Japan
サイト内の現在位置
大阪大学D3センターとNEC、広域分散型キャンパスAI処理基盤の実用化に向けた共同実証を開始
~計算サーバから光ネットワーク経由でGPUをオンデマンド利用~2025年11月6日
国立大学法人大阪大学
日本電気株式会社
国立大学法人大阪大学D3センター(注1)と日本電気株式会社(注2、以下 NEC)は、計算サーバからGPUをオンデマンドに利用する広域分散型キャンパスAI処理基盤の実用化に向けた技術実証を共同で開始しました。本実証では、NECのIT機器の信号を高信頼・低遅延に伝送する技術「ExpEther(エクスプレスイーサ、注3)」を活用し、キャンパス内の離れた建物に設置された計算サーバとGPUをオンデマンドに接続・分離できる高性能なAI処理基盤を構築します。
近年、ゲノムデータや治験データといった機微性の高い膨大なデータに対するAI解析・利活用に対する必要性・重要性が急速に高まっています。これらのデータは厳格な管理が求められるため、不特定多数の利用者が共有する計算基盤の利用が困難であるのが現状です。そのため、安全な環境下での厳格なデータ管理を行うとともに、それらをAI解析・利活用するためのセキュアな計算環境をオンデマンドに利用できる技術が求められています。
NECのExpEtherは、通常計算機内部で利用されるPCI Expressの通信をイーサネット上で転送することで、離れた場所にあるCPUやGPU、ストレージなどのデバイスを、あたかも1つのシステム内にあるかのように高速かつシームレスに接続・分離することを可能にします。本実証は、ExpEtherを活用し、研究室の計算サーバから必要に応じて遠隔のデータセンタ内に設置されたGPUをオンデマンドに接続・分離可能な広域分散型のAI処理基盤を構築し、その有効性・有用性を検証します。また、本実証の成果をもとに、産業科学研究所(注4)をはじめとした研究所や部局などで扱う機微データを、安全に利活用可能な広域分散型キャンパスAI処理基盤の構築を目指します。

実証の概要
本実証は、大阪大学吹田キャンパス内のD3センターITコア棟にリソースプールとして設置されたGPU(NVIDIA社製H100NVL)と、本館に設置された計算サーバ(Express5800/R120j-2M)を、ExpEtherを活用して光ファイバー(100GbpsのEthernet)で接続します。この環境下で、GPUを利用するAIアプリケーションを中心に動作確認および性能検証を実施します。
キャンパス規模でオンデマンド構成可能な広域分散型計算基盤の実用化
D3センターITコア棟に集約し、リソースプール化したGPUを、遠隔の研究所や部局に設置されている計算サーバからオンデマンドに接続・分離できるようにします。この技術を展開することにより、研究室の計算サーバから遠隔設置されたGPUをオンデマンドに利用できるAI処理基盤を構築することを目指します。
GPUの集約・共有による効率化
GPUなどの高価な計算資源を共通リソースプールとして一元管理し、全学レベルでの設備投資の最適化と資源の無駄削減を実現し、GPUの利用効率向上を目指します。
将来構想
大阪大学D3センターとNECは、キャンパス内の様々な建屋内に設置された計算サーバと、リソースプール化された高性能GPUやSSDをオンデマンドに接続・利用可能とする広域分散型キャンパスAI処理基盤の構築を目指します。
D3センターでは、部局や研究グループの要望に応じて、産業科学研究所などで取り扱われる治験データやゲノム情報などの機微データを安全に運用・管理するための専用ストレージサービスも計画しています。本基盤は、機微データの厳格な運用と、ExpEtherによって実現する動的なシステム再構成性を組み合わせることで、機微データを安全に利活用可能なセキュアなAI処理基盤の実現を目指します。これにより、機微データを扱う研究活動の生産性向上に貢献します。今後、共同研究をさらに深化させ、学術研究におけるイノベーション創出に貢献していきます。
NECは、本実証で得られた知見をもとに、GPUの遠隔共有利用基盤の実用化に向けた技術課題の整理と解決を図り、2026年度にソリューションの実用化を目指します。
本実証に関する大阪大学産業科学研究所の谷口教授、D3センターの伊達教授のコメントは以下の通りです。
本実証で構築が進められている広域分散型キャンパスAI処理基盤は、本学が推進するバイオインフォマティクスプラットフォーム構想の実現にとって、非常に重要な意味を持つと考えています。複数の部局や研究科が連携し、生命科学・医学分野における膨大なデータ解析を進める上で、高性能な計算資源の柔軟な活用は不可欠です。実用化により、従来は個々の研究室や部局ごとに限定されていた計算環境が、キャンパス全体で安全かつ効率的に共有できるようになることで、部局横断型の共同研究や大規模なデータ解析が大きく加速すると期待しております。
大阪大学 産業科学研究所 教授
谷口 正輝
本実証は、生命科学・医学分野におけるAI利活用への期待・関心と機密管理の両立という課題に対する解となりえ、非常に大きな意義があります。安全な厳格な管理をされるデータ資源と、今後の学術研究に必要不可欠な高性能な計算資源をオンデマンドに接続・分離することで、任意の研究者グループに対して占有のセキュアなAI処理基盤を提供できます。従来、データセキュリテイの観点から困難であった機微データの取り扱いが可能になれば、本学の機微データを用いた学術研究領域の生産性を格段に高めることが可能になります。機微データを用いた研究でも最先端AIプラットフォームを柔軟に活用できる、分野横断・組織間連携の新たな研究形態を推進できます。バイオインフォマティクスプラットフォーム構想実現のため、本基盤の安定運用と拡張を進め、学内全体の研究イノベーションを牽引してまいります。
大阪大学D3センター 教授
伊達 進
以上
- (注1)所在地:大阪府茨木市、センター長:降籏 大介
https://www.d3c.osaka-u.ac.jp/ - (注2)本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田 隆之
- (注3)
- (注4)所在地:大阪府茨木市、所長:黒田 俊一
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC コンピュート統括部
E-Mail:contact@apfi.jp.nec.com
NECは、安全・安心・公平・効率という
社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる
持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/profile/purpose/