Japan
サイト内の現在位置

AIが加速する自律型モノづくり
PLM/ERP/MESが繋がるデジタルスレッドの世界
「AVEVA INSPIRE Operations Day」出展レポート【2026.09.16】
カテゴリ:スマートファクトリーデータドリブン経営イベント・セミナー
市場環境の変化が激しさを増す中、製造業では原材料価格の高騰や需要変動への迅速な対応が求められています。しかし、多くの企業ではPLMやERP、MESなどのシステムが個別に運用されていたり、その工場ごとに最適のシステムで運用されていたり、そもそもシステムが存在しなかったり製造現場から経営までのデータをリアルタイムに活用できていないことが課題となっています。
こうした課題に対し、2026年7月30日に開催された「AVEVA INSPIRE Operations Day」で、NECは「AIが加速する自律型モノづくり PLM/ERP/MESが繋がるデジタルスレッド※の世界」をテーマにブース展示を実施しました。展示では、激しい市場変動に対応するために必要な四つの対応力を軸に、AIやデジタルスレッドを活用した自律型モノづくりの実現に向けた取り組みを紹介しました。
本記事では、NECの担当者に、今回の展示の狙いや製造業が抱える課題、AIを活用した自律型モノづくりへの考え方について話を聞きました。
※製品の設計から製造・保守に至る全工程のデータを、デジタルで一貫して連結・追跡する仕組み
【目次】
“月次管理”による製造現場の課題
今回の展示では、激しい市場変動に対応するために必要な“四つの対応力”(最適地生産、戦略的ポートフォリオ転換、有事の対応スピード強化、グローバル工場運営(標準化))をテーマにご紹介しましたが、この一年でお客様から特に多く寄せられた課題は、事業ポートフォリオの見直しや商品戦略の転換に関するものです。背景には原材料価格の高騰があり、多くの企業で従来の原価管理の仕組みでは経営判断に必要な情報を十分に把握できなくなっています。

現在、多くの製造業では販売部門から工場までを一気通貫で繋ぎ、商品単位で原価や粗利を把握できている企業はまだ少ないのが実情です。一見すると利益が出ている商品であっても、実際には製造するほど赤字が拡大しているケースも珍しくありません。本来であれば、そうした状況を早期に把握し、販売価格の見直しや商品戦略の変更を迅速に行う必要があります。しかし、月次管理が中心の仕組みでは、問題を認識してから対策を実行するまでに数週間から一か月以上かかってしまいます。その間にも損失は積み重なり、経営判断のタイミングを逃してしまいます。
特に昨今は、国際情勢の変化や関税政策などの影響を受け、原材料価格が日々変動しています。一方、多くの工場では標準原価を前提とした管理を続けているため、実際の購入価格や市場変化を十分に反映できていません。本来は実際の原価に基づいて利益を把握し、価格転嫁や販売戦略の変更につなげるべきですが、現行の仕組みではそこまで追従できていない企業が多いと感じています。そのため、日次や週次、さらにはリアルタイムで原価を把握できる仕組みへのニーズが高まっています。
原価管理のブラックボックス化
また、MES、ERPがそれぞれ独立して運用されていることで、原価管理がブラックボックス化していることも大きな課題です。ERPでは標準原価による管理が基本ですが、実際には投入した原材料や人件費、電力費、消耗品などによって実原価は大きく変動します。さらに歩留まりの悪化や生産性の低下が発生しても、それを商品単位で特定することは容易ではありません。
例えば、ある新商品が利益を生み出すと期待されて販売を拡大したとしても、その商品だけが製造上の問題を抱えている場合、気付かないまま赤字を拡大させ続けることになります。このような状況を防ぐためには、問題を商品単位で早期に特定し、迅速に対策を講じることが重要です。しかし従来の仕組みでは、製品単位での原価を把握しようとすると生産ライン単位の原価を按分してしまうため、本当に問題のある製品の特定が困難で、特定のラインで生産している製品全般が押し並べて悪いように見えてしまいます。実際には一部の商品だけに問題があるにもかかわらず、その違いが見えないことが現場の大きな課題です。ERPとMESは強固に連携して原価管理を精緻化させることで課題解決の一助になると考えます。
AIによる自律運用の世界観
昨年度は「ERP、MES、IoT Platformをまず繋げて見える化する」ことに焦点を当てた展示を行いましたが、今年の展示では、AIによる状況判断や予測、自動フィードバックまで含めた自律運用の世界観をご紹介しました。AIを前面に打ち出した理由は、ここ数年でAIへの関心が飛躍的に高まったことが大きな背景にあります。ただし、私たちの考え方自体が大きく変わったわけではありません。以前から熟練者の暗黙知の継承や技術伝承にAIを活用してきましたが、AIはデータが整備されて初めて十分な力を発揮します。データ基盤が整っていない状態でAIだけを導入しても、その効果は限定的です。
そのため、まずMESを中心にデータを統合し、AIが活用できる状態、いわゆる「AI-Ready」の環境を構築することが重要だと考えています。現状では工場ごとに異なるシステムやデータ形式で運用されているケースが多く、個別最適の状態ではAIの効果も限定的です。まず共通基盤を整備し、その上でAIを活用することが自律型ものづくりへの第一歩になります。

データがリアルタイムに取得できるようになることで、PDCAのスピードも劇的に変わります。従来は月次管理によって問題発見から対策まで数週間から一か月程度かかっていましたが、データ基盤を整備すれば秒単位、分単位、あるいは製造ロット単位で状況を把握できます。異常の兆候を早期に検知できるため、歩留まり悪化や不良率の上昇が発生しそうな段階でアクションを起こせます。
リアルタイムで改善活動を回す
さらに、歩留まりロスや不良ロスといった原因を細かく分析できるため、設備の圧力設定やレシピ配合の変更など、現場で必要な対策へ即座につなげられます。必要に応じてアラーム通知なども組み合わせることで、リアルタイムで改善活動を回すことが可能になります。
また、PLMとMESをデジタルスレッドでシームレスにつなぐことによって、新商品の立ち上げや生産ライン切り替えも大幅に効率化できると考えます。従来は設計情報から製造情報へのマスター登録を人手で行い、多くの確認作業を経る必要がありました。そのため、新商品の規模によっては準備に数か月から一年程度かかることもありました。しかし、設計情報と製造情報が連携すれば、既存製品との共通部分を再利用できるため、本当に新しく必要な部分だけを追加すれば済みます。その結果、試作から量産までの立ち上げ期間を大きく短縮できると考えます。

災害などの有事においても、デジタルスレッドの価値は大きく発揮されます。各工場でどの製品を生産し、どれだけの余力があるのか、どの製造条件で生産可能なのかといった情報を一元的に把握できれば、生産移管やライン切り替えを迅速に判断できます。これまで数日から数週間かかっていた意思決定を、短時間で実施できるようになり、レジリエンス向上にもつながります。
デジタルスレッドによりデータを一気通貫で活用
今回の展示では、AIを活用したMES単体の機能だけでなく、周辺システムとの連携まで含めた全体像に多くのお客様が関心を寄せてくださいました。MESだけでは十分な価値を生み出せません。AIやOT領域、各種ソリューションと連携し、データを一気通貫で活用できる環境を構築することが重要です。NECの強みは、MESだけではなく、AIやOTを含めた幅広い技術を組み合わせ、お客様全体のDXを支援できる総合力にあると考えています。
現在は主に化学、食品、飲料などのプロセス製造業を中心に展開していますが、今後は設備と人が協調するハイブリッド型の組立製造業にも適用範囲を広げていきたいと考えています。周辺システムとの連携や個別の作り込みにも柔軟に対応できることが私たちのMESの特長です。

関連リンク
プロセス製造業向け製造実行システム(MES)AVEVA™Manufacturing Execution System
製造実行システム(MES)は多くの機能を持ち、製造領域におけるDXの中核的な役割を果たすことができます。
AVEVA™ MESの機能や強みを活用することでシステム乱立や紙文化などさまざまな課題を解決いたします。

お問い合わせ