板橋区立板橋第三中学校
所在地:
東京都板橋区氷川町22番3号
生徒数:
448名(2022年4月26日)
学校ホームページ
https://www.ita.ed.jp/swas/index.php?id=1320127
板橋第三中学校研究発表サイト
https://sites.google.com/ita.ed.jp/ita3jh/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0
東京都板橋区の教育研究奨励校である板橋第三中学校。
「GIGA スクール構想の実現」に向けて、一人一台端末にNECのChromebookを活用いただいております。
また板橋区とNECでは包括連携協定を結んでおり、教育のICT化を推進するプロジェクトをこれまで遂行して参りました。
学校でChromebookをどのように活用し、ICTを推進しているのか。武田幸雄校長と中井広志副校長にお話を伺いました。
研究推進委員会のメンバーによるプロジェクトチームをつくり、リーダーの主幹教諭を中心に組織的に動いたところが大きいです。週1回の研究推進委員会では、3主幹教諭が一同に会し、あらゆる視点からデジタル化を進めるために話し合っています。校内の ICT 研修や教員がやらなければならないことなど明確にし、毎週実行していく。このプロジェクトチームの活動がPDCAサイクルを継続できている点だと感じています。(中井副校長)
生徒が端末を文房具代わりに使いこなす、ということの前段には、教員が文房具代わりに使えなくてはならないんです。例えば、極端な例ですが、コンパスを使って二等辺三角形を書く時に、教員がコンパスの使い方を知らなければ、いくら指導書やマニュアルを見て勉強を教えても、本物を生徒に伝えることはできない。生徒に文房具のように使いこなしてもらいたければ、まず教員がそのように使いこなせなければならない。発端はそこからスタートしています。そのためには、どのように行動しなければならないかということ、副校長が前述したとおりのことに行き着くんです。(武田校長)
ーマインドとプロセスが合わさって今の形になっていらっしゃるのだと感じました。
使うと便利、そして働き方改革の推進になる、ということを教員たちに体感してもらうということです。まず、教員のICTスキルの現在地がどこにあるかを調べるために、スキルチェックのアンケートをフォーム( Google Forms )でとりました。毎週実施している研究推進委員会では、スプレッドシートを共有し、メンバーが同時に書き込み、文字通りたたき台にしながら、活動しています。会議内で共有と協働作業を一緒に図っていく、それが端末利用の一番大きな特長であると思います。(中井副校長)
端末を全く触ったことがなかった教員にとって、それを使うことは負担を感じるものです。車が最初に動き出す時に最大の馬力が必要なのと一緒で、ゼロからイチにするのは大変です。しかし、一度走り出してしまえば、慣性の法則で徐々に加速していくのと同じです。「端末は生徒にとって有用な学習ツールであると同時に、教員にとっても働き方改革に繋がるツール。使い方をマスターすることによってご自身の働き方を変えていける。」ということは常に伝えてきました。
とは言え、触ったことがないのに、本当に改革に繋がるのかと誰でも疑心暗鬼になると思います。
今でこそ端末を使うことは「目的ではなく手段である」と言えますが、使い始めた当初は「使うことを目的にしてください」とはっきり伝えていました。端末を使うとどんな学習に有効で、逆にアナログの授業はどんな学習に有効か、というのも使ってみなければ解らないんです。「まずは使うことを目的に、めちゃくちゃ使ってください」とお願いしました。言われれば、教員も仕方ない、と使う訳です。
使った結果「どのやり方が解りやすく、生徒にとっても良いのか」というものを取捨選択できるようになりました。そこでふるいにかけていった使い方が今生き残っているんです。
まだ足りないとは思いますが、残った方法だけを使うと、それは確実に働き方改革に繋がります。
働き方改革というのは必ずしも、自分の勤務時間が短くなるといったものだけではないんです。
同じ時間と労力を使って授業の準備をした、それに対して以前は10人中5人が理解できていたのが、今は10人中8~9人が理解できるようになってきた、これも立派な働き方改革になる。そういう意味でも、最初は端末を「目的」として使っていたけれども、今は使い方をふるいにかけていって残った方法を「手段」として使うようになって、働き方改革を実感し始めているところかと思います。それがモチベーションになっています。(武田校長)
ーなるほど。一番響いたのは「あえて使うことを目的としてください」というキーワードです。
やはり自分の知識がないことにはそもそも使えるものなのかの判断ができない、というところに繋がっていらっしゃるというのが、おもしろいです。貴校の先生方は、ちゃんと使った状態で今ICTにあてるべき施策はこれ、というのを判断されているということですね。
まだ足りないんですけどね。なんだかんだいって、Chromebookを貸与されて、授業で使えるようになって1年半ぐらいですから。(武田校長)
ー確かにそう意味ではこれから判断していかなければならないところもある。そのために、今まさにプロジェクトを継続されていらっしゃるわけですね。
全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)なども端末を使うようになりました。次の9年生(中学3年生)が全国学力テストの対象となり、スピーキングテストをします。ではテストを円滑に実施するためにはどうしたらいいのか、1単位時間の中でどう進めていくのか、またヘッドセットも数が限られているものですから、それらをうまく回していくにはどうしたらいいのか。
そのような課題を教員たちが共通理解を持って進めなければいけないのですが、中2の担当教員や研究推進委員会のメンバーが中心になりながら、Chromebookを使って共有し、対策を検討しています。最近は話すこと調査(スピーキングテスト)の準備が事例としては大きいと思います。(中井副校長)
はい、そうです。2月に事前検証②を行いました。マニュアルは正直読み込むのも大変だったんですが、私も全部読みました。もちろん、担当の教員にも全部読み込んでいただきました。全国学力テストで何が大変なのかというと、システムです。ハガキでWEBシステムのデータが送られてきて、システムにログインしてからマニュアルも含めてダウンロードする。そういう手順がここのところ進んできています。昔はWEBシステムのハガキといったらIDとパスワードだけが送られてきていたのですが、今はログインしないとマニュアルも見れないということは、教員のICTスキルもより一層高いものが求められていると感じています。その部分からしっかり整えて、事前検証②は無事終わり、次の4月の本検査のときにはおそらく大丈夫じゃないかなという見通しは立っています。(中井副校長)
ーだから、大きなトラブルやどうすればいいの?というお困りがないんだなと感じました。
それはちょっと本人に聞いてみないとわからないところですけれど本校の教員も私以上に、GIGA端末が今後の教育を変えていくというのは実感として分かっていたし、だから私以上にどう活用していけるのか、自分の教員人生にどう深くこれを関わらせることができるのかという意識は持ってくれていました。だから、いいきっかけになったと思います。
本校の研究発表のサイトをご覧になっていただければと思いますが、令和3年度4年度と研究をやってきました。令和3年度の研究を受けるためには2年度の秋に申し込まなければいけないわけです。そのタイミングで、他校がまだ端末ってどうやって使うの?という状態の時に、なぜ本校が研究に手を挙げられたかというと、端末を使うための研究をしていくんだったら、研究奨励校を受けて支援金をいただいたほうがいいという話をして、教員もそこに違和感がなかったんですよ。そのほうが一石二鳥になりますので。(武田校長)
教科でいうと、保健体育などは特徴的かと思います。働き方改革の部分では、本校のアンケートの中でも活用の点で効果が大きかったのが「出欠確認フォーム」「報・連・相フォーム」この2つです。教員や生徒からの声をきちんと受け止めるという部分でも非常に大切な機能を現時点でも発揮しています。一番大きなところであります。(中井副校長)
板橋第三中学校研究発表サイト - 授業革新 (google.com)
板橋第三中学校研究発表サイト - 働き方改革 (google.com)
本校ではGIGA端末を導入したときから、夏休み、冬休み、春休みという長期休業が明ける直前、つまり新学期の直前に、約1週間かけて、新学期に向けての不安アンケートというのをフォームで実施しています。データでも明らかになっていますが、特に夏休み明けの9月1日は中学生の自殺数が一番増えると言われています。端末がなかった時は始業式に「不安なことはありませんか、夏休み中に嫌なことありませんでしたか」というアンケートとっていました。けれども9月1日では間に合わないんです。不安がある子は始業式に学校に来ていない。また長期休み後は不登校にもなりやすい。だから、長期休みが明ける1週間前、ここでChromebookを使ってアンケートをとっています。単純に回答できる、時間がかからない、書き込みたい生徒は自由に書き込めるアンケートです。なおかつ、生徒にとっては、学校という言わば先生の目がある場所ではなく、自分の部屋などの一番安心できる場所で、本音で回答できるというメリットもあります。生徒たちの自殺や不登校の未然防止に繋がると同時に、教員も事前に生徒の状況を把握できるんです。早めの段階で生徒の不安を少しでも解消してあげたり、先生はわかっているからねというメッセージを投げかけてあげたりできるのであれば、変な言い方ですけれど、働き方改革にもなると思います。新学期になって教員は慌てなくて済む。だからそういう意味での一石二鳥でもあるんです。
「報・連・相フォーム」というのも結局同じなんですね。ここに日常的に、先生に報告したい、連絡したい、相談したい、という内容を自由に書き込める。校長宛に長文の相談が届くこともあります。校長に話を聞いてもらったとか、「今後も何かあったらいつでも話を聞くからこのフォームに書き込んでね」って声をかけるだけでも、生徒は少し安心するんです。もしこのようなツールがなければ、もしかしたら明日学校に来ていなかったかもしれないし、最悪の事態だってありえたわけです。このフォームも生徒たちを救ってあげていることになるし、手遅れになってなんであの時気づいてあげられなかったんだ、ということにはならない。働き方改革にも繋がるのかなと思います。先ほども言いましたけれど、働き方改革って単に教員の勤務時間を短くすることだけではないんです。
ー本質の部分です。定量的な数字だけではないんですね。
こういったシステムがあれば、気軽に投稿ができるということはすごく生徒さんの心の支えになってらっしゃるんですね。普段は発言しない生徒たちが何を考えているのか、このICTを使うことによって可視化されているんだなというのを感じました。
NECの端末と言えば、私も学校を卒業した後からずっと使っています。NECダイレクトでカスタマイズしたものを購入しています。キーピッチ、配置なども慣れていますし、多くの方はNECのロゴを見たときに安心するのではないでしょうか。親、教員を含め、NECでICTスキルを磨いてきた大人が多いと思うので、とてつもない安心感というのがあります。子供を持つ親目線でもそうだと思います。今までの蓄積、歴史ですね。(中井副校長)
ー嬉しいです。PCを設計している部隊が聞いたらすごく喜ぶと思います。
NECの強みは、教育に大きく関わっている企業ということです。ICT関連企業の中でも教育に知見を持っていることは非常に大きな点だと思います。現場の教員が実際に今何を課題として抱えていて、どういうことに困っているのか、また、どういう実践事例があって、こういう有効な活用をされているか、といった情報量の豊富さがあります。Chromebookの機能そのものは他社と比べてどうだとか詳しいことは分からないのですが、そういう部分で知見に富んでいるというのが、NECの強みなのかなと思います。(武田校長)
ーこういったお言葉をいただけるのは本当に勇気づけられます。ありがとうございます。
我々こそ勇気づけられました。教育というのは学校だけでは完結しない。昔から言われている地域との連携もありますが、令和の時代は、民間企業の方たちとも積極的にコンタクトをとって、いろいろな知見を我々がいただいて、それを子供たちに還元していく。というそういう時代なんだなっていうことを改めて気づかされました。
先ほどのお話からも繋がっていると思いますが、まずはシームレスな連携です。企業、行政、そして学校、それが生徒の成長に連続的に繋がっていく。いろいろな施策や、学校、業務、授業、こういったものと繋がっていくことです。その視点でみるとやはり今はスタート地点、本校の研究推進もまだスタート地点なのかなと思います。先を見据えていくと、中学生が20年後30年後、社会の中で社会の形成者として中堅どころとなった時に、みんながこのChromebookを文字通り文房具のように使い、そして周りと協働しながら作業したり、共有しながら自分のビジネスを進めていったり、そういうことに繋がっていく未来があるのかなと個人的に考えています。
(中井副校長)
ーまさに今積み上げていることが、数十年後の社会に絶対に活かされる日がくるだろう、ということですね。
今、本校の立ち位置がどこかといったら、まさにスタートなんだというのは副校長に同感です。最初に申し上げたように、GIGA端末を使うことを目的化してとにかく突っ走ってきました。木で例えるならば、枝や葉っぱはとにかく伸ばし放題、いろんな枝を伸ばせるだけどんどん伸ばしていこう、とやってきたのがこの2年間でした。そしてようやく、この部分の枝はいらない、少し剪定しよう、と剪定してある程度と整えた形が12月に行った研究サイトの発表だったわけです。けれども、まだ全然完成形ではなくて、これからさらに樹木の形を整えていく必要があります。もしかしたらその作業のほうがもっと大変になるかもしれない。
例えば、生徒の学習支援や各種フォームを使った生活支援という面もあるし、それに加えて保護者の利便性向上ということも言っています。
本校では、三者面談の出欠席アンケートの回答は、「出席します」の下に「リモートで出席」と「リアルで出席」が選べるようになっています。保護者会も同様です。三者面談も基本リモートでやっています。3年生は進路相談があるのでリアル面談も多いですが、1,2年生は基本リモート面談が中心になっている。保護者にとっては、仕事の都合で間に合わない、新型コロナの濃厚接触者になりました、という場合でも予定変更せずに面談ができます。
保護者会においても、出席者が30名いたとしたら、半分の15名以上はリモート参加というクラスもあります。そうすると「やっぱり膝と膝突き合わせてやらなきゃダメなんだよ」っておっしゃる人もいますよね。ですが、私はその前に出席率上げることが優先だと思っています。リモート参加という選択肢がなかったら、仕事が休めないから参加すらできなかった人たちがいます。リモート参加を選べるが故にその1時間だけ仕事を抜けて出席してくださっている。だから、まず大事なことは、膝と膝を突き合わせることではなくて、参加率を上げることであると。本校はそれを採用したことによって、保護者の利便性が上がり、参加率も上がりました。あとはこれからです。参加率が上がった後、このリモートを利用した保護者会や三者面談の在り方をどうしていくかというのがこれからの課題になっていくのかなというふうに思っています。(武田校長)
ー量と質というお話に通じるかもしれないですけれど、どの施策を打つにしても、これをしなければいけない、という本質に施策を打っているということをすごく感じました。その後もそのままにするのではなくて、次どうするかというところも考えていらっしゃる。そういうところがトップランナーとしてICT利活用で走られている理由なんだなと感じております。本当に勉強させていただきありがとうございます。
ー武田校長先生、中井副校長先生、取材にご協力いただきありがとうございました。
(取材編集:川村駿)
GIGAスクール構想に対応する各端末をご用意しております。
板橋区立板橋第三中学校
所在地:
東京都板橋区氷川町22番3号
生徒数:
448名(2022年4月26日)
学校ホームページ
https://www.ita.ed.jp/swas/index.php?id=1320127
板橋第三中学校研究発表サイト
https://sites.google.com/ita.ed.jp/ita3jh/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0
フリーコール:0120-977-121
受付時間…9:00~17:00(年中無休)