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大阪大学D3センター、NECが構築した新たな計算・データ基盤の運用を開始
~計算来歴を記録・管理する技術の開発・導入によりオープンサイエンスを促進~

2025年9月12日
国立大学法人大阪大学
日本電気株式会社
国立大学法人大阪大学D3センター(注1)は、日本電気株式会社(注2、以下 NEC)が構築したオープンサイエンスを促進する計算・データプラットフォーム「Osaka university Compute and sTOrage Platform Urging open Science」(以下OCTOPUS)の試験運用を本年9月から行い、12月より本格運用を開始します。
OCTOPUSは140台の計算ノード「NEC LX201Ein-1」(注3)を中心とした2.293ペタフロップスの理論演算性能を有するスーパーコンピュータです。更新前のシステムと比べて約1.5倍の性能を有するだけでなく、両者で共同開発したデータの生成過程などを自動的に記録・管理する来歴管理機能を搭載しており、研究データを社会全体で共有するオープンサイエンスの促進に貢献します(注4)。


(一般公募により最優秀となったデザインをラックに描画)

(大阪府茨木市)
近年の学術研究では、膨大なデータが日々スーパーコンピュータで解析・生成されています。一方、研究過程や結果は、研究者の手作業による記録や管理に委ねられることが多く、再現性・公正性・効率性の面で課題が指摘されています。また、オープンサイエンス推進の観点からも、研究過程の透明化と証跡管理システムの実装が求められています。
これに対して、大阪大学D3センターとNECが2021年に設立した高性能計算・データ分析融合研究基盤協働研究所の伊達所長らの研究グループは、スーパーコンピュータ上で実行される計算来歴を記録・管理する新技術SCUP-HPC(注5)を開発しました。
SCUP-HPCは、複数の高性能計算機が高速ネットワークで接続されるクラスタ型のスーパーコンピュータにおいて、どのようなデータがどのようなプログラムにアクセスされ、どのようなデータを生成するかを追跡する計算来歴を、スーパーコンピュータの性能に与える影響を最小限に抑えながら、記録・管理・可視化します。これにより、スーパーコンピュータ上で計算来歴も統合した科学計算「Scientific Computing Unifying Provenance – High Performance Computing」が可能となり、シミュレーションやAI学習などを行う科学計算用のスーパーコンピュータを用いる研究者の生産性を飛躍的に向上することが期待されます。さらに、SCUP-HPCによる来歴管理・検索サービスの活用により、権限をもつ利用者が来歴IDを用いて検索を行い、可視化された計算来歴を確認することができるようになる予定です。これにより、論文謝辞に計算来歴IDを記載(注6)して当該研究成果がOCTOPUSで計算されたことを確認できるようになり、学術研究の公正さを保証する一助となります。
NECは今後SCUP-HPCを活用したスーパーコンピュータ向け来歴管理システムを製品化する予定です。

大阪大学D3センターとNECは、今後も従来のスーパーコンピュータの応用領域に加え、産業応用やAI/ビッグデータ領域の活用基盤として、次世代高性能サーバの導入・活用を推進し、最先端の技術開発に貢献していきます。
またNECは、価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」(注7)のもと、オープンサイエンスの実現に向けて研究情報基盤を中核に据えたBluStellar Scenarioである「研究情報基盤の高度化による研究力向上」に取り組み、アカデミック領域での研究活動を支援していきます。
以上
- (注1)所在地:大阪府茨木市、センター長:降籏 大介
https://www.d3c.osaka-u.ac.jp/
- (注2)本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田隆之
- (注3)Intel Xeon 6900 P-core series搭載
https://download.intel.com/newsroom/2024/data-center/Fact-Sheet-Xeon-6-P-Core.pdf
- (注4)来歴管理機能は2025年12月より提供開始予定です。
- (注5)System for Constructing and Utilizing Provenance on High-Performance Computing Systems
本研究成果は「2025年8月11日に米国科学論文誌「IEEE Access」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“SCUP-HPC: System for Constructing and Utilizing Provenance on High-Performance Computing System”
著者名:Yuta Namiki, Takeo Hosomi, Hideyuki Tanushi, Akihiro Yamashita, and Susumu Date
DOI:https://doi.org/10.1109/ACCESS.2025.3597361
なお、本研究は、大阪大学D3センターと日本電気株式会社が同センターに設置した高性能計算・データ分析融合基盤協働研究所で行う研究の一環として行われました。 - (注6)例えば、論文謝辞に「本研究成果(の一部)は、大阪大学D3センターのOCTOPUSを利用して得られたものです。(計算来歴ID=whoami-123456789)」のように記載。
- (注7)
「BluStellar(ブルーステラ)」は実績に裏打ちされた業種横断の先進的な知見と長年の開発・運用で研ぎ澄まされたNECの最先端テクノロジーにより、ビジネスモデルの変革を実現し、社会課題とお客様の経営課題を解決に導き、お客様を未来へ導く価値創造モデルです。
https://jpn.nec.com/dx/index.html
NEC HPC ソリューションLX-neoについて
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
大阪大学D3センター
高性能計算・データ分析融合基盤協働研究所 伊達
E-Mail:date@cmc.osaka-u.ac.jp
NEC 文教・科学インテグレーション統括部
E-Mail:nec-sci@blustellar.jp.nec.com
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