役立つ仕組みであっても、生産者が使いこなせなければ意味がありません。導入しやすさ、使い勝手などの条件を満たすソリューションが求められていました。

成果

「農業ICTクラウドサービス」によってハウスの温度・湿度や日照量、炭酸ガス量など、重要な指標を可視化。思っていたよりも炭酸ガス量が少ないといった、新たな“気づき”につながっています。

導入が進めば、一部の圃場で行っていた検証作業に比べてより広範なデータを分析することが可能になります。分析の精度が高まる上、地域ごとに最適な農法を検証することも可能になります。

生産者がハウスの環境などについての情報交換を行う機会が増加。ノウハウの共有や複数の意見を持ち寄った改善活動が加速しています。

導入ソリューション

センシングから環境制御までをICTの力で自動化

農業ICTクラウドサービスは、センシングの機能に加えて「営農日誌」などの管理機能、生産者や営農指導者などのための「コミュニケーション」機能、そして、センシングしたデータに基づいて、ハウスの窓を開閉したり、灌水操作を自動実行するといった「制御」機能を実装可能です。JA小松市様は、前述したセンシングの機能に加え、営農日誌、コミュニケーション機能の活用を進めています。例えば営農日誌は、各生産者が同一項目で情報を管理することで、より分析などに役立てやすくなります。
また、農業ICTクラウドサービスはクラウドサービスであるため、生産者側でシステム基盤やネットワークを用意する必要がなく、農地センサーなども状況にあわせて速やかに提供。個別にシステムを構築する場合に比べ、短期間かつ安価にサービス利用を開始できます。
今回のこまつ・アグリウエイプロジェクトでは、トマト生産者が中長期的視野に立って、データをモニタリング。そのデータを成果物の収穫量、品質などと付き合わせて分析することで、より良い栽培方法の確立に向けた改善に役立てていこうとしています。

新たな気づきを得ることができたという神田氏
新たな気づきを得ることができたという神田氏

本事例に関するお問い合わせはこちらから

事例の詳細

導入前の背景や課題

年々大きくなる気候変動の幅。生産者の経験や勘に頼る方法を見直し

石川県の南西部に広がる加賀平野の中央に位置する小松市。古くから米どころとして知られ、水稲の収穫量では県内有数を誇るほか、トマトやニンジンの生産でも県内最大の産地となっています。
同市は世界的な建設機械メーカーであるコマツ様の創業の地でもあります。そうした縁から、JA小松市様とコマツ様、小松市様は地域経済を活性化するための連携協定を締結。「こまつ・アグリウエイプロジェクト」を発足させました。「地元農産物の加工・販売を加速し、大麦やトマト、ニンジンなど特産物の付加価値向上を図ることで農業の6次産業化を推進すること。農業技術の振興や人材の育成などを重要なテーマに据えています」と小松市の橋本 健氏は言います。

小松市 経済観光文化部 環境王国こまつ推進本部 主幹 橋本 健 氏
小松市 経済観光文化部
環境王国こまつ推進本部
主幹 橋本 健 氏

また、製造業であるコマツ様が農業を支援する背景について同社の竹原 宣博氏は次のように述べます。「”ものづくり”の原点は農業であり、われわれ製造業と共通点が多い。コマツが長年にわたって培ってきた品質管理や、工程標準化などの製造ノウハウを地元農業の活性化に役立てたいと考えたのです」。

コマツ 粟津工場 プロジェクト室 主幹 竹原 宣博 氏
コマツ
粟津工場 プロジェクト室
主幹 竹原 宣博 氏

プロジェクトの始動を受け、JA小松市様がまず着手したのが収穫量・品質向上に向けた取り組みです。「自然が相手となる農業では、刻々と変わる天候条件や圃場の環境に臨機応変に対応しなければなりません。しかも、最近は酷暑が続いたかと思うと翌年は冷夏になるなど、変動の幅が大きく対応がさらに難しくなっています。収穫量や品質の底上げを図っていくには、生産者の経験に頼った従来の方法を見直す必要があると感じていました」とJA小松市の太田 洋輔氏は語ります。

JA小松市 営農部 園芸課 太田 洋輔 氏
JA小松市
営農部 園芸課
太田 洋輔 氏

選択のポイント

適正なコストで、誰でも使える分かりやすさを評価

経験や勘に頼らざるをえず、収量や品質にばらつきの出やすい農業の現状をいかに打破するか。コマツ様がJA小松市様に提案したのがNECの「農業ICTクラウドサービス」です。
これは、ハウス内に設置した各種センサーにより、圃場の温度・湿度や日照量、炭酸ガス量などの環境データを計測し、クラウドに集約するもの。PCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスからアクセスすることで、生産者は手軽にハウス内の状態をリアルタイムに把握することができるほか、蓄積したデータを分析して、収量や品質向上につながる最適な環境作りに役立てることができます。
「農業ICTクラウドサービス」の採用を後押ししたのが、数々の導入実績による安心感と導入のしやすさです。「NECの紹介で先進的な植物工場の取組みを見学させてもらいましたが、日々決められた時間に正確なデータを取り続けること、そしてそのデータを解析し改善に結びつけること。これはまさに我々製造業のQC(Quality Control)と同じだと感じ、採用を勧めたのです。機器のコストも適正で、センサーなどの取付が簡単なこと、さらにPCやスマートデバイスを利用して誰でも直感的に使いこなせることも推薦の理由となりました」と竹原氏は言います。
JA小松市様は、さっそく同ソリューションを5軒のトマト生産者に導入。「農業ICTクラウドサービスを利用することで、新たに購入する農業用機械の費用対効果を正確に把握することも可能になると考えました。例えば、炭酸ガス発生装置を稼働させるとどれくらい環境に変化があるのか、ひいては、収量や品質にどれくらいの影響があるのかを定量的に把握できます。このようにICTによってハウスの環境を見える化するというアプローチは非常に興味深く、生産者たちも『ぜひチャレンジしてみたい』と積極的な姿勢で取り組んでくれました」と太田氏は振り返ります。

導入後の成果

データに基づく現場での“気づき”を改善につなげる

農業ICTクラウドサービスでハウスの状況を見える化したことで、JA小松市様のトマト生産者は新たな気づきを得たと言います。
「小松市の場合、トマトは春秋の年2作で、越冬作型の産地に比べれば、ハウスの換気時間も長く確保できます。そのため、炭酸ガス量の濃度には、それほど気を遣う必要はないと考えていました。しかし、実際にデータを見ると、濃度が意外に低いことが判明。炭酸ガス発生装置の運転頻度を増すなどの対応が必要だということがわかりました」と生産者の一人である神田 誠氏は説明します。

JA小松市 施設園芸部会青年部 部長 神田 誠 氏
JA小松市
施設園芸部会青年部
部長 神田 誠 氏

また日々、営農指導者として、県内の生産者を支援している南加賀農林総合事務所の池端 郁美氏も、農業ICTクラウドサービスのメリットについて次のように語ります。
「これまでも、栽培方法を改善するために様々な調査を行ってきました。しかし、いずれも特定の圃場を選択して行うものだったため、得られるデータも限定的でした。しかし、農業ICTクラウドサービスの導入が広がり、出荷場において作物の品質をチェックする際に各ハウスのデータと比較できるようになれば、より網羅的かつ深い分析を行うことが可能。単なる改善ではなく、地区ごとの最適な方法を検証するなど、より高度な知見を得ることができます」

南加賀農林総合事務所 農業振興部 農業振興課 農業指導専門員 池端 郁美 氏
南加賀農林総合事務所
農業振興部 農業振興課
農業指導専門員
池端 郁美 氏

データという「数字」による明確な指標が見える化できたことによって、生産者同士が互いの方法論を持ち寄り、意見を交わし合う機会も増えました。
「互いの圃場の環境について頻繁に情報交換を行っています。私のように家業を継いで農業を始めたのではなく新たに就農した生産者にとっては、ノウハウを明確に理解できるので、非常に心強いですね。就農の障壁も下がるのではないでしょうか」と生産者の本田 雅弘氏は強調します。

JA小松市 施設園芸部会青年部 部員 本田 雅弘 氏
JA小松市
施設園芸部会青年部
部員 本田 雅弘 氏

今後の展望

分析面でもコマツの持つツールやノウハウの応用を検討

今後もJA小松市は、農業ICTクラウドサービスの活用を促進。蓄積したデータを分析し、収量と品質の向上に役立てていきます。
「分析においても、コマツの持つノウハウを提供。私たちが生産現場で活用しているデータ解析手法や品質管理方法を紹介し農作業の標準化・マニアル化の支援をしていきたい。さらに農業ICTクラウドサービスのハード機器取付け工事なども地元の企業に委託することで、地場産業の発展につながればと考えています」と竹原氏は強調します。
農業ICTクラウドサービスをベースとしたJA小松市の取り組みは、先行プロジェクトとして、こまつ・アグリウエイプロジェクトを牽引する重要な施策です。「さらなる取り組みを加速し、ぜひ“小松のトマト”を日本を代表するブランドに育てていきます」と最後に橋本氏。NECも農業ICTソリューションの提供を通じて、農業、ひいては地域経済や社会全体の成長に貢献していく構えです。

今回のプロジェクトに参加した主要メンバー
今回のプロジェクトに参加した主要メンバー

上段 左から
吉田氏(コマツ)、南出氏(JA小松市)、西村氏(JA小松市)、津島氏(南加賀農林総合事務所)
水井氏(小松市)、嶋田氏(小松市)
下段 左から
竹原氏(コマツ)、太田氏(JA小松市)、神田氏(JA小松市)、本田氏(JA小松市)
池端氏(南加賀農林総合事務所)、橋本氏(小松市)

お客様プロフィール

小松市農業協同組合(JA小松市)

所在地 〒923-8611 石川県小松市上小松町丙252
設立 1972年
組合員数 14,268人(2013年3月末現在)
概要 石川県下のJAとしては最大規模を誇る。「人とつながる 自然とつながる 次代とつながる 協同」をスローガンに、協同の力で時代の“食と農”を豊かにし、信頼され、親しまれ、愛される“くらしの拠点”としての地位確立を目指している。
URL new windowhttps://www.ja-komatsushi.or.jp/

この事例の製品・ソリューション


本事例に関するお問い合わせはこちらから

(2014年8月20日)

関連事例

Now Loading