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Transgene社とNEC、頭頸部がんに対する個別化ネオアンチゲンがんワクチンTG4050のさらなる有効性を確認
~米国癌学会AACR2024において、第Ⅰ相臨床試験で得られた新たなデータを発表~2024年4月10日
Transgene SA
日本電気株式会社
- 第I相臨床試験で得られた広範な免疫学データにより、頭頸部がんの術後補助療法におけるTG4050の強力な免疫原性が確認されました。TG4050の投与を受けたすべての患者さんは、18.6カ月(中央値)の追跡調査後も無再発状態を維持しました。
- 今後数週間以内に第Ⅱ相パートへの患者登録を開始します。
がん治療向けウイルスベース免疫治療のデザインおよび開発を手掛けるバイオテクノロジー企業Transgene SA(トランスジーン、注1、以下 Transgene社)と日本電気株式会社(以下 NEC)は、米国・カリフォルニア州サンディエゴで開催されている米国癌学会(AACR: American Association for Cancer Research)の年次総会で、個別化ネオアンチゲンがんワクチンTG4050(注2)の新しいデータを発表します。本内容は、本日開催のAACRプレスカンファレンスに取り上げられ、また4月10日午前9時(PDT、米国太平洋夏時間)にポスター発表を行います。
TG4050は、Transgene社のmyvac®(注3)プラットフォームに、最適ながん抗原を選択するNECの最先端AIを活用して開発したワクチンです。
今回発表する主なデータは以下です。
- 第Ⅰ相臨床試験においてTG4050を投与した16人の患者さん全員が、中央値18.6カ月の追跡調査後も無再発状態を維持しました。一方で、観察対照群の患者さん16人のうち3人で再発を確認しました。本試験に参加した頭頸部がんの患者層が標準的な治療を受けた場合、手術および術後補助療法後24カ月以内に約40%が再発すると予想されています。また、腫瘍の免疫構造、免疫因子の発現、遺伝子変異量、および腫瘍浸潤も予後の厳しさに関係します。
- 厳格な条件下で行った試験の結果、TG4050を投与された17人中16人の患者さん(TG4050治療群の16人、及び再発後に治療を受けた観察対照群の1人)で特異的な細胞性免疫応答が検出されました。一般的に免疫原性(注4)は病気の再発を防ぐ鍵であると考えられています。
- TG4050を投与した数人の患者さんにおいて、治療開始後211日(7カ月)以上にわたり、複数の標的に対する持続的なT細胞応答が誘導されていました。免疫反応の持続性は、病気の進行を制御するための重要な要素となります。
各者のコメント
Transgene社の個別化がんワクチンTG4050による第I相臨床試験のデータに対してAACRが関心を示したことを光栄に思います。TG4050を投与した患者さん全員が、18.6カ月(中央値)の追跡調査後も寛解・無再発状態を保っていることは注目に値するものであり、これは同じ期間に16人の患者さんのうち3人が再発した観察対照群と比較して順調な結果です。
さらに重要なことは、治療を受けたほぼすべての患者さんが、私たちが選択した標的抗原に対して特異的な免疫反応を示したことで、これは私たちの新しいアセットの作用機序を裏付ける強力な証拠となります。再発リスクの高い頭頸部がんの患者さんに対し、TG4050がその秘めた価値を示そうとしています。頭頸部がんの術後補助療法として、TG4050の第Ⅱ相パートを開始することを楽しみにしています。
Transgene社, Chairman and CEO, Alessandro Riva
TG4050の免疫学データは、厳格な測定基準の下でも強力かつ特異的な細胞免疫応答を示しています。これら反応の多様性、力強さ、持続性が、TG4050の治療を受けた患者さんの再発を防ぐ重要な要素であることは間違いありません。
Institut Curie, head of the clinical immunology laboratory, Dr. Olivier Lantz
TG4050の無作為化(注5)第I相臨床試験において、NECの最先端かつ独自のAIと機械学習モデルを用いることで、すべての頭頸部がんの患者さんにおいて免疫原性を持ち、かつ臨床的価値のある変異を特定することができました。頭頸部がんの腫瘍は変異量が少なく、適切なワクチン設計を難しくしています。今回のデータは、私達の強力なプラットフォームを用いることで、個別化がん治療に向けた変異を特定できることを実証しており、患者さんにとって臨床的恩恵となる兆しが見えてきました。Transgene社と協力して、頭頸部がんの術後補助療法の第Ⅱ相パートを通じ、今後も患者さんへのより良い治療の実現を目指していきます。
NEC Corporate SVP兼ヘルスケア・ライフサイエンス事業部門長 北瀬聖光
TG4050は、HPV陰性の頭頸部がんの術後補助療法における単剤治療として、無作為化多施設第I/Ⅱ相臨床試験で評価を行っています。Transgene社とNECは、本臨床試験の第Ⅰ相パート(NCT04183166)で得られた有望なデータに基づき、無作為化第Ⅱ相パートを、2024年第2四半期(4~6月)に開始するための準備を進めています。
なお、ポスタープレゼンテーションの内容はTransgene社のウェブサイトからアクセスすることができます。
以上
臨床試験について
TG4050は、HPV陰性頭頸部がん( NCT04183166)および卵巣がん( NCT03839524)の患者さんを対象とした2つの第I相臨床試験にて評価されています。
1件目の第I相臨床試験では、HPV陰性頭頸部がんの患者さんにTG4050を投与しています。手術を終え、術後補助療法を受けている間に各患者さんにあわせた治療法が設計されます。半数の患者さんには術後補助療法終了後すぐにワクチンを投与します。残り半分の患者さんには標準治療(SoC)の追加治療として、再発後にTG4050を投与します。この無作為割付臨床試験は再発リスクの高い患者さんに対するTG4050の治療効果を評価するものです。フランス、イギリス、そしてアメリカで32名の評価可能な患者さんにTG4050が投与されています。本臨床試験の治験責任医師はクラッターブリッジがんセンターの腫瘍内科顧問であり、リバプール大学の免疫腫瘍学の教授であるChristian Ottensmeier医学博士です。フランスでは、パリのキュリー研究所薬剤開発イノベーション部門長Christophe Le Tourneau医学博士、およびトゥールーズのIUCTオンコポールのJean-Pierrre Delord教授によって臨床試験が行われています。アメリカでは、メイヨークリニックのYujie Zhao医学博士が主導しています。この臨床試験の評価項目は安全性と実行可能性、および治療ワクチンの生物学的活性になります。
これと並行して、TG4050の第I相臨床試験が卵巣がん患者さんを対象に行われています。この臨床試験では、手術および一次化学療法後に無兆候性の再発をきたした患者さんを対象としています。この臨床試験はメイヨークリニック(米国)の腫瘍内科顧問、免疫科顧問、そして腫瘍学の准教授であるMatthew Block博士が治験責任医師を務め、フランスではキュリー研究所のLe Tourneau教授および、IUCT-オンコポールの外科部副部長Alexandra Martinez博士によって臨床試験が進められています。臨床評価項目は安全性、実行可能性、そして治療ワクチンの生物学的活性になります。
- (注1)本社:フランス・ストラスブール、CEO:Alessandro Riva
Transgene社について:https://www.transgene.fr/ - (注2)TG4050:TG4050はTransgene社のmyvac®テクノロジーとNECのAIをベースとする個別化免疫療法です。このウイルスベースの治療用ワクチンは、NECのネオアンチゲン予測システムによって特定・選択されたネオアンチゲン(患者さん毎に異なる変異)をコードします。予測システムは20年以上にわたって培われたAIの専門知識に基づいており、正確に最も抗原性の高い配列の選択と優先順位付けを可能にする独自のデータによって訓練されています。TG4050は患者さん固有のネオアンチゲンに基づき、腫瘍細胞を認識し排除することができるT細胞反応を引き起こすことを目的として、患者さんの免疫システムを刺激するよう設計されています。 この個別化免疫療法は患者さん毎に開発、製造されるものです。
- (注3)myvac®:myvac®は、Transgene社が固形がんをターゲットに開発したウイルスベクター(MVA-Modified Vaccine Ankara)ベースの個別化免疫療法プラットフォームです。myvac®由来の製品は、患者さん自身の免疫システムを刺激し、患者さん自身のがん特有の遺伝子変異を用いて腫瘍を認識・排除するようにデザインされています。Transgene社は、バイオエンジニアリング、デジタル・トランスフォーメーション、確立されたベクター化のノウハウ、独自の製造能力を組み合わせた革新的なネットワークを構築しています。Transgene社はmyvac®の開発のためにBpifranceより「Investment for the Future」基金を獲得しています。myvac®の最初のプロダクトであるTG4050は、現在臨床試験で評価中です。
- (注4)免疫原性:抗原などが体内で免疫応答を引き起こす能力のことです。
- (注5)無作為化(ランダム化):被験者を目的治療群(治験薬を投与して効果を調べる群)と対照群(対照薬などを投与する群)のどちらに割り振るかをランダムに決定する手法のことです。無作為化により、被験者を恣意的に特定の治療群に割り振るといったバイアスを無くし、公平に評価できます。
NECの創薬事業について
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC AI創薬統括部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com
NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/brand/