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NEC官公領域メンバーによる
AWS Summit Washington, D.C. 2026 参加レポート
米国の公共部門向けAWS Summitに参加。現地で見た、政府クラウドとAI活用の最前線をご紹介します
こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのクラウド移行やAI利活用のご支援をしている堀田です。今回は、2026年6月30日~7月1日に米国ワシントンD.C.で開催された 「AWS Summit Washington, D.C. 2026」 に参加しましたので、その様子をお伝えします。

参加目的
今回、NECで主に官公庁領域を担当するメンバーで、米国ワシントンD.C.へ向かいました。日本で官公庁・自治体のお客様向けにクラウド・ガバメントクラウド移行のご支援をしている我々が、そして「AWS Summit Japan 2026」で全日程展示ブースに立ち、講演を行い、まさに足が棒になるような状況のわずか2日後(日本出国は6月28日)に、なぜ米国のイベントに参加したのか。目的は大きく2つありました。
① 米国における政府クラウドの最新状況把握
1つめの目的は、米国における政府向けクラウド-GovCloud、Secret、Top Secret-の状況を現地で直接把握することです。
<キーワード解説> 米国の政府向けクラウド環境
米国では、取り扱う情報の秘密区分に応じた専用のクラウド環境が用意されています。AWSの場合、管理された非機密情報(CUI)を扱う「AWS GovCloud (US)」、機密(Secret)レベルのワークロードに対応する「AWS Secret Region」、そして最高機密(Top Secret)に対応する「AWS Top Secret Region」が運用されています。
日本のガバメントクラウドは、デジタル庁が定める要件に基づき、複数のクラウドサービス事業者を選定する形で運営されています。行政機関における業務で取り扱う情報のうち、機密性2情報までを扱うことができます(自治体の機密性区分については割愛します)。一方、米国では機密区分ごとに専用のクラウド環境が用意され、運用されている実績があります。この違いは、単なる制度設計の差にとどまりません。「政府が扱う情報の機微さに、クラウドがどこまで応えられるのか」という問いに対する、解の一つだと考えています。もちろん、米国CLOUD Actの影響考慮の有無など、単純に日本と米国を比較することはできませんが、クラウドでの情報の取り扱い方とその運用状況は非常に参考になると考えました。
日本でも、ガバメントクラウドの適用領域は着実に広がっています。今後どのような要件が求められ、クラウド基盤側がどう応えていくべきか。その先を考えるうえで、米国の状況を実際に確認したいと考え、参加しました。
② AWS社とのEBCでのディスカッション
2つめの目的は、AWS社との EBC(AWS Executive Briefing Center) におけるディスカッションです。
<キーワード解説> EBC(AWS Executive Briefing Center)
AWSのリーダーや各分野の専門家と、顧客・パートナーが個別に議論を行うためのプログラムです。あらかじめテーマを設定したうえで、自分たちが抱える課題を持ち込み、AWSの最新の知見やサービスロードマップを踏まえて解決の方向性を一緒に考えていく場となります。単なる製品説明の場ではなく、双方向の議論を通じて次のアクションまで踏み込むことを目的としています。
NECとAWSは、2020年に日本初となるコーポレートレベルでの戦略的協業を締結して以来、強固なパートナーシップを築いてきました。今回のEBCでは、日本の官公庁領域におけるクラウド運用上の課題感について、AWS社と直接ディスカッションをする貴重な機会を得ることができました。
開催日程
「AWS Summit Washington, D.C.」は、主に米国の公共部門(行政機関、教育機関、非営利団体など)を対象としたAWSの大規模イベントです。2026年は以下の日程で開催されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | AWS Summit Washington, D.C. |
| 会期 | 2026年6月30日(火)~7月1日(水) |
| 会場 | Walter E. Washington Convention Center(米国ワシントンD.C.) |
| 参加費 | 無料 |
| セッション数 | 350以上 |
| 日程 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 6月29日(月) | 12:00~18:00 | 事前バッジピックアップ |
| 6月30日(火) | 8:00~18:00 | バッジピックアップ/Expo |
| 8:30~17:30 | ブレイクアウトセッション | |
| 11:00~12:15 | 基調講演(Keynote) | |
| 12:30~14:00 | ランチ | |
| 17:00~18:00 | ネットワーキングレセプション | |
| 7月1日(水) | 8:00~17:00 | バッジピックアップ |
| 8:00~15:00 | Expo | |
| 8:30~16:15 | ブレイクアウトセッション | |
| 12:00~14:00 | ランチ | |
| 17:00 | クローズ |
会場では、350を超えるセッションのほか、AWSの最新技術に触れられる「AWS Village」、業種別の課題に対応する「AWS for Industries Zone」、トレーニング&認定の相談コーナー、そしてGameDayなどのハンズオン企画も用意されていました。AWS re:Inventに参加されたことがある方でしたら、re:Inventと非常によく似た雰囲気であることが分かると思います。「AWS Summit Japan」は展示ブースがメインですが、「AWS Summit Washington, D.C.」では、展示ブース(Expo)もさることながら、re:Invent同様のセッションが活況でした。re:Inventとは異なり、セッション予約は不要で、気ままにセッションに参加することができました(もちろん、満席でなければ…)。
- 出典:AWS Summit Washington, D.C.
https://aws.amazon.com/events/summits/washington-dc/

Keynote内容
初日の基調講演はAWS Worldwide Public Sector, Healthcare and Life Sciences担当バイスプレジデントの Dave Levy氏 によって行われました。講演は「1876年のフィラデルフィア万国博覧会」の話から。実は2026年はアメリカの建国250年にあたります。主にテクノロジー面での米国の歴史の振り返りから、Keynoteの幕が開けました。
「正しい道具さえあれば、普通の人が並外れたことを成し遂げられる」
Keynoteの冒頭で示されたメッセージですが、非常に感銘を受けるメッセージでした。「AWSが提供したいのもまた“誰もが発明者になれる基盤”なのだ」というクラウドサービス事業者であるAWSらしいメッセージが続きました。講演全体を貫くキーメッセージだったと感じます。
主な発表
講演では、公共部門向けの発表が矢継ぎ早に行われました。日本の官公庁・自治体の文脈で押さえておきたいものを中心に整理します。
| 分野 | 発表内容 |
|---|---|
| インフラ投資 | GovCloud/Secret/Top Secretの各リージョンにおけるAI・スーパーコンピューティング基盤の拡張に大規模な投資 |
| 研究・防衛支援 | 「AWS Genesis Accelerator」「AWS Warfighter Capability Accelerator」の2プログラムで、大規模なAWSクレジットを提供 |
| 情報機関向け | Intelligence Community Accelerated Modernization Framework を発表。インテリジェンス・コミュニティのクラウド移行に向けた大規模投資 |
| 防衛産業向け | AWS Secret Cloud for Industry を発表。防衛産業基盤のパートナーが国防総省と同じAWS Secretリージョンを利用可能に |
| 生成AI基盤 | Amazon Bedrock がGovCloud/Secret/Top Secretの各リージョンで利用可能に。選択可能なモデル数も約2倍に拡大 |
| 開発支援 | 仕様駆動開発IDE Kiro を紹介。商用クラウドで提供中、Secret/Top Secretリージョンへも提供予定 |
政府クラウドに向けた主な発表は上記です。
素晴らしい!
…でしょうか?「え?いまから??」と感じる方も多いのではないでしょうか。一般のAWS商用リージョンや日本のガバメントクラウドではすでに対応できているような事項が、Keynoteで大々的に発表されています。クローズドな専用クラウドにおけるセキュリティとスピードとのトレードオフを強く感じた瞬間でした。
印象に残ったメッセージ
① 「レガシーシステムにAIというラベルを貼っているだけではないか」
電気が発明された当初、工場主は蒸気機関を電動モーターに置き換えただけで、工場のレイアウトも作業の流れも変えなかった。結果、効率は5%程度しか上がらず「何のための騒ぎだったのか」と首をかしげた、という比喩が示されました。本当の変革は動力源の置き換えではなく、工場の設計そのものを描き直すことにあった、と。企業でのAI利用のほとんどがPoCから先に進めず苦労している状況をよく耳にします。それを示唆するメッセージでした。
AWS Summit Japan 2026で、弊社ブースに来ていただいた方からもAIでの業務活用についてのご相談を多数いただきました。まず既存の業務フローを整理し、ボトルネックとなっている箇所や工数を要している箇所を特定することが業務へのAI活用の第一歩だと私は考えています。その点でとても納得感のあるメッセージでした。
② 「Kiroが生成する仕様が、そのまま監査証跡になる」
Kiroは仕様と設計上の意思決定、変更履歴を記録していくため、これまで別工程として扱われてきたコンプライアンス文書の作成が、ソフトウェアを作る過程の副産物として自然に生まれる、という説明がありました。仕様駆動開発に対して、とても面白い捉え方だと思います。Steering/Skillsやリポジトリの整備もセットで行う必要はあると思いますが、ぜひ取り入れてみたいと思いました。
③ 「最終的にどの道を選ぶかを決めるのは、人間の判断である」
ゲストのJohn Ratcliffe氏(米国中央情報局(CIA)長官)のメッセージです。現在、責任の主体はまだ人間にあるため、当たり前の内容ではあります。しかし、AI駆動開発をしていると、無意識(意識的に?)に判断をAIにゆだねている場面があります。
このSummit期間中に、Anthropicから、一般提供が停止されていた大規模言語モデル「Claude Fable 5」の利用再開がアナウンスされました。従来以上に複雑な問いに対しても高精度で回答が生成されます。そして、この回答精度および速度は、今後も向上し続けるでしょう。どこまでを人が判断して、どこまでをAIにゆだねるのか。QCDのバランスも相まって、今後も常に議論が続くのは間違いありません。その判断のためにも、AIの最新状況を常に取り込んでおくことが重要だと感じます。

ゲスト登壇者
基調講演には3名のゲストが登壇しました。いかにも公共部門向けイベントらしい顔ぶれです。ゲストの発言については割愛しますが、いずれもAIに対しての高い期待が述べられていました。なお、全員がスーツ姿で登壇しており…こちらも、さすが公共部門向けイベントだと感じました。
| 登壇者 | 肩書 |
|---|---|
| Chris Wright氏 | 米国エネルギー省長官 |
| Sonia Patel氏 | 英国政府 最高技術責任者(CTO) |
| John Ratcliffe氏 | 米国中央情報局(CIA)長官 |
まとめ
本Summitに参加し、今後の日本でのクラウド活用に向けて非常に良い示唆を得られました。また、各EBCでもとても建設的な議論ができました。「公共部門領域には、公共部門領域の道がある」というのが率直な感想です。これはどの業種にも同じことが言えるのかもしれません。官公庁・自治体での前提やルール、ナレッジを踏まえたうえで、加速し続けるクラウド・AIテクノロジーに追従し、有効に活用できるかどうか。それが我々の重要なミッションだと、あらためて感じました。

官公インフラDX事業部門 官公ソリューション統括部 佐藤 崇紀
官公インフラDX事業部門 政策協働グループ 伊藤 哲平
官公インフラDX事業部門 官公ソリューション統括部 堀田 佳宏
右:官公インフラDX事業部門 小松 正人
ところで…
EBCでのディスカッション アイスブレイクに向け、AWS AmbassadorsのGolden Jacketを現地で着込んだのですが、様々な人に話しかけられ、人だかりができ、写真を撮られ、自撮りに巻き込まれ…と、予想もしていなかった反応に驚きました。AWS Summit Japanでは、各社展示ブースでGolden Jacketを着たAmbassadorが説明対応をして…いましたよね? 私自身は見慣れた光景だと思っていましたが…広いアメリカではレアキャラなのかもしれません。(なお、アイスブレイクに大いに役立ちました)
参考:現地状況


さいごに
AWS re:InventやAWS Summit Japanとはまた違った、業種色の強いイベントでした。ただ、その最新動向や考え方など、実際のコミュニケーションから得られる情報の量と解像度には、圧倒的な価値があると考えています。
NECではこのようなグローバルでの官公庁領域の最新状況をキャッチするとともに、引き続きガバメントクラウドおよびクラウドに関するトータルサポートをご提供しております。クラウド検討や生成AI活用の良きパートナーとして、ぜひお気軽にご相談ください!
公開日 2026/8/27
本コラム内容は公開日の時点の情報を基に記載しています。

執筆者紹介
堀田 佳宏(ほった よしひろ)
NEC
官公インフラDX事業部門
官公ソリューション統括部
上席プロフェッショナル
2026 Japan AWS Ambassadors
2026 Japan AWS Top Engineers(Services)
2026 Japan All AWS Certifications Engineers
学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。
