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Form Factor規格の動向 その①
光トランシーバの基礎知識
2025.2.4 H.yamamoto執筆
光トランシーバにおけるForm Factorとは?
光トランシーバには、SFPやSFP28、QSFP-DDといった種類がございます。これらの光トランシーバは、同じ名称であればメーカーが異なっても形状が一致しているのをご存知でしょうか。このような状況が実現できる理由は、異なるメーカー同士が相互に交換したり接続したりできるように、統一された規格が設けられているからです。この規格は「Form Factor」と呼ばれています。
各Form Factorの規格においては、コネクタや外形といった物理的な寸法だけでなく、ピンの配置や機能の定義、アラームやモニター機能に関する多種多様な仕様が詳細に定められています。このような標準化により、異なる製品間のスムーズな互換性が確保されているのです。
代表的なForm Factorと規格について
光トランシーバのForm Factorとその規格については、規格団体やMulti Source Agreement(MSA)によって規定されています。その代表例をご紹介します。
Small Form Factor Committee (SFF Committee)
1990年に設立され、主にストレージ機器(HDDやCD-ROMなど)の形状に関する業界標準を制定するための委員会です。その活動は1992年に拡大され、現在では光トランシーバの標準規格の策定も手掛けるようになっています。SFF Committeeが制定した規格には、規格名に「SFF-xxxx」といった番号が付されており、これによって業界内での識別が容易になっています。
Storage Networking Industry Association (SNIA)
1997年に米国にて非営利団体として発足いたしました。この団体は、ストレージネットワーク技術の発展や教育、啓発活動、そして標準化に重点を置いて活動しています。2016年には、大きな転機として、Small Form Factor Committee(SFF Committee)がその運営をSNIAに移譲することを決定しました。これによって、SFF Committeeは現在、SNIAのTechnical Work Groupとして活動を継続しています。
この移行により、SNIAは、ストレージやネットワークの標準化をさらに広範に推進する力を得ることとなり、業界全体における技術の整合性や互換性をより一層高める役割を担っています。
Optical Internetworking Forum (OIF)
1998年に非営利団体として設立されました。この団体は、光ネットワーク製品やコンポーネント技術に関するImplementation Agreements(IAs)を策定することで、相互運用可能なコンピュータネットワーク製品の開発と展開を促進しています。エンドユーザー、サービスプロバイダー、そしてメーカーが協力して、標準規格としてのIAを策定しています。 具体的な例としては、「Common Management Interface Specification(CMIS)」や「Common Electrical Interfaces(CEI)」が挙げられます。これらの規格には「OIF-CMIS-xxxx」や「OIF-CEI-xxxx」といった名称が付けられており、識別が容易です。
OIFの活動により、業界全体での技術の整合性が高まり、様々な製品や技術の相互運用性が確保される結果、ユーザーにとって使いやすいネットワーク環境の実現が進められています。
Multi Source Agreement (MSA)
複数のメーカーが光トランシーバの規格について相互互換性を持たせるために共同で決定する共通規格を指します。MSAの取り組みにより、特定の仕様を広めたいメーカーが集まり規格化を行うことが多く、これによって伝統的な規格団体に比べて迅速に規格化されることが一般的です。その結果、こうしたMSA規格が標準仕様として広く参照されることも少なくありません。
続いて、代表的なForm Factorに関して、各種仕様を規定している文書をご紹介いたします。
Form Factor | 代表的な Bitrate |
仕様定義 | 外形仕様 | ケージ 仕様 |
電気コネクタ仕様 | 電源・低速電気信号仕様 | メモリ・モニタ機能仕様 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
SFP+ | 10G | SFF-8083 | SFF-8432 | SFF-8432 | SFF-8071 | SFF-8419 | SFF-8472 |
SFP28 | 25G | SFF-8042 | SFF-8432 | SFF-8432 | SFF-8071 | SFF-8419 | SFF-8472 |
SFP56 | 50G | SFF-8042 | SFF-8432 | SFF-8071 | SFF-8419 | SFF-8472 | |
SFP112 | 100G | SFF-8042 | SFF-TA-1031 | SFF-8419 | OIF-CMIS or SFF-8472 | ||
SFP56-DD | 100G | SFP-DD MSA SFP-DD/SFP-DD112 Hardware Specification |
SFP-DD MSA MIS | ||||
QSFP28 | 100G | SFF-8665 | SFF-8661 | SFF-8663 or SFF-8683 | SFF-8662 or SFF-8672 | SFF-8679 | SFF-8636 |
QSFP-DD | 400G | QSFP-DD MSA QSFP-DD/QSFP-DD800/QSFP-DD1600 Hardware Specification |
OIF-CMIS | ||||
CFP2 | 400G | CFP MSA CFP2 Hardware Specification |
CFP MSA Management Interface Specification | ||||
OSFP | 400G | OSFP MSA Specification for OSFP Octal Small Form Factor Pluggable Module |
OIF-CMIS |
参考として、各フォームファクターの比較図を以下に記載します。

続いて、代表的なフォームファクターについて説明します。
SFP+

10Gb/sに対応した光トランシーバの規格です。2006年にSmall Form Factor Committee(SFF委員会)から最初のSFP+仕様が発表され、市場には2007年から登場しています。
この製品は、その小型さとコストの低さ、そして10Gb/sという高速なデータ伝送が可能であることから、アクセス系ネットワークからデータセンターに至るまで、幅広い領域で活用されています。特にアクセス系ネットワークにおいては、2024年時点で全世界で1,000万台以上が出荷されており、2030年までその需要が続くと予想されている、非常に人気の高いロングセラー製品です。
SFP+の標準規格については、当初、光トランシーバの機械的および電気的特性をSFF-8431によって規定していましたが、2014年にはその仕様が16Gbit/s以上に拡張され、体系化されました。それに伴い、製品の実装に必要な詳細な仕様はSFF-8083に記載されています。外形およびケージがSFF-8432、電気コネクタがSFF-8071、電源と低速電気信号がSFF-8419、そして管理用インターフェースがSFF-8472でそれぞれ規定されています。

SFP28

25Gbpsに対応した光トランシーバの規格についてご紹介いたします。この規格は、SFP+(SFP10)との後方互換性を有しており、従来のSFP+と同様に「SFP28」の実装に必要な仕様がSFF-8402に記載されています。SFP+の設計と一貫性を持たせつつ、性能を強化しています。この製品は特に5G通信用のアプリケーションに最適化されており、SFP+の10Gb/sからさらに高速化を実現し、5G通信に必要とされる大容量のデータ伝送を可能にしています。このことにより、5Gネットワークの導入が始まった2018年から市場に投入され、特にモバイルフロントホール用途での導入が進んでいます。2030年以降もその需要は継続するものと考えられています。

SFP56

50Gbpsに対応した光トランシーバの規格についてご紹介いたします。この規格は、SFP+やSFP28との後方互換性を持っており、「SFP56」として知られています。SFP28と同様に、SFF-8402を参照し、仕様についてもSFP+やSFP28と一貫性を保っています。
しかし、電気信号および光信号の伝送方式においては違いがあります。SFP+やSFP28が用いるNRZ(Non-Return-to-Zero)信号に対し、SFP56ではより高度なPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4-Level)信号を使用しています。そのため、後方互換性を有しているものの、使用する際にはデバイスがSFP56のPAM4信号とSFP+、SFP28のNRZ信号の両方を扱えるように設計する必要があります。
この製品は特に中国市場での積極的な導入が予想されており、6G通信の展開に向けた投資が始まるとされる2026年以降、急速に市場に導入される見込みです。これにより、次世代通信技術の基盤としての役割が期待されています。
いかがでしたでしょうか。 今回は、数あるForm Factorの中からいくつかをご紹介いたしました。まだご紹介できていないForm Factorも多数ございますので、それらについては後日改めてご紹介させていただきます。次回もどうぞお楽しみに!
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