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NEC、次世代の緊急通報指令室における支援技術を開発
~Agentic AIで状況把握と行動決定の自動化を高精度に実現~

2025年12月2日
日本電気株式会社
NECは、警察・消防などの緊急通報を受ける指令室業務を高度化する、次世代の緊急通報指令室における支援技術を開発しました。本技術は、独自のAgentic AIを核とし、複雑な通話内容からでも状況を正確に把握するだけでなく、次にとるべき行動を提案し、必要な行動決定までの一連の業務を支援します。経験と知識が求められるオペレーター業務の負担を大幅に軽減し、熟練オペレーターと育成リソースの不足という課題解消にも貢献します。また、利用目的に応じてAgentic AIの選択やチューニングが可能であるため、企業のお客様窓口であるコンタクトセンターなど、様々なユースケースへの適用が可能です。
本技術は、NECとNECのグループ会社であるNEC Laboratories Europe(以下 NEC欧州研究所)、NEC Software Solutions UK(注1)の連携により開発されたもので、マルチ言語に対応し、適応性が高くグローバルなカスタマイズが可能です。これにより、2026年度中に、様々な国や地域で迅速かつ的確な市民・顧客対応の実現への貢献を目指します。

背景
警察・消防における緊急通報を受ける指令室や企業のコンタクトセンターのオペレーション業務は、高度な専門知識と経験を要し、オペレーターの育成には時間を要するという世界共通の課題があります。
特に指令室における緊急通報では、緊迫した状況での通報となるため、会話内容の正確な把握や迅速な判断が困難となるケースも生じ、市民生活の安全に影響を及ぼす恐れがあります。
NECはこのような課題に対して、AIを活用し、迅速かつ的確な状況判断と、瞬時の行動決定が求められる場面にも対応可能な、次世代の指令室における支援技術の開発を行いました。
本技術の効果
1:状況把握から行動決定支援までの業務の自動化
本技術は、指令室への緊急通報の会話内容をリアルタイムで解析し、抽出した重要な情報から状況分析と次にとるべきアクションを提案することで、オペレーターの把握負荷を軽減します。これにより、オペレーターは、従来よりも多くの情報に基づいた対応が可能となり、業務の迅速性と正確性を向上させることができます。
2:複雑な会話の内容を高精度に把握
緊急時における混乱した状況では、通話者の説明が分かりにくいなど、オペレーターが会話から状況を正しく把握することが困難なケースが多く発生します。本技術は専用のAgentic AIにより、会話内容の理解・分析を行い、誤った情報の混入や、会話の途中で状況が変化した場合でも、正確に緊急通報の内容を把握します。これにより、熟練のオペレーターのように安定した精度で緊急通報に対応することが可能となります。
3:多様な言語とグローバル基準に対応可能
本技術は、NEC欧州研究所が開発したAI技術を活用し、国際的に高まるAI活用への信頼性・透明性の要求に応え、様々な国や地域で使用することが可能です。適応性の高いアーキテクチャにより、欧州連合(EU)のAI規制法などの様々な基準・規格へ適合させることが可能です。さらに、英語をはじめとするマルチ言語対応を実現しているため、特定の地域に限定されない、グローバルな事業展開を見据えた汎用性の高いソリューションを提供することができます。
本技術におけるNECのAIの特長
1. 多指標の同時評価で複雑な会話の文脈理解を可能にするAgentic AI
本技術では、多様な指標をAIがリアルタイムで同時に評価・分析することで、従来のAIでは困難であった、緊急時特有の混乱した会話や、会話中に新たな要望が加わるような複雑な状況でも、その文脈を深く正確に理解することを可能にしました。この高精度な多角的分析を実現するのが、NEC独自のAgentic AIです。本Agentic AIは「会話分析」「情報管理」「行動提案」などに特化した複数の専門AIに、それぞれの役割を分担させ、緊密に連携させます。この仕組みにより、会話全体の流れから通話の状況を複合的に判断し、真に必要とされる情報を的確に抽出します。

2. 判断根拠を明示し、人命に関わる現場でも信頼されるAI処理
人命に関わる緊急通報では、AIの判断を正しく理解することが重要となります。本技術は、AIが導き出した状況判断や行動決定の根拠を明確に提示する「説明可能なAI(Explainable AI、注2)」を搭載しています。これにより、オペレーターはAIの提案に対して、その根拠を確認した上で、判断・対応することができます。誤った判断が許されない極めて重要な現場においても、こうしたAI処理により、迅速かつ的確な対応が可能になります。
3. 多様なユースケースに対応可能な高い汎用性を持つAgentic AIのアーキテクチャ
本技術は、特定業務ごとにAgentic AIを用意し、Agentic AI 同士が共同作業可能なアーキテクチャにより、様々なユースケースに迅速かつ効率的に対応できるよう設計されています。「会話分析」「情報管理」「行動提案」といった特定の役割に特化したAgentic AIに分担しているため、各Agentic AIの入替・チューニングを行うだけで、低コストかつ短期間で、異なる業務要件や業界特有のニーズに応えるチューニングが可能です。そのため、緊急通報指令室業務から企業のコンタクトセンター業務まで、幅広い分野での展開と、各現場の状況に合わせた最適化を可能にし、導入から運用までの期間短縮とコスト削減に貢献します。
NECはDXに関して、ビジネスモデル、テクノロジー、組織・人材の3軸で、戦略構想コンサルティングから実装に導くオファリングなど、End to Endのサービスを提供しています。さらに、従来型のSIerから「Value Driver」への進化を目指し、その価値創造モデルを「BluStellar(ブルーステラ)」(注3)として体系整理しました。業種横断の先進的な知見と研ぎ澄まされた最先端テクノロジーによりビジネスモデルを変革し、社会課題とお客さまの経営課題を解決に導きます。
以上
- (注1)NECの子会社で英国のITサービス企業。本社は英国ハートフォードシャー州へメル・ヘムステッド。CEOはTina Whitley。
- (注2)AIが導き出した判断や決定のプロセス、およびその根拠を、人間が理解できる形で提示する技術です。従来のAIが「なぜそう判断したか」を説明しにくかったのに対し、説明可能なAIは判断に至った要因や思考経路を明確にすることで、AIの透明性、信頼性、そして安全性を向上させます。
- (注3)

「BluStellar(ブルーステラ)」は実績に裏打ちされた業種横断の先進的な知見と長年の開発・運用で研ぎ澄まされたNECの最先端テクノロジーにより、ビジネスモデルの変革を実現し、社会課題とお客さまの経営課題を解決に導き、お客さまを未来へ導く価値創造モデルです。
https://jpn.nec.com/dx/index.html
本件に関するお客さまからのお問い合わせ先
NEC グローバルイノベーション戦略統括部
NECは、安全・安心・公平・効率という
社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる
持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/profile/purpose/