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Transgene社とNEC、個別化がんワクチンTG4050が頭頸部がんに対して特異的な免疫応答を誘導することを示す新しいデータを、米国臨床腫瘍学会ASCO2023で発表
2023年6月6日
Transgene SA
日本電気株式会社
- テトラマー染色(注1)による評価実験で、標的抗原に対する免疫反応性T細胞応答を確認しました。
- TG4050の治療を受けた臨床試験中のすべての患者さんの無再発期間の延長を確認しました。
- Transgene社とNECは、頭頸部がんの術後補助療法としてTG4050活用の可能性をさらに評価するため、第Ⅱ相臨床試験を準備しています。
がん治療向けウイルスベース免疫治療のデザインおよび開発を手掛けるバイオテクノロジー企業であるTransgene SA(トランスジーン、注2、以下 Transgene社)と日本電気株式会社(以下 NEC)は、米国・イリノイ州シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO: American Society of Clinical Oncology)の年次総会で、個別化ネオアンチゲンがんワクチンであるTG4050(注3)の新しいデータを発表しました。TG4050は、Transgene社のmyvac®プラットフォーム(注4)に、NECの最先端AI技術(注5)を活用したワクチンです。
今回発表したデータは、TG4050を評価しているランダム化第I相臨床試験(注6)に登録されたHPV陰性頭頸部がんの患者さんから得られたものです。TG4050の治療を受けたすべての患者さんにおいて、新たに実施した免疫学的研究で、特異的な免疫反応が誘導されていることを確認し、現在も無再発状態を維持していることを発表しました。
両社のコメント
今回のデータによりTG4050は、手術後の患者さんの寛解期間を延長する可能性を実証するとともに、Transgene社が個別化がんワクチンという新興分野における主導的な先駆者としての確固たる地位を確立しました。ASCOで発表した単剤療法のデータは、私たちが取り組んでいるHPV陰性頭頸部がんの術後補助療法や、潜在的には他の適応症に対する革新的な治療法の臨床試験を加速するための強固な基盤となります。
Transgene SA, Chairman and CEO, Alessandro Riva
新たな免疫学的評価データをASCOで発表したことを嬉しく思います。これはNECのAIが、免疫反応を引き起こすネオアンチゲンを予測できたことを示す心強い成果です。また、世界中の患者さんにとってTG4050が有効なワクチンとなるために、ネオアンチゲンを予測するNECのAI技術が貢献できることを物語っています。今後もTransgene社と協力してTG4050の開発を進めていくことを楽しみにしています
NEC Corporate SVP 兼 ヘルスケア・ライフサイエンス事業部門長 北瀬聖光
本発表の詳細
TG4050が、標的抗原に対して強力な免疫応答を誘導する能力を有していることを実証しました。
今回のASCO2023で発表したデータは、TG4050による治療を行った評価可能なすべての患者さんが、複数のがんネオアンチゲンに対して特異的な免疫応答を誘導したことを示しています。これらの免疫応答は、全身の免疫状態が好ましくなく、また腫瘍微小環境に困難な背景(非機能的免疫細胞の存在やPD-L1発現レベルが低いもしくは陰性)を有しているにもかかわらず、誘導されました。このような困難な背景は通常、免疫チェックポイント阻害剤を含む治療に対して限定的な反応を示します。
また、TG4050による治療後に無再発状態を維持している2名の患者さんについて、テトラマー染色により標的抗原への免疫反応性T細胞応答を評価し、報告しました。この評価では、免疫反応性T細胞の頻度が大幅に増幅されたことを確認しました。これらT細胞は、潜在的に抗腫瘍活性機能を有する細胞集団である、エフェクター細胞傷害性T細胞の特徴を有していました。今回のデータは、TG4050が抗腫瘍細胞性免疫応答を誘導できることを示しています。
TG4050の第Ⅰ相臨床試験に参加し、TG4050を投与したすべての患者さんは、現在まで無再発状態を維持しています。
2023年5月時点で、頭頸部がんに罹患している32名の患者さんに対し、TG4050のランダム化第I相臨床試験を行っています。これら32名のうち、TG4050を投与した16名の患者さん全員が無再発状態を維持しています(追跡期間の中央値は10.4カ月)。これは、同様の特徴を持つ16名の患者さんの対照群のうち2名が再発したこと、また他2名の患者さんが再発の生化学的兆候を示したことと比べて優位な結果です。これらの患者さんは現在も進行中の臨床試験で追跡調査が行われています。
現在に至るまでTG4050の忍容性は良好であり、重篤な有害事象は報告されていません。
なお、今回のASCO年次総会で発表した内容の要旨とポスターは、ASCOとTransgene社のウェブサイトからアクセスすることができます。
ASCO:https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/218595
Transgene社:https://www.transgene.fr/wp-content/uploads/Transgene_ASCO2023_Safety_Immunogenicity_TG4050.pdf
ランダム化第I相臨床試験の最終結果は2024年中盤に出る予定で、第Ⅱ相臨床試験は2023年後半に開始予定です。
このたび最後の患者さんが、頭頸部がんのランダム化第Ⅰ相臨床試験に登録されました。Transgene社とNECは、2024年中盤までに中央値18か月の追跡調査を達成する予定です。
また両社は、頭頸部がん手術後の補助療法としてTG4050の第Ⅱ相臨床試験の準備を進めており、2023年後半に開始する予定です。
以上
- 臨床試験について
TG4050は、HPV陰性頭頸部がん(NCT04183166)および卵巣がん(NCT03839524)の患者さんを対象とした2つの第I相臨床試験にて評価されています。
1件目の第I相臨床試験では、HPV陰性頭頸部がんの患者さんにTG4050を投与しています。手術を終え、補助療法を受けている間に各患者さんにあわせた治療法が設計されます。半数の患者さんには補助療法終了後すぐにワクチンを投与します。残り半分の患者さんには標準治療(SoC)の追加治療として、再発後にTG4050を投与します。この無作為割付臨床試験は再発リスクの高い患者さんに対するTG4050の治療効果を評価するものです。フランス、イギリス、そしてアメリカで最大で30名の患者さんにTG4050が投与される予定です。本臨床試験の治験責任医師はクラッターブリッジがんセンターの腫瘍内科顧問であり、リバプール大学の免疫腫瘍学の教授であるChristian Ottensmeier医学博士です。フランスでは、パリのキュリー研究所薬剤開発イノベーション部門長Christophe Le Tourneau医学博士、およびトゥールーズのIUCTオンコポールのJean-Pierrre Delord教授によって臨床試験が行われています。アメリカでは、メイヨークリニックのYujie Zhao医学博士が主導しています。この臨床試験の評価項目は安全性と実行可能性、および治療ワクチンの生物活性になります。
これと並行して、TG4050の第I相臨床試験が卵巣がん患者さんを対象に行われています。この臨床試験では、手術および一次化学療法後に無兆候性の再発をきたした患者さんを対象としています。この臨床試験はメイヨークリニック(米国)の腫瘍内科顧問、免疫科顧問、そして腫瘍学の准教授であるMatthew Block博士が治験責任医師を務め、フランスではキュリー研究所のLe Tourneau教授および、IUCT-オンコポールの外科部副部長Alexandra Martinez博士によって臨床試験が進められています。臨床評価項目は安全性、実行可能性、そして治療ワクチンの生物活性になります。
- (注1)テトラマー染色:T細胞と標的エピトープが結合する事を直接的に調べる実験手法の1つ。がんや感染症、自己免疫疾患などの免疫研究でよく用いられる。
- (注2)本社:フランス・ストラスブール、CEO:Hedi Ben Brahim
Transgene社について:http://www.transgene.fr/ - (注3)TG4050:TG4050はTransgene社のmyvac®テクノロジーとNECのAIをベースとする個別化免疫療法です。このウイルスベースの治療用ワクチンは、NECのネオアンチゲン予測システムによって特定・選択されたネオアンチゲン(患者さん毎に異なる変異)をコードします。予測システムは20年以上にわたって培われたAIの専門知識に基づいており、正確に最も抗原性の高い配列の選択と優先順位付けを可能にする独自のデータによって訓練されています。TG4050は患者さん固有のネオアンチゲンに基づき、腫瘍細胞を認識し破壊することができるT細胞反応を引き起こすことを目的として、患者さんの免疫システムを刺激するよう設計されています。 この個別化免疫療法は患者さん毎に開発、製造されるものです。
- (注4)myvac®:myvac®は、Transgene社が固形がんをターゲットに開発したウイルスベクター(MVA-Modified Vaccine Akara)ベースの個別化免疫療法プラットフォームです。myvac®由来の製品は、患者さん自身の免疫システムを刺激し、患者さん自身のがん特有の遺伝子変異を用いて腫瘍を認識・破壊するようにデザインされています。Transgene社は、バイオエンジニアリング、デジタル・トランスフォーメーション、確立されたベクター化のノウハウ、独自の製造能力を組み合わせた革新的なネットワークを構築しています。Transgene社はmyvac®の開発のためにBpifranceより「Investment for the Future」基金を獲得しています。myvac®の最初のプロダクトであるTG4050は、現在臨床試験で評価中です。
- (注5)NECのネオアンチゲン予測システム:ネオアンチゲン予測にはNECが開発したグラフベース関係性学習を利用し、標的ネオアンチゲンを予測するために、複数の生物学的データを学習させています。頑健なT細胞応答を惹起する可能性を計算するため、NEC独自のHLA結合能および抗原提示能AIツールを含む機械学習アルゴリズムを用いて、標的ネオアンチゲンは慎重に求められます。これにNEC OncoImmunityが加わり、今後もNECは世界トップクラスのネオアンチゲン予測パイプラインの強化に務め、世界中の患者さんのために個別化がん免疫療法の治療効果を最大限に引き出すことを目指します。詳細はこちらをご覧ください。
NEC:https://jpn.nec.com
NEC OncoImmunity:https://www.oncoimmunity.com/ - (注6)ランダム化:被験者を目的治療群(治験薬を投与して効果を調べる群)と対照群(対照薬などを投与する群)のどちらに割り振るかをランダムに決定する手法のことです。無作為化により、被験者を恣意的に特定の治療群に割り振るといったバイアスを無くし、公平に評価できます。
NECの創薬事業について
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC AI創薬統括部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com
NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/brand/