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米国のガバメントクラウド
デジタル・ガバメントコラム
2026年8月5日公開
本コラムでは、日米のガバメントクラウドを取り上げ、制度や運用、セキュリティ要件などの違いについて解説します。
INDEX
1 はじめに
日本では中央官庁や地方公共団体の各種システムについて、ガバメントクラウドへの移行が進んでいます。デジタル庁の資料によると2026年3月末時点で中央官庁の164システム、地方公共団体の1676団体がガバメントクラウドを利用している状況にあります。今後、2030年までに、ほぼ全ての中央官庁、地方公共団体が何らかのシステムでガバメントクラウドを利用することになると予想されます。
このガバメントクラウドですが、米国では日本より前に整備・運用されています。本コラムでは、米国と日本のガバメントクラウドの全体像を比較してみます。
2 日米ガバメントクラウドの比較
以下の表は、米国と日本のガバメントクラウドについて、日本で最も多くの中央官庁・地方公共団体に採用されているAWSを例に概要を比較したものです。

左の列から「官民問わず利用されている商用のパブリッククラウド」「官公庁向けパブリッククラウド」「官公庁向け専用クラウド」「防衛等向け専用クラウド」「諜報機関向け専用クラウド」のカテゴリに分けています。このうち、日本のガバメントクラウドは「官公庁向けパブリッククラウド」、米国のガバメントクラウドは「官公庁向け専用クラウド」に該当します。この両者を比較してみましょう。
(1) 最新サービス提供速度、パッチ適用速度
境界防御の観点からすると米国の専用クラウドの方がセキュリティ面で優位に見えますが、専用クラウドといってもインターネットにはNIPRNET(米国国防総省専用網)経由でつながっているため(インターネットからNIPRNETへのアクセスは厳密に管理されているとのことですが)、運用するシステムへのパッチ適用のタイミングが遅れることがリスクとなります。特にフロンティアAI(Claude Mythos等)の誕生で今後は大量のパッチ適用が必要な時代に突入することとなり、この傾向は顕著となっていくと考えられます。また、AI等の様々な最新サービスのリリースタイミングも「専用クラウド」は商用よりも遅くなるようです。筆者は7月初旬に米国ワシントンDCでガバメンド向けAWSサミットに参加したのですが、商用のパブリッククラウドでは既に利用可能なサービスを米国のAWS GovCloudで提供開始するという発表があり、この点を実感しました。
他方、日本のガバメントクラウドは、パブリッククラウドを利用しているため、このパッチ適用は商用パブリッククラウドと同じタイミング、最新サービスリリースも同じタイミング(一部のサービスはガバメントクラウドで利用できない制限あり)となります。この点が日米のガバメントクラウドを比較する上で最も大きな違いといえます。
(2) データ主権、運用主権
次にデータ主権については、専用クラウドは一般的にデータ主権が確保されているとして、パブリッククラウドの場合には、BYOK(Bring Your Own Key)等で鍵をユーザ側で保管することで他者のデータ閲覧を技術的には防げると考えられます。また、運用主権については、専用クラウドの方が有利です。但し、AWSの場合には、AWS TSE-VPP(AWS Trusted Secure Enclaves Vetted Partner Program)と呼ばれるパートナープログラムおよび認定制度があり、これであれば運用自律性の確保はできると想定されます。
(3) レギュレーション
最後に、レギュレーションを比較します。米国には、FedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)という米国政府の採用する「クラウドサービスに関するセキュリティ評価・認証の統一制度」があります。これに相当するものとして、日本ではISMAP(Information system Security Management and Assessment Program)が「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度」として存在します。米国のガバメントクラウドは、このFedRAMPのインパクトレベル Highを要求仕様として整備されています。日本の場合は、ISMAPに加えて「ガバメントクラウドに求める技術要件」等、デジタル庁のガバメントクラウドにおける要求仕様を満たすことがガバメントクラウド認定の条件となっています。
データの機密性については、米国ではインパクトレベル(IL)1~6で分類(レベル1と3は使われておらず実質4種類)、日本では機密性1~3の3種類の分類となっています。米国ガバメントクラウドではIL4~5がターゲット、日本は機密性1~2がターゲットと規定されています。米国のIL5には、NSS(National Security Systems)が含まれるため日本では機密性3に近いと想定されます。このため、米国のガバメントクラウドの方が日本より機密性の高い情報を扱っているものと考えられます。
3 まとめ
このように日米のガバメントクラウドについて比較してきましたが、制度の背景や対象とするシステムが異なることから、単純に優劣を論じることはできません。
一方で、今回の比較からは、米国と比べて、日本のガバメントクラウドは最新サービスの利用や大量のパッチ適用を行いやすい構成となっていることが見えてきました。
また、米国では、ガバメントクラウド移行に加え、ハイブリッドクラウド(≒オンプレミス回帰)を検討している中央官庁も増えていると聞いています。こうした動きを踏まえ、今後、日米のガバメントクラウドがどのような方向に進んでいくのか、引き続き注目していきたいと思います。
執筆者紹介
小松 正人 (こまつ まさみ)
NEC官公インフラDX事業部門 常務理事
国際社会経済研究所(IISE) 研究主幹
NECにて国内の中央官庁・地方公共団体市場における営業、事業推進業務に携わる。2026年4月からNEC官公インフラDX事業部門 常務理事に就任。NECグループで、国内行政DXにおけるソートリーダーを務める。

- ※本コラムは、制度の概要比較を目的としており、詳細な制度分析を行うものではありません。