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光通信の鍵を握る!OSNRの基礎とその重要性とは?
2025.2.28 執筆
光通信の鍵を握る!OSNRの基礎とその重要性とは?
光通信技術において、OSNR(Optical Signal to Noise Ratio)は欠かせない指標となっています。これは信号光と雑音光の比率を示し、システムの性能評価や、光通信経路における信号の品質チェックに重要な役割を果たしています。OSNRの値は、光通信システムの各到達ポイントでの信号品質を評価するための基準として広く用いられています。
一般的に、OSNRは信号光パワー(S)と雑音光パワー(N)の比率をdB(デシベル)単位で表します。式で表すと、OSNR = 10Log(S/N) [dB] となります(SとNの単位はワット[W]です)。ここでの信号光とはデータを伝えるための光のパワーを指し、雑音光とは信号光以外の光成分、たとえば光ファイバ内での自然放出光や散乱光、他の信号による干渉などが該当します。
特に重要なのは、WDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重)光通信システムにおける光増幅器の影響です。光増幅器内部で発生する自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)は雑音レベルを上昇させ、結果として信号の品質を低下させます。こうした状況では、OSNRが優れた信号品質を確保するためのキーとなる指標として、ますます重要性を増しています。
図1では、光増幅器を通過する際の信号光スペクトルの変化が視覚的に示されています。図は、増幅器によって信号光パワーが向上する一方で、ASEによるノイズ成分が増加する様子を具体的に描写しています。

図1 信号光スペクトルが増幅されるイメージ図
OSNRの測定方法
OSNRを正確に測定することは、光通信システムの信号品質を評価する上で非常に重要です。OSNRは、計測対象の波長(または周波数)における信号光の強度と光増幅器内で発生する自然放出光(ASE: Amplified Spontaneous Emission)の強度の比として定義されています。この比は、国際電気通信連合(ITU-T)が策定するGシリーズの補足資料39の9.5.1章でも取り上げられています。図では、信号光を赤、ASEを黄色として示し、これらのレベルをそれぞれの参照光帯域幅で正確に計測することで比を求めます。
信号波長ごとに信号光と雑音光の比を正確に掴むためには、スペクトルアナライザを用いて周波数領域での計測を行います。特に増幅後の光スペクトル(橙色)は、信号光が増幅されることで得られるため、正しいOSNR値を求めるにはITU-T Gシリーズの推奨に従った補正計算が必要です。この点には特に注意し、測定を行う必要があります。
また、スペクトルアナライザの中には、増幅後の光スペクトルから補正計算を行い、正確なOSNR値を提供する解析機能を備えたものもあります。これにより、信号品質の正確な評価が可能となります。
OSNRの劣化とその影響
光通信において、光増幅器を経由する際にOSNR(光信号対雑音比)がどのように劣化するかを理解することは重要です。光増幅器は、その信号強度の増幅度を示す利得ゲイン(G)と、雑音指数(Noise Figure: NF)で特徴付けられます。これらのパラメータを用いて、増幅器の出力後における信号パワーとOSNRを計算することが可能です。
ノイズレベルは、以下の式で示されます。
Pnoise = NF x (G-1) hvBo
ここで、hはプランク定数、vは光の周波数、Boは等価雑音帯域幅です。
信号光レベルは、次のように表されます。
Pout = G x Pin
したがって、OSNRは以下で計算されます。
OSNR = Pout / Pnoise
直感的に、NF[dB]をゲインが1の場合のOSNRの劣化量[dB]として記憶しておくと、理解がしやすいでしょう。
また、WDM伝送構成では、長距離伝送を可能にするために光増幅器を一定のスパンごとに配置し、カスケードに接続する構成が多く採用されています。この構成では、各光増幅器で発生するASE雑音が累積し、OSNRが大きく変化します。図2では、増幅器の数が増えると共にOSNRが劣化する様子を示しています。

図2 OSNRの増幅器段数依存性
たとえ伝送の終端で良好な信号光パワーを維持できたとしても、ASE雑音の蓄積により、最終的な信号のOSNRは劣化します。このため、光トランシーバは、信号光パワーの受信範囲だけでなく、OSNRの耐力仕様も規定されています。もし信号光がトランシーバのOSNR耐力仕様を満たしていなければ、信号光パワーが範囲内であってもエラーが発生し、エラーフリーでの信号伝送が困難になる可能性があります。
OSNRの重要性と当社のサポートについて
この記事のテーマであるOSNR(光信号対雑音比)は、光通信の伝送設計において、光パワー損失と並んで非常に重要なパラメータです。特に、当社の製品ラインナップにあるQSFP-DD DCOやCFP2-DCOを使用するWDMコヒーレント光通信においては、光位相や偏波成分が信号情報に含まれています。このため、OSNRのみならず、PMD(偏波モード分散)耐力、PDL(偏光依存損失)耐力、SOP(偏波状態)変動耐力といった他の光パラメータも考慮する必要があります。
当社では国際標準規格を参照しながら、各光トランシーバ製品に対してこれらの光パラメータの性能値を規定しています。近年、WDMネットワークシステムを構築するお客様の中で、サードパーティ製の光トランシーバを採用するケースが増えています。これに伴い、光の伝送設計バジェットをお客様が自主的に検討する機会も増えています。
こうしたニーズに応え、当社では製品検討をされるお客様に対し、伝送路設計の支援や適切な伝送構成用品のご提案を積極的に行っております。光トランシーバの選定に関するご相談や質問については、ぜひお気軽にお問い合わせください。当社の豊富な経験と知識を活かし、最適なソリューションを提供させていただきます。信号品質の向上と最適な光通信システムの構築に向けて、一緒に歩んでいきましょう。
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