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変化に対応するための「データドリブン型ものづくり」実現のポイント

ものづくりの未来

コンサルタントが語るものづくりDX【2022.03.16】

カテゴリ:DX・業務改革推進スマートファクトリー(IoT基盤/AI)

※この記事は、日経クロステック Specialに公開されたコンテンツを掲載しております。

【NEC コンサルティング事業部(SCMグループ)シニアエキスパート 宮辻博文】

ものづくりDXのカギを握る「マインド」「活用プロセス」「仕組み」

デジタル技術の急速な発展。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うライフスタイルとニーズの変化など、企業を取り巻く環境は、この数年で激変した。これらの変化がはっきりと示しているのは、事業環境は複雑で不確実であるということ。現在、直面している状況も再び変化し、新しい状況がやってくる。

例えば、「カーボンニュートラル」という言葉が一気に広がり、国全体で目標やビジョンを掲げる動きが加速する中、製造業に対しては、生産活動はもちろん、製品が顧客の手に渡り廃棄されるまで、すべてのライフサイクルで温室効果ガスの排出量を削減することが求められるようになっている。

このような変化を受けて、製造業が重視してきた「Q(Quality)、C(Cost)、D(Delivery)」に、現場の安全を示す「S(Safety)」、環境の「E(Environment)」が新たに加えられ「QCDSE」として表現されるようになってきた。変化への対応が切実に求められているあらわれといえよう。

では、そのための変化対応力、自己変革力を身につけるために、製造業はどのような取り組みを進めればよいのか。カギを握っているのが「ものづくりDX」である。

製造業であるNECは、自身が実践してきたものづくり革新のノウハウを生かしつつ、多くの製造業と一緒に汗をかきながらものづくりの未来を共創してきた。そうした経験から、「マインド」「活用プロセス」「仕組み」こそが、ものづくりDX実現のポイントだと気付き、その3つを柱に据えた「ものづくりDXコンセプト」を提唱。データ活用基盤の構築、人材育成、データ活用プロセスの整備など、エンドツーエンドのDX支援を行っている。

多数の製造業でものづくりDXを推進してきたコンサルタントに、今後、製造業が目指すべき方向性、変革を成功させるポイントなど、具体的な話を聞いた。

データを軸に据えてものづくりを変革していく

――コンサルタントとして製造業のDXを支援しておられます。どのような提案を行っているのでしょうか。

NEC コンサルティング事業部(SCMグループ)シニアエキスパート 宮辻博文
NEC コンサルティング事業部(SCMグループ)シニアエキスパート 宮辻 博文

宮辻: あらゆる製造業が、ますます複雑化する事業環境への対応を求められています。そのためには、変化をリアルタイムに把握して、自らが最適な状態へと変革していかなくてはなりません。この変革に必須なのがデジタル技術を活用した「ものづくりDX」。NECは、そのDXを「データドリブン型のものづくり」の実現だととらえています。

――データドリブン型とは、どのようなものづくりなのでしょうか。

宮辻: データ活用を軸に据えて、ものづくりのやり方を変革していくこと。具体的には、データを活用して「Smart Factory」と「ものづくりサステナビリティ」の実現を目指します(図1)。

まずSmart Factoryでは、データを収集・見える化・分析することで、厳しい環境変化にも耐え得る高効率なものづくりを目指します。生産ラインの自働化や自律化を図るのはもちろん、サプライチェーン、エンジニアリングチェーンを通してデータの見える化や分析を行い、ものづくりの状況をリアルタイムに把握しながら、変化の兆しを検知した際には、必要な対処を迅速に行っていける体制を整えます。

一方、ものづくりサステナビリティとは、工場内だけでなく、顧客を含めたサプライチェーン全体のデータを連携することで、いかなる環境の変化があっても、ものづくりの継続性を確保し続けること。設備や人、在庫、部品などのリソースを最大限に活かし、ダイナミックケイパビリティやレジリエンスを高める必要があります。

図1 NECが描く「データドリブン型のものづくり」の全体イメージzoom拡大する
図1 NECが描く「データドリブン型のものづくり」の全体イメージ

環境変化に耐え得る高効率なものづくりを実現するための「Smart Factory」と、設備、人、在庫、部品などのリソースを最大限に生かした「ものづくりサステナビリティ」という2つの方向性を目指す

NEC自身が社内で実践してきたノウハウをメニュー化して提供

――多くの企業がDXの実現を目指しています。既に製造業の取り組みも進んでいるのではないでしょうか。

宮辻: ほとんどの製造業がDXの重要性を感じて、取り組みを開始しています。しかし、データはあるが、有効活用には至っていないのが実情。大量のデータを蓄積してはいるのですが、工場ごと、現場ごと、部署ごとに分断されており、全社的な活用の障壁となっています。
また、人材の課題もあります。データはあっても、それを活用していこうという「マインド」がなければ、当然、データは力を発揮しません。
さらに、データドリブン型のものづくりを全社で実践していくには、マインドだけではなく、その考え方や方法が業務に落とし込まれていることが大切。データ活用の成果を正しく評価するためのKPIを設定し、「活用プロセス」を明確にする必要があります。

――それらの課題を解決し、ものづくりDXを実現するためにNECはどのような支援を行っていますか。

宮辻: 全社を横断したデータ活用の仕組みづくりだけでなく、マインドの醸成、活用プロセスの整備についてもどうあるべきかを整理し、それらを包含した「ものづくりDXコンセプト」を提唱。そのコンセプトの基で具体的なソリューションやサービスメニューを提供し、製造業のお客様を支援しています(図2)。

図2 NECの「ものづくりDXコンセプト」zoom拡大する
図2 NECの「ものづくりDXコンセプト」

NEC、顧客、パートナーの三位一体による「共創」により、「マインド」「活用プロセス」「仕組み」の3つの視点を踏まえた、ものづくりDXを推進

宮辻: マインドの醸成や活用プロセスの定着を支援するためには、「ものづくりDX改善アプローチ」「ものづくりDX人財育成プログラム」などのコンサルティングメニューを提供。ものづくりDX改善アプローチでは、豊富な経験を持つメンバーが、お客様のチームの一員となって共にデータの検証や分析、課題の定量化や改善方法のための提案を行います。また、ものづくりDX人財育成プログラムは、NEC自身が利用している教育プログラムをお客様向けに改良して提供するもの。製造業におけるデータ活用の基礎を修得し、お客様が自身で変革を進めていくための人材育成を支援します。

加えて、これらのコンサルティングサービスだけでなく、故障など設備効率を悪化させるいわゆる「7大ロス」に対応するためのノウハウなどをまとめた「ものづくりDX改善ガイド」も提供。改善の手順やコツをレシピ化したもの、製品品質に影響を及ぼす「5M(Material、Machine、Man、Method、Measurement)」に関するデータモデルなども含まれており、お客様の自律的な改善、および活動の定着化に役立てていただけます(図3)。

図3 マインドの醸成と活用プロセスの定着化を支援するサービスメニューzoom拡大する
図3 マインドの醸成と活用プロセスの定着化を支援するサービスメニュー

構想企画から人材の育成のための支援、さらには課題解消に向けたガイダンスやデータモデルも提供している

宮辻: また、社内に分散しているデータを一元化するには、単にデータを1つの場所に集めるのではなく、その後の活用を見据えて最適化しながら収集しなければなりません。また、収集したデータを価値につなげるには、変化を捉え、ダッシュボードなどの可視化の仕組みや、最適な意思決定を促すための分析環境が必要です。

NECは、製品設計や工程設計を担うPLM、調達や生産計画を支援するSCM、生産管理を行うERP、現場で製造指示や情報収集をつかさどるMESなど、ものづくりを支える幅広いシステムを提供しているだけでなく、データの集約基盤となる「NEC Industrial IoT Platform」、分析のためのAIソリューション、リアルタイム制御を実現するローカル5G、工場セキュリティなど、データ活用に必要な技術とそれらを組み合わせるノウハウも保有しており、ものづくりDXのための最適な仕組みの構築をトータルにサポート可能です(図4)。

図4 ものづくりDXを支援する仕組みzoom拡大する
図4 ものづくりDXを支援する仕組み

PLMやERP、MES、データ基盤などエンドツーエンドでのデジタル化を実現する各種ソリューションを幅広く提供している

――随所にNEC自身が社内で実践してきた経験が反映されているのですね。

宮辻: それこそがNECのものづくりDXコンセプト、およびDX支援の大きな特徴です。NEC自身、製造業として長年をかけて様々な変革を進めてきました。その過程で、様々な試行錯誤を繰り返し、ときには失敗しながら、多くのノウハウを蓄積しています。それらを余すことなくお客様に提供しています。

また、もう1つ強調したいのが、顧客とベンダーという関係性ではなく、お客様とNEC、そしてパートナー様の三位一体による「共創」を通じてものづくりDXの実現を目指すことです。単にシステムや技術を提供するのではなく、共にビジネスを創っていく視点で、ビジョンを描き、取り組むべき施策を検討する構想企画も支援し、改革を進めていく。成功も失敗も共有して、本気でDXの実現を目指します。

モデルラインにおける生産性を過去5年間で50%向上

――NECでは、ものづくりDX実現に向けてどのような取組みをしているのでしょうか。

宮辻: ハードウエア製品の開発・生産を担っているNECプラットフォームズでは、Smart Factory実現に向けてデジタルツインやAI/IoTを活用した取り組みを進めており、あるモデルラインでは生産性が50%向上(過去5年間)しています。

2021年度は、ローカル5Gとクラウドセンシング技術、NECマルチロボットコントローラを活用して、複数かつマルチベンダーのAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)のリアルタイムな制御を実現。また、品種情報やオーダー情報、部品調達や生産進捗などの最適な組み合わせ計算に量子アニーリング技術を活用し、サプライチェーン全体での生産性の最大化を目指しています。

ほかにも、多くのお客様と工場のスマート化、サプライチェーンの最適化など、それぞれのお客様に共感いただけるテーマを創出してものづくりDXに取り組んでいます。NECは、10年前から「日本の製造業を強くする!」をスローガンに、製造業の様々な業種・業態のお客様が情報交換・相互研鑽できる場として「NEC ものづくり共創プログラム ものづくり研究グループ活動」をご用意しており、この活動の中からも新しい価値が創出されています。

――既に豊富な実績があることは信頼や安心につながりますね。最後に今後の展望をお聞かせください。

宮辻: 製造業のお客様をご支援することはNECの重要な使命の1つ。製造業全体の大きなテーマであるサプライチェーンの変革、そして、サーキュラーエコノミーの要請に応えるための産業全体のサステナビリティの実現を担うべく、ものづくりDXコンセプトにさらなる磨きをかけ、今後も製造業のお客様の支援を加速させていきます。

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