Japan
サイト内の現在位置


産業用AI:成果を導く原動力
「IFS Connect Japan」イベントレポート【2025.7.16】
カテゴリ:調達・生産管理保守・サービスSCM/MES/FSM
[目次]
2025年6月4日(水)、ホテル雅叙園東京(東京・目黒区)にて3回目となるフラッグシップイベント「IFS Connect Japan」が開催され過去最多の300名近いお客様・パートナーが参加しました。今年のイベントテーマは、”産業用AI:成果を導く原動力”。産業用AIがビジネスにどのような変革をもたらすか、IFS の製品ビジョン・戦略的方向性・最新トレンドについて、お客様導入事例とともに紹介されました。
本記事ではIFS Connectにて発信された数々の最新情報を振り返ります。
【関連記事】
・IFSとNEC、戦略的パートナーシップを強化し新たな価値創造へ
・航空宇宙・防衛領域の整備業務(MRO)を効率化
【基調講演】産業用AIとビジネスの未来

基調講演ではまず、IFSジャパン株式会社 代表取締役 大熊 裕幸氏が登壇しました。今日、製造業の業績に直接にインパクトを与えるような地政学的リスクや、労働人口減少の中での技術伝承・省力化・自動化への対処が求められるなか、“テクノロジー”ではなく、便利かつ有用な“ユースケース”に関心が移っています。これに対し、IFSには250を超えるユースケースがあることが強みであるとし、また、6つの産業(製造、航空宇宙・防衛、エネルギー・ユーティリティ・リソース、サービス産業、建設・エンジニアリング、電気通信)にフォーカスすることで、ERP、EAM、FSMのガートナー ピアインサイトにおいて長年高評価である“Customer’s Choice”に選出されていることについて語りました。
さらにIFS社は創業40数年の企業ながら、未だに業界平均の3倍の成長をしていること、今後の継続的な投資にコミットしていること、またお客様からのお問い合わせが増えてきているといった近況が語られました。
1997年IFSジャパン設立当初からのパートナーであるNECについては「長きにわたり高い技術力と深い業務知識」でIFSを支援してきたと言及いただきました。
続いてIFS アジア・中東地域担当 プレジデント ハンネス リーベ氏が登壇し、日本は世界の製造拠点であり常にイノベーションリーダであると語りました。そして、AIは未来のものではなく、もう今現在足元に来ているトピックであり、将来・未来を見据え、AIを使って何をしていけばよいのか、今一度見直し、前向きに考えましょう、と述べました。

ここでハンネス氏は、AIをソフトウェア開発のコアに位置づけ推進していくという点と、AIを表面的なレイヤーへの追加ではなくソフトウェアの中に組み込むという2点をIFS社のコミットメントとしました。「AIを活用し、良い回答を得て、正しい実践を行うには背景を分かっていないといけない。そのためには表層的な追加ではなくソフトウェアの一部に組み込まなければならない」と語り、また、特定のテクノロジーに縛られず組み込んでいくためにオープンプラットフォームを作り、価値が生み出せる形を実現するとしました。

その後登壇したIFSグループ 最高執行責任者(COO) マイケル オイッシ氏は、長らく解決できなかった高齢化社会や技術を持った労働力不足といった問題にAIで対応できると語りました。IFS は6つのコア業界にフォーカスし、深い理解・知見を持ち続けることで加速度的に進化していくテクノロジーに対し価値を提供できる体制を維持し、また、有用なユースケースを提供してきました。その具体例として、デジタルサービス・サービスデリバリをAIで変革してきたKonica Minolta、50%の生産性向上を試算しているSuzuki Garphyttan、サービス管理のコンバージョン率を45%UPできたKubotaの事例が紹介されました。
アセット集中型の組織の投資判断の合理化を支えるCopperleafと労働者の効率化を図るPOKAと共に、産業用AIはIFS Cloudの中心にあるAIであり、ただの生成AIではなく、意思決定ができるAIであり、予測AIでもありエージェントAIでもあり、お客様のために働いてくれると語りました。さらに、エリートAIチームとして深い業界コンテクストを読み取り、AIを活用して競合に勝つサポートをする「IFS Nexus Black」を発表しました。
最後に、今はもうAIを使うかどうかではなくAIをどれだけスピーディにうまく使えるかがポイントであり、IFSは必要なツールと専門知識を提供し支援していくと語りました。
【製品講演】IFS.ai:産業用AIの実用化に向けて

続いての講演ではIFSテクノロジー部門 シニアバイスプレジデント(SVP) ヴァイブス クマール氏が登壇。蒸気機関が発明されてから長い年月を経たのち、産業革命において蒸気機関があらゆる産業で価値を提供する基盤となった事を例に挙げつつ、AIも同様に基盤でありIFSはこれを組み込んだプロダクトを提供し、お客様が価値を得るお手伝いをしたいと語りました。
またIFS Cloudと同様にAIも常に正確であることが重要なので、IFSに組み込まれたAIがどこでどのようにデータを使いインサイトを生み出すかをトラッキングできるようにするとともに、最高レベルのセキュリティ、安全保障、責任を持って対応すると述べました。IFSは説明フレームワークを開発し、AIがとった行動、回答の根拠を説明できるようにし、AIの知見を信頼できるものにしています。また、多くのガードレールを用意し、AIが悪さをしないようにしていると説明しました。

続いてIFS グローバル・プリセールス責任者 ジェームス グリーブス氏が登壇。一般的なChat GPTでできることとIFSに組み込まれているCopilotで実現できることについて、まず風力発電の予防保全業務のシーンを例に、デモを行いました。「IFS Copilotは業界用語・文脈を正しく理解し、IFSにアクセスしないと得ることができない様々なデータソースを元に判断を下し、ソース情報のリンクも提示することができる。さらには今後の改善につながるいくつかのアクションを考え、提案することができるので、一般的な消費者向けのAIよりも産業用AIははるかに利便性が高い」と語りました。
その他にも以下のデモが行われ、これらは未来の話ではなく、既にIFSのAIで実現できることであると語りました。
・第三者機関による監査後の対応
監査の結果何らかの是正措置を求められた場合、AIエージェントが検査結果を分析し、
優先順位も考慮したうえでワークオーダを生成することが可能。
・サプライヤ選定
ベストパフォーマンスのサプライヤ数社の抽出と見積依頼作成、見積受領後のデータ化、
ベストサプライヤの選定と選定理由の明示が可能。
・サプライヤ納期遅れへの対応
サプライヤからの連絡を受けて関連オーダの確認、影響が出る顧客、代替のサプライヤを確認し、
情報を人に提供。人による承認をうけて、オーダの変更処理を行うことが可能。

最後に登壇したIFSジャパン株式会社 執行役員 プリセールス本部 本部長 竹中 康高氏はスターターパックについて、12か月のサブスクリプション(更新要否は選択可能)であること、上限がプリセットされているのでその範囲内で自由に気軽に使えることなどを伝えました。
【カスタマーアワード授賞式】

その後、IFS Connect AWARDS 2025が発表されました。NECが導入に携わっているお客様では、株式会社SUBARU 航空宇宙カンパニー様がIFS Cloud導入事例の先駆者であるとして、Pioneer Awardを受賞されました。
Pioneer Award:株式会社SUBARU 航空宇宙カンパニー様
<導入事例>
ビジネスモデルの変化を受けて基幹システムを刷新
生産性を向上し、付加価値創出のための業務にリソースを集中
【ユーザ&パートナー企業講演】データドリブン経営で実現する企業価値の向上

ユーザ&パートナー企業講演ではNEC 製造システム統括部 エグゼクティブマネージャ 宮崎 正博が登壇し、データドリブン経営で実現する企業価値の向上について発表しました。
① NEC紹介
NECは「ITサービス」と「社会インフラ」という2つの事業を生業にしており、ITサービス事業ではコンサルティングからデリバリーまで、IFSをはじめとして様々なソリューションのインテグレーションを行っています。
また、社会インフラ事業ではネットワークインフラから航空宇宙防衛まで、社会のインフラに関連する製品の設計・製造をおこない、そこでIFSを活用しております。このようにNECは「SIer」と「製造業」という2つの側面をもち、 IFSの導入を行う「ベンダー」であるとともに「ユーザ」でもあるという、非常にユニークな存在です。
IFS社とNECのパートナーシップは長きにわたり、製番、かんばん等の日本固有機能をIFS社とNECで共同開発し、日本市場を開拓。また、2013年に製造業であるNEC自身がIFSを導入したことを機に事業拡大を加速させ、コンサルタント数は国内No1、引き続きIFS社との関係性を強化しつつ、共に成長しています。
また、NECはDXには「(NEC)社内のDX」「お客様のDX」「社会のDX」の三つの柱があると考えています。社内のDXでNEC自身が0番目のカスタマーとなる「クライアントゼロ」の考えのもと、先進的な社内DXを実践し、培ったナレッジをお客様、社会へ提供していくという考え方です。
②NEC社内のDX
NECは、社内DXとして、全社的なデータドリブン経営の実現といったコンセプトの元、企業価値向上に向けて、Corporate Transformationを推進しています。
いくつかの取り組みのうち「デジタル経営基盤の実現としてのものづくりDX」と「データドリブン経営」についてご紹介します。
・デジタル経営基盤の実現としての“ものづくりDX”
ものづくりDXを語るにあたっては、NECのものづくり改革の歴史から説明が必要です。NECでは1990年代からの工場の現場革新、お客様起点の変種変量・プル型のものづくりといったサプライチェーン改革を行い、リードタイムの短縮、在庫削減等で大きな成果を出しましたが、一方で製品・工場ごとに独自業務プロセス・システムで対応しており、拠点間での生産調整が行えないなど、グローバルな競争力の観点では大きな課題がありました。これに対して我々は2つの取り組みを行いました。
1つは、「グローバルOne Factory化」です。2011年からNECグループ全体の生産業務プロセスおよびシステムの標準化を推進したことにより、世界中どの工場でも生産できる、いわゆる「グローバルOne Factory」をIFSで実現しています。
利用規模は、9000ユーザ、14拠点というかなり大規模なリファレンスとなります。生産形態が多岐に渡っていたため、その生産形態によって、4つの類型、4つの標準業務をつくることで、全事業に対して、IFSを適用することに成功しています。またIFSはFSMでも非常に高い評価を受けており、NECでも通信機器の設置管理業務で導入し、成果を挙げています。
また、2つ目が「スマートファクトリー化」です。IoTやAIといった様々なテクノロジーを活用して、次世代のものづくりへ高度化させる取り組みを現在も推進しています。これを実現するためのデジタル基盤としてNECではIFSのソリューションを使っています。IFSをデジタル基盤として発展させ、NECの様々なソリューションや最先端テクノロジーと組み合わせることで、「スマートファクトリー化」を実現しています。
・データドリブン経営
IFS導入によりDXに向けたデジタル基盤ができたのち、ここに蓄積された様々なデータを使い如何に経営のスピードを上げていくか?企業価値を高めていくかという事に現在NECは取り組んでいます。これまでサプライチェーンの他、経理・CRM等それぞれで改革を行いデータ基盤を構築してきましたが、意思決定に必要なのは事業領域や業務領域など組織を跨いだデータ。従来は人がその間を埋めてきたので、経営の質やスピードの向上に向けての足枷となっていました。これに対し、意思決定に必要な客観的データに基づきスピーディに意思決定を行うデータドリブン経営を目指し、領域別にダッシュボードで経営指標を可視化、経営層から社員までが同じファクトに向き合え、経営層は迅速な意思決定を、社員はプロアクティブな対応ができる環境をつくり上げています。
③ お客様のDX
NEC自身の改革の取り組みや、NECが長年培ってきた、膨大な知見・実績をもとに、徹底的に「型化」されたものを提供するために、昨年度NECはDXのブランドとして「BluStellar」を発表しました。
その中には、IFSを導入するためのノウハウを結集した弊社の導入方法論としてFit to Standard型導入メソッドがあります。
特に「標準業務テンプレート」は、生産形態を4つに類型化、業務ノウハウを体系化したものであり、お客様を誘導するためのベストプラクティスとなっております。
また、パッケージ標準機能を最大限活用するためのプロジェクト推進方法と、それらを支えるNEC独自のアセットもこれまで整えてまいりました。実際にこれらを適用していくコンサルタントをNECの中で育成、IFSのパッケージ知識やドメインナレッジに加えて、NEC自社の生産革新の内容もトレーニングし、IFSを安心に、そして最速でご利用するための体制を整えております。
具体的なお客様事例として、SUBARU航空宇宙カンパニー様の事例とIFS Cloudへのバージョンアップ事例をご紹介しました。
④IFS社とのパートナーシップで描く未来
2025年5月30日IFSとNECは「戦略的パートナーシップの強化」をプレスリリースしました。
IFSとNEC、戦略的パートナーシップを強化し新たな価値創造へ (2025年5月30日):プレスリリース | NEC
今後は、さらに両社の関係性を深め、新たな価値を創造し、日本およびグローバルの製造業のお客様、そして製造業以外のお客様のビジネスに貢献していきます。
本イベント後半は、3つのテーマに分かれ、ブレイクアウトセッションが行われました。
【ブレイクアウト-製造-】データでつなぐ、製造の未来

製造のブレイクアウトセッションでは、「製品サイクルの一元管理」として、IFSを活用することで様々なマスタデータの重複管理をなくし、リアルタイムにシームレスな情報の提供、迅速な判断、変化への適応が可能となるとし、MSO(Manufacturing Scheduling & Optimization)や再製造、循環型PLM(Closed Loop Lifecycle Management)についての詳細が語られました。
また、「現場連携と作業標準による品質強化」としてPOKAのご紹介がありました。
【ブレイクアウト-航空宇宙・防衛-】AIで拓く、航空宇宙・防衛グローバルトレンドとソリューション
航空宇宙・防衛のブレイクアウトセッションでは、MRO領域にもAIが活用されるようになっており、設備計画の効率化、非活動時間の削減となり、整備士・技術者の不足にも対応できるようになると言及しました。
また、IFS社はCopperleafに戦略的な資産投資判断を支援し、コスト・リスク・資産価値のバランスを取りながら、最も価値のある投資判断を支援するソリューションを提供すると発表しました。
資産投資計画の策定から製造・整備業務の計画・実行、現場のナレッジ向上まで、
IFSは包括的なA&Dソリューションをプラットフォームとして提供すると説明がありました。
IFS.aiでは、Copilotを利用したトラブルシューティングを提案しました。
不具合への整備処置を不具合履歴やマニュアルから提案し、準備時間が75%改善される想定と紹介し、今後もMRO領域におけるIFS.aiの進化にご期待いただきたいとコメントしました。
この他、ユーザグループのブレイクアウトセッションでは、ユーザ様からのホットトピックスを中心にユーザ企業様同士やIFSグローバルの幹部を交えて活発な意見交換がなされました。
最後に
ここまで紹介してきた講演は、こちらのIFSジャパンのサイトにてオンデマンド配信されておりますので是非ご覧ください。IFS Connect Japan

関連リンク
株式会社SUBARU 航空宇宙カンパニー様事例
自動車事業と航空宇宙事業を展開するSUBARU様。社内カンパニー制を採用している同社においては、航空宇宙カンパニーが航空宇宙事業を担っています。単一プラットフォームでERPとMROを管理できる「IFS Cloud」導入により、一人ひとりが付加価値業務を主体とすることで日々進化するカンパニーを目指しています。

IFS Cloud
「IFS Cloud」は、世界的なERPベンダー・IFS社(本社:スウェーデン)のコンポーネント型グローバルERPパッケージです。「IFS Cloud」のユーザでもあるNECは、IFS社のパートナーとして、自身の製造業としての課題や取り組みをベースに、DX時代のお客様のグローバルなものづくりを支援しています。

お問い合わせ