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日米のチームが一丸となって進める光ファイバセンシング技術の世界展開

NECの最先端技術

2024年12月6日

光通信技術とAI技術で世界をリードしてきたNECでは、敷設された光ファイバから振動などの情報を感知して解析する「光ファイバセンシング」の研究を進めています。広域な実世界の認識を可能とする本技術は既に実用化が積極的に進められていますが、その背景には日本と北米のチームが一丸となって取り組む姿がありました。

光ファイバセンシング技術で、広域実世界の事象や活動を検知・予測

アドバンストネットワーク研究所
ディレクター
樋野 智之

― 光ファイバセンシングとは、どのようなものでしょうか?

樋野:光ファイバセンシングとは、光ファイバ自体を使って振動や音響や温度などの環境変化をセンシングする技術です。NECではこの技術を認識AI技術と組み合わせることで、インフラ事業者が保有する既設の通信用途の光ファイバインフラをセンサとして活用する独自技術の研究開発に取り組んでいます。新たなセンサの敷設が不要で、ファイバの線上を連続的かつリアルタイムにセンシングできるため、広域インフラを漏れなく経済的に監視できるようになります。


河野:センシングした振動や音響や温度のデータを認識AIで解析することで、現実で起こっていることを可視化するだけでなく、予測することもできます。

NEC Laboratories America
Researcher
Wataru Kohno

― 具体的な応用シーンはどのようなものでしょうか?

Yue:例えば、道路上の車両の走行速度や走行方向や車種などを検知することができます。また、街中であればハリケーンや地震、銃声、助けを求める人の声のほか、異常気象などを検知することも可能になります。


河野:この技術を活用すれば、万が一光ファイバに切断や損傷などの異常が発生しても、その場所や状態を通信事業者がリアルタイムに検知できるだけでなく、地下のファイバが工事中に切断されたのか、またはハリケーンや地震などで損傷したのかなど、詳しく把握することが可能です。これによって、通信事業者はサービス復旧のための最適な修理オペレーションが可能となります。

また、光ファイバセンシング技術は、不審物や侵入者の検知も可能です。例えば、航空会社ではプライバシーの問題から公共エリアにカメラを設置することが難しい場合がありますが、そのような状況でも光ファイバセンシング技術を用いれば、不審物や侵入者を検知することができます。す。

日米が『ワンチーム』として協力

アドバンストネットワーク研究所
主任
生藤 大典

― 日米チームのそれぞれの役割分担を教えてください。

樋野:北米チームのミッションはNECの競争優位を技術面で支えるコア技術を創出することで、日本チームのミッションは北米チームが生み出したコア技術をNECの事業として昇華させる応用研究を行うことです。日本チームはお客様の環境下の実証実験で取得した良質なデータを活用して認識アルゴリズムを創出し、改善します。加えて、日本チームには、お客様との対話を通した現場の理解という重要な役割もあります。事業部とともに現場に出向いてお客様のオペレーションを理解し、現在の困り事や事業計画から、次の技術開発の打ち手を決めるのです。NECは交通、通信、電力エネルギーなどの都市を支えるインフラ事業を数多く手がけており、長い歴史のなかでインフラ事業様との信頼関係を築きあげてきました。NECの先輩方が築いてくださったこのような信頼関係のおかげで、我々はお客様環境下で良質なデータを取得できているのだと思います。


Yue:NECはすでに日本で確固たる評判を築いており、お客様の信頼を得ている企業ですから、日本の顧客はNECに快く協力してくれることが多いですね。日本のチームとともにNECの技術をお客様に試していただき、そのフィードバックを次の研究開発に生かしています。


生藤:私は日本チームとして、日本のお客様と一緒に応用研究をしています。実際に取り組んでいるケースを一つご紹介します。

私は現在、高速道路区間での安全な自律走行を可能にするプロジェクトに携わっています。日本の高速道路会社と一緒にこのプロジェクトに取り組んでおり、光ファイバセンシング技術を活用し、高速道路上の車両の流れや道路異常などを把握しようとしています。道路異常とは渋滞や落下物、路面凍結などですね。これにより、車両に搭載されたセンサでは検知できない先読み情報を車両に提供することができるので、よりスムーズで安全な自動運転の実現にもつながると考えています。これまでの実証実験では良好な結果が得られていますので、今後の実用化を目指しているところです。


樋野:日本チームの各メンバーの業務内容ですが、私は「これがしたい。これに興味がある。」といった各メンバーの思いを大切にしています。生藤さんは技術開発だけでなく、NECの事業を通した技術の社会実装にも興味があるため、現在は、道路事業領域における応用研究のリーダーとして、道路事業者様との対話や実環境下での実証実験を事業部と進めて頂いています。ステークホルダーが多く業務が多岐にわたるため非常に大変ですが、これまでも全線監視ソリューションの事業化など大きな成果を上げて頂いています。一方、河野さんは新しい技術の創出に興味があるため、日本チームからYueさんのいる北米チームに出向して、コア技術の研究に従事中です。NECの競争優位を技術面で支える強いコア技術の創出に期待しています。


河野:樋野さんが言われた通り、私は新しい技術を生み出すことに関心があります。北米チームに入ったことで、技術的、基礎的な観点でさまざま研究を行い、新しいものを生み出そうとしているところです。


― 北米と日本の2チームが一緒に仕事をするうえで、重要な要素は何でしょうか?

Yue:共通の目標に向かって努力することと、円滑なコミュニケーションです。現在、河野さんは北米チームに所属していますが、以前は樋野さんのチームに在籍していました。日本チームは常に優秀な研究者を北米チームに送り込み、より密に協力しながら1つのチームとしての絆を深めています。そうすることで、共通の目標に向かって一体感を持って邁進することができるのです。


樋野:もちろん、時間やロケーションの違いによる難しさはあります。ただ、大事なのはYueさんが言われたとおり、同じ目標を共有することと、コミュニケーションを十分に図ることだと思います。この2つが備わっていれば、時間もロケーションも大きな問題にはなりません。北米チームからはよく「Sync Upしよう」と言われます。時間とロケーションを超えて同期することが大切です。


生藤:これは日本の事業部門との仕事でも同じですね。北米のように時差や距離の問題がなくても、事業部門と研究部門が明確な目的意識を共有することが重要です。事業部門から技術開発を依頼されたとき、「どのような目的を達成するために、なぜそれが必要なのか」を明確にすることで、手戻りのない研究活動を推進することができます。

そのためにも、事業部門やお客さまとディスカッションを重ね、一緒に同じゴールに向かって取り組んでいくことが重要だと考えています。

世界を可視化し、より良い明るい社会をつくる

NEC Laboratories America
Senior Researcher
Yue Tian

― 今後の展開として、日本だけにフォーカスしていくのでしょうか、それともグローバルなアプローチを考えているのでしょうか?

Yue:もちろん、答えは両方です。日本と北米を中心とした世界各国に展開したいと考えています。日本はNECのホームグラウンドであるため、私たちの技術をお客さまに試していただき、実用化まで進めるのに適した場所です。日本で実用化したものを、北米などその他の国に展開していきたいですね。北米は、自国の市場だけでなく、欧州、南米市場などにアクセスが良好であることに加え、通信や公共安全、セキュリティーなどの業界でリードしている魅力的な市場です。これらの業界の顧客と早期に成功を収めることができたら、日本や北米にとどまらず、自然と世界全体にチャンスが広がるでしょう。


― 今後の目標についてお聞かせください。

樋野:光ファイバセンシング技術を軸に、広域な実世界のデジタルツインを構築したいですね。安全で、止まることのない社会インフラの実現を目指しています。

近年では、予期できない異常気象や災害によって、社会インフラが停止する事象が増加しています。だからこそ、広域インフラのデジタルツインを活用した異常の早期検知や予測によって対処を最適化し、止まらないインフラの実現に少しでも近づきたいと思っています。


Yue:そうですね。光ファイバのセンシング技術を使って、環境、社会全体をよりよく理解していきたいです。そうすることで、NECのスローガンである 「Orchestrating a brighter world 」を体現していきたいと思います。

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